第7話 ポンコツ??


白仲が何か言いたそうにこちらを見ている。この間、俺が想定していた流れの全てを説明せずに一方的に指示を出したんだ。文句の一つや二つの言いたい心境なのは察しがつく。とりあえず話を聞くことにする。


俺は絶賛プンスカ中の白仲の不満を受け止める覚悟を決める。



「まぁ言いたいことは色々あるだろうけど、一旦落ち着こう。」


「落ち着いてますー。まず出し物が劇に決まるまでのあの流れは何?聞いてないよ!」


頰を膨らませて子供かこいつは。ちょっとあざといスキルも身についてきたな。思わぬ副産物だ。


「聞いてないだろうな。言ってないしな。結果オーライだ。完璧だっただろ。王子様と白雪姫、分かりやすくクラスの主役の座ゲットだ。」


「そうね、完璧。クラス内の下田君の立場を除けばね!」


はぁ...何も分かっていないな。


「今、何もわかってねぇなこいつって思ったでしょ?」


お、思ってなひぃ...


「俺の立場も含めて、完璧な流れだ。今回の白仲主役作戦に置いて、共通の敵陰キャ下田は不可欠だ。クラスの団結力も強まって、劇のクオリティも上がり、白仲の株も上がる。」


「.,.まぁそれはたしかに。ありがたいよ?ありがたいけど、下田君はそれでいいの?」


良いに決まってる。依頼を受けた身だ、全ては目的の達成のためだ。


「白仲の望みを叶えるためなら、俺はなんでもする。」


「...そ、そう。」


白仲は急にそっぽを向いた。なぜこのタイミングで顔を隠すんだ。


「とりあえず、今は目的の達成に向けて、突き進むことだけを考えろ。これを機に人気者のイケメンとの距離感も縮まる。至れり尽くせりだ。」


「分かった。」


はい、素直。なんか犬みたいだ。


「あ、あと!衣装だけど、指示されたセリフそのまま言ったけど私なんもできないよ?服作るとか絶対無理。」


「おまwwwwww白仲にwwwwwww作らせるわけwwwwwwねぇだろwwwwww」


「このっ、アホ!陰キャ!ぼっち!マヌケ!陰キャ!」


頭を抑えられて、届かない腕をぶんぶん振り回してる雑魚のイメージぴったりだなこの人。


小学生みたいなやりとりを終えて、俺は王子様と白雪姫どちらの衣装も俺が作ってくることを伝え、また追加で指示を伝え、解散した。



この2人、出会った時より大分打ち解けたことで、打ち合わせが思いのほか盛り上がりをみせたこともあってか、そのやりとりを陰から眺めていた校内屈指の人気を誇る美少女の存在に気づくことはなかった。


「見つけた。彼ならなら私の最高のパートナーになる。彼とならきっと成し遂げられる。そのためにはまずはあの女を...」




万全の準備をして、完璧なプランを立てても、相手が人間である限り、障害は何かしら発生する。人間には感情があり、登場人物一人一人にそれぞれの思惑や価値観が存在する。

その交錯する矢印をかき分けて、目的地に到達するのは並大抵のことではない。


そのどうしようもない事実は、学校のような集団生活においてはより如実に突きつけられる。


それは、校外で数々の経験を積んできた下田涼であっても例外なく直面する問題である。

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