気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。
100話 当たり前すぎることはいつの間にか当たり前だということに気づかなくなって、気づいたときには重大な見落としをしている。
100話 当たり前すぎることはいつの間にか当たり前だということに気づかなくなって、気づいたときには重大な見落としをしている。
日が暮れた。
二人はまだレイの部屋から戻ってこない。
……いやそんな話すことある?
妹はともかく、レイ自身そこまでたくさんしゃべる方ではない。
そんなに何時間も会話が続くとは思えないんだけど。
俺ですら、レイと一日一緒にいるということは少なくないが、何時間も連続して会話を続けるなんてことはしたことがない。
まあ俺があまりしゃべらないってこともあるのかもしれないけど。
それにしても長い。
あのプリンは一体どうなってしまったんだろうか。
何かの手違いで冷蔵庫の中に戻ってきてたりはしないだろうか。
そう思いおもむろに野菜室の中を探してみるが、当然プリンはその中に入っていない。
いやわかってたけどね。
もし入ってたとしてもそれはそれで空っぽの容器だったんだろうけど。
とにかくそんなことをしてしまうくらいに暇なのだ。
それからまたしばらくぼーっとスマホを眺めていると、ようやくレイの部屋の扉が開かれる音が聞こえてきた。
そのあとすぐに妹とレイが部屋に入ってくる。
どちらの手にもプリンの姿はない。
「プリンをどこにやった?」
「戻ってくるなり、気になったとこそこなの? やっぱりさと兄の価値観おかしいよね」
なんでだよ。プリンは大事だろ。あれ高かったんだぞ。
500円くらいするんだから。コンビニで500円って普通に弁当買える値段だからね?
それとレイが後ろでうんうんとうなずいているが、何に対してのうなずき?
もし妹の発言に対してうなずいてるんだとしたら、俺ショックなんだけど。
というかそうだとしたら、お二人さんなんか仲良くなってる?
やはりプリンの結束力は計り知れないってことなんだな。
「さと兄ちょっと」
自然と隣に座ってきた妹に手招きされたので、顔を寄せる。
定位置である机の上に座ったレイは、どこからともなくスプーンと生クリームプリンを取り出し、パクパクと食べ始めた。
「なにこの子めちゃくちゃ可愛いんだけど! なんでさと兄なの? 私でもよくない? あの子連れて帰ってもいい? さと兄にはもったいないくらいだよ? レイちゃんもきっと私の方に来ることを望んでるって」
……まだ食べてなかったのか、そのプリン!
なんでわざわざ俺がいるところで、しかも目の前で食べるわけ?
すっげえだらしない顔してるじゃん。その気持ちはよくわかるけどいやがらせか?
妹の入れ知恵か?
いやいくら入れ知恵とはレイがそんな意地が悪いことをするはずがない。
ということは天然か……天然パワー恐るべし。
「……聞いてる?」
え、なにが?
妹に耳をつねられ、ようやく我に返る。
いや確かにレイがプリン食べる様子を見てたから、ほとんど話は聞いてないけど、ぼんやり聞いた限りだとただの愚痴か誘拐宣言じゃないですか。
だめだよ、連れて帰ったら。
レイはここが好きで住み着いてるんだから。
本人に直接聞いたことはないけど、きっと多分おそらくそうだ。
「とにかくさと兄にレイちゃんはもったいない! ということで今日はレイちゃんと一緒に寝ます!」
なぞの宣言を声高らかに行う妹。
その声にビビって体を震わせるレイ。
……仲良くなったんだよね? レイびっくりしちゃってるけど。
そこからは二人で適当にご飯を食べて、妹はレイの部屋で寝ることとなった。
いや別にまあそれはいいんだけど、すぐにレイの存在を受け入れられるとかさすがわが妹というべきか、家族というべきか。
とにかく俺以外にもレイの存在を認知できる人物がいるとわかったのは、レイにとっては朗報だろう。
その認知できる人物が妹だったという部分については、俺にとっては悲報なわけだけど……。
その日俺は生クリームプリンに襲われる夢を見た。
襲われはしたけど、三メートルくらいのプリンに埋もれたから、なんか一つ夢がかなったような気がした。
不幸と幸せを同時に味わうとか夢っていうのはすごいなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます