第3話 我が家の成り立ち その1
…しかし、分かりやすい『ヒロイン』ですわね。転生者や生まれ変わりが自分だけと思い込んでいるのは余りに愚直で滑稽です。現に、この場に最低でも他に『二人』は確実に居ますのに。
あの騒いでいる『ヒロイン』は転生者と呼ばれる生まれ変わりだと推測されます。転移や召喚者と呼ばれる者は基本的にこんな風に現れません。大抵は制度の違う別世界に放り出され、制限された情報に翻弄されて良いように転がされてしまうからです。別世界から一方的に呼び出し、使い潰して利益を得ようとする愚かな行為は確かに遥か過去に存在しました。今はその召喚技術も失われて久しいです。尤(もっと)もこれは我が家が目立たないようにゆっくりと時間を掛けて、人為的に記憶から消していって成ったのですけども。
我がグラッティ公爵家の始まりは非常に特殊なものです。それが起こった当時、家を興した初代は今は亡き帝国に、魔王に対する戦力として召喚された異世界人の未成年の子供だったと聞いています。一方的に今までの生活レベルや制度の違う世界に放り出され、元の世界に帰る術は見つからず、限られた情報を与えられ、戦う事を知らなかった沢山の子供たちが戦いに身を投じ、その多くが無念を抱えて散っていきました。
それから月日は流れ、初代は仲間と共にやっとの思いで魔王を倒し、これで元の世界に帰れると思っていましたが現実はそう甘くありませんでした。強大な力を持つ魔王を倒せるほどの力を持つほどに成長した子供たちを進んで手放そうとする為政者は居ませんでした。当時の皇帝が自分達を自らの欲を満たす為の侵略戦争に投じようとしたのです。
初代たちは既に心身が限界に達していました。それもその筈、魔王軍は姿や肌の色に多少の違いはあれど、仲間の為に涙を流し、怒れる、なんら自分たちと変わらない者たちだったのです。
初代は少なくなった仲間と共にひっそりと帝国を脱出しました。帝国の追手は執拗で、更に多くの仲間が初代たちに望みを託して散っていきました。そして、多くの血を流し、様々な思いを抱え、人の郷の深さに疲れ切った末に流れ着いたのがこの王国でした。
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