14話 すごい今更な気もするけど、やっぱり妄想じゃなくて現実みたいです(後編)
スマホが普及して早何年?
詳しい年数とかはわからないけど、俺がスマホを手にしたのは高校一年生の時。
当時15歳のころの俺は初めてちゃんとしたメカを手にして、興奮したのを覚えている。
え、てことはもしかしてスマホが普及してもしかして10年以上たってる?
時の流れの早さにびっくりして、いつもと違った種類の鳥肌が立ってるんだけど。
そんなことを考えているとあっという間に友達から送られてきたアプリのダウンロードが終わって、トップ画面に3Dのよくわからないキャラクターが描かれたアイコンが出現する。
スマホの進歩は著しいね。俺が高校のころなんてこんな3Dゲームなんてなかったよ。
中学生のころにスマホを持っていた同級生なんて、スマホをもって振ったらライト〇イバーの音が鳴るアプリで大喜びしてたんだから。
『ダウンロードした』
簡潔にそう送ると、すぐに電話がかかってくる。
俺はイヤホンをスマホに装着するとすぐに電話に出た。
『ういっスー』
「今日もまた唐突だな。これどういうゲーム?」
アプリのURLを送り付けてきた友達とはたまにゲームをしている仲。
たいてい向こうからこのゲームをやろうといって、URLを送ってくる。
それはいいんだけど、その友達は飽き性でだいたい三日後には送ってきたゲームをやめている。
『今日のは面白いぞー。なんか幽霊1人がパリピ4人を追いかけるっていう鬼ごっこみたいなゲームみたいだぞ』
「え、幽霊ってもしかしてホラー? 俺ホラゲーできませんけど。寝ますけど。おやすみ」
幽霊という単語に反応したのか、それとも一人で話していることに引いているのかレイが肩をびくっと震わせてこちらをいぶかし気に見つめてきていた。
多分前者だと思うだろうな。一人で話しているなんて日常茶飯事だし。
『いやいや結構人気あるし、やってみたらそんなに怖くないって! 多分、知らんけど』
「まあやってみるけど……明日も仕事だから1時間くらいしかできないぞ」
『OKOK!』
友達も未プレイらしい。
そもそも幽霊がパリピを追いかけるってどういう状況だよ。
そんなホラーなのかコメディーなのかわからないゲームを勧めてこないでほしい。
俺がホラーダメなのは知ってるはずだろ。
心の中でそんな文句を言いながらもその手はアプリを起動していた。
なになに、興味本位で幽霊が出るという噂の廃墟に訪れたパリピが様々な幽霊に追いかけられるって感じか。
こんなの心霊スポットに自ら行ってるパリピの自業自得じゃねえか。
そもそも幽霊が出ますよーっていう場所に足を運ぶっていうその思考が理解できない。
こっちとらそんなところ行かなくても、いつでも家に帰れば甘いもの大好きな幽霊が待ち構えてんだぞ。なめんな。
「パリピ側に共感できない」
『とりあえずやろうぜ!!』
友達の強い押し、というかほとんど強制といった感じでパーティを組んでゲームが始まる。
まあプレイしてみた感想は、最近PCとかテレビゲームとかでも流行っているケイドロ的なルールだな。
確かにやってみればそんなに難しくないし、パリピもそんなウエイウエイしていない。
逃走している途中に急に踊りだすのはわけわからんけど。
問題があるとすれば幽霊側だった。これが実にリアルなのだ。
レイみたいに可愛い感じでもなければマスコット的要素もない。
やけにリアルに皮膚がえぐれて肉がむき出しになっている幽霊とか、帽子で顔を隠していて、その顔を見せたら口裂け女ばりに口が裂けているとか。
そんな幽霊ばっかりで、そんな幽霊が突然目の前に現れると実に心臓に悪い。
「やっぱりホラーゲームじゃねえか……」
まあゲームの感想はそれくらいなんだけど、俺にはもう一つどうしても突っ込みたいことがある。
さっきからレイの髪の毛で俺のスマホの画面がほとんど見えていないのだ。
レイも俺がプレイしているゲームが気になるのか、俺の顔の前まで首を傾けてスマホの画面をガン見している。
俺の視界いっぱいにレイの頭が見えるのは別に問題ない。だってレイは透けているから、それだけならスマホの画面は普通に見えるし。
ただこの子、自分も同じような存在だろうに幽霊が現れるたびにひっとかキャーとか言って頭を振るからそのたびに髪の毛が俺の手とスマホにどんどんかかっていく。
レイは透けているのに髪の毛の毛量が多い。毛量と透けていることに何の関係があるのかは俺にもわからんけど、しかも髪が長い。
徐々にスマホの上に重なる髪の毛によって、いくら透けているって言ってもスマホの画面が見えづらくなっているのだ。
しかも今はボイスチャット中だからむやみにレイに話しかけることもできない。
だからこの状況を注意できるはずもなく、俺は初見のはずのゲームをずっと縛りプレイしている状態になっていた。
あとレイの頭がほとんど俺の胸にめり込んでいるからか、手に大量の髪の毛がかかってるからかはわからないが、そろそろ俺の体が凍えてリアル死にしそうです。
ほんとに俺以上に怖がってるんだよ。そのたびに冷気が漏れ出てるし、声も漏れ出ている。
そんなに怖いなら見なければいいのに、レイの顔はどんどんスマホに近くなっていっている。
怖いもの見たさってやつなのかね。
本来なら幽霊の自分自身が一番怖いはずなのにね。
『なあ、一ついいか。お前今誰かと一緒にいる?』
「……んー? どゆこと?」
『いやなんかさっきからお前の声とは違う女の子の声が聞こえるっていうか、ノイズが入ってて正確ではないんだけど……気のせいか?』
「あーそゆこと。今幽霊に視界塞がれてる」
あまりに普通に聞かれたことと、レイとの冷気耐えバトルに集中していたせいで、普通に答えてしまった。
答えた後に俺の思考はフリーズして、ゲームの操作をやめてしまう。
あ、パリピが幽霊に食われた。寒い寒い寒い。
幽霊の殺しモーションで俺にも直接ダメージが入っているが、そんなこと気にしていられない。
ごまかさなければ!!
「いや、あー……今のは違くてだな。……あー!窓が開きっぱなしだったわ! その音なんじゃねえかな!」
『そ、そうか。まあ、なんだ……疲れてるんだろ。早く寝ろよ』
その後友達とどういう会話をしていたか覚えていないけど、2.3分話した後に気づけば電話は切れていた。
ご、ごまかせたよな!? ギリギリセーフだよな?
まあ幽霊がいるって言っても信じられるわけがないし大丈夫だろ!
全身に冷や汗をかきながら、鳥肌を立てているという人体の不思議を体験しているが、とりあえずレイを俺から離れさせないと。
「レイ、ゲーム中そうやって見られるとやりづらいから、見るなら隣で見ろよ」
レイはがばっと顔をあげて俺の方を見つめてくるが……いや正確には顔をあげた勢いでレイの顔の半分以上が俺の顔にめり込んでいるから、レイが今見ているのは俺の背後にある風景ってことになるんだが……。
レイは俺の言葉を理解したのか机から降りて、俺の隣にちょこんと座ってまたスマホを眺め始めた。
ところでレイさん?その両手で持っている棒アイスはいったいどこから持ってきたんですかね?
もしかして食べるつもりか?まさかそこまで無慈悲な奴ではあるまい。
俺は君を信じているぞ。
俺はそんな意味を込めてじっとレイの方を見つめてみたが、レイは特に反応を返すこともなくスマホの画面を見て顔を青ざめている。
……伝わってないな。
まあいろいろとまずいことがあったような気がするが、友達にもレイの声らしきものが聞こえているってことは、やっぱりレイは俺の妄想ではなくて、現実に存在しているってことか?
結局レイが俺から離れることもなければあまりにも熱心に見られるので、ゲームをやめることもできず3時間ほど俺は寒気とゲームの中の幽霊と戦い続けた。
やっぱり最後まで逃走者側のパリピは好きになれなかった。
そして無事次の日の仕事は寝不足でした。
ついでにいうとまとめ買いしていた10本入りの棒アイスも全部きれいになくなっていました。
幽霊ってお腹壊さないんだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます