41.大惨事
魔族とのやりとりで精神的に激しく消耗した俺達は宿へと戻り、ミカ兄達が帰って来るまで休憩する事にしてベッドで横になっていた。
ゴンッ!
衝撃で意識が浮上すれば、オデコが痛みを訴えてくる──何?痛いんですけど……
寝ぼけ眼でゆっくり上半身を起こすと、眉間に皺を寄せたミカ兄が怒りを露わに俺を睨んでいるではないか。ちょっと昼寝してたからってそんなに怒らなくてもいいだろ?
「レイ〜てめぇ、仕事放ったらかして女抱いてるったぁどう言う了見か聞かせてもらおぅかぁっ?あぁっっ!?てめぇ、人生舐めてんならもっかい教育し直すぞ、ごらぁ!!それともいっその事、ここで終わらせるかっ!?」
メチャクチャ怒ってるけど何!?……待てよ、今、女抱いてるとか言った?
自分の横を見れば何故かシーツが膨らんでいる。
──はぁぁあぁっ!?
慌てて振り向けばリリィとユリアーネさんが俺の両隣で幸せそうな寝顔を晒しているではないか……意味わからんっ!!俺は一人で寝てたぞ?どうしてこうなってる!?
「ちょっ、ちょっと待ってミカ兄!誤解だっ!誤解なんだ!!俺は一人で寝てて……」
言いかけた時にはギンジさんとアルも部屋に入って来て、現状を見るなり呆れたように溜息を吐く。
「レイ、仕事をサボるのはこの際見逃そう。でも、ソレは僕達に対してどうなの?これでも朝からずっと走り回ってたんだけどなぁ。ちょっと根性叩き直しちゃう?」
指をポキポキ鳴らしながらもいつもの穏やかな顔で近づいてくるギンジさんと、拳に殺気の宿るミカ兄が怖すぎる。 ヤバイやばいっっ!不味過ぎるぞ!このままでは命の危険がっ!!
慌ててベッドから飛び降りると二人の足元に土下座をして額を床へと擦り付ける。
「昼寝してたのは謝る!すみませんでしたっ!!でもこれは違うんだ、誤解なんだっ!俺は一人で寝てたんだよ、信じてくれよぉ」
懇願虚しく、床とお友達の俺の頭を グリグリ と踏み付ける足が二つ。
「この状態でよくそんなこと言えるなぁっ!男らしく開き直ってみればまだしも、言い逃れたぁ関心出来ねぇ。やっぱてめぇは教育し直さんとダメだなぁっ!アルっ!コイツ引き摺って来いっ」
あぁ、もう終わりだ……俺の人生終わった。なんでだ?俺、悪くないぞ?
そりゃ午前中で疲れて昼寝はしたっ、あぁしましたとも。それがそんなに悪い事なのか?くそぉ、なんであの二人はこんなとこで寝てるんだよっ!
「んん〜、あれ?ミカル達帰ってたのぉ?起こしてくれれば良かったのにぃ。それでぇ、レイ君引き摺って何処行くのぉ?」
アルに首根っこを捕まれドナドナの仔牛のように連れて行かれる途中、元凶片割れユリアーネさんが ムクッ と起き上がる。ボケボケッ としてるけどアンタの所為ですからっっ!
「仕事サボって女遊びしてるような悪い子にゃぁちぃっとばかり教育しねぇといけねぇんだよっ!」
「んー?ミカル嫉妬なのぉ?なっさけないなぁ。レイ君みたいに添い寝して欲しかったのかなぁ?私の添い寝、高いわよぉ?
あ、ちなみに私達が勝手に押しかけてぇ勝手にココで昼寝してただけだからぁそこんとこよろしくぅ〜」
告げられた真実に呆気にとられて ポカン とユリアーネさんを見つめるミカ兄とギンジさん──俺、誤解だって言いましたよね?聞いてました?そろそろ解放してもらえませんかねぇ?
「命拾いしたな、レイ。次は覚悟しろよ?
腹減ったし、こんなとこで遊んでないで飯行くぞ、飯メシっ」
苦笑いをするギンジさんと違い素早い身のこなしで180°ターンを決めると、何事もなかった
「ミカ兄。俺、誤解だって……言ったよね?」
ピタリと立ち止まるものの振り返ることはしない。
「っせーなっ、俺達は一日中働いてたんだっ!腹減ってんだよ!ごちゃごちゃ言ってないで飯行くぞっ」
いや、悪いと思ってるんなら一言謝りなさいよ、まったく。どっちが教育必要か分かったもんじゃないわっ。
逃げるように立ち去るミカ兄。片手を上げウインクをしながら、ペロリと舌を出したギンジさんもアルを連れて部屋から出て行く。
俺、怒られ損じゃ……ユリアーネさんを見れば小首を傾げ拳を頭に当てるとペロリと可愛く舌を出しやがる。いや、それ、可愛いんですけどね……溜息しか出ないよ、まったく。
俺達の騒動を余所に幸せそうな寝顔で昼寝をするリリィのオデコにデコピンを一発かまして目を覚まさせた。
「いった〜いっ!何すんのよ、たくぅ!」
少しばかりの恨みを込めたデコピン。涙の滲む目でオデコを抑えて恨めしそうに頬を膨らます可愛い様子に満足すると、三人でミカ兄達を追いかけ食堂へと向かう。
「で?なんで俺のベッドで寝てたわけ?」
「お昼ご飯呼びに行ったらぁレイ君が幸せそうに寝てたのねぇ、だから私達も寝る事にしただけよぉ」
それで大惨事かいっ!自分の部屋で寝ろよなぁ、もぉ。
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