18話 賑やかな家

父さんと優にひとしきりからかわれ、拗ねて黙々とご飯を食べているあいだ、優と父さんは俺の学校での様子を笑いながら話していた。

「…食事中くらい静かにしなよ」

「おう!悪いな」

「悪い悪い、こんな賑やかなのは久し振りでな、それにお前は学校での事話してくれないじゃないか」

父さんの言葉に俺は何も言えなくなる。

俺が父さんに学校での事を話さなくなったのは渡辺と関係が悪くなってからで、父さんには知られたくなかった。

薄々気付いてはいると思うけど。

「明日は青木君の家で勉強会するんだよね?」

「優で良いですよ。そうです、何度かこうやってご飯食べさせて貰ってるのでそのお礼に母が招待しろってうるさくて」

「そうか、気を使わせてしまったかな」

「いえ!寧ろこっちが気を使わせたのじゃないかって不安になってました」

「そうか、なら明日は和人をよろしくな」

「任せてください!といっても勉強面でもお世話になりっぱなしですけどね!」

優は良い笑顔で応える。

「…そこはもうちょっと頑張りなよ。平坂さんに振り向いて貰えないよ?」

「なっ!和人!!」

「なんだいなんだい?優君にも好い人がいるのかな?」

「聞いてよ父さん、優の好きな人はクールで綺麗なんだけど優が変に弄るから振り向いて貰えないんだよ」

「ほう?綺麗なのか」

「なぁ、和人、それ以上は…」

優が焦って俺を止めようとするが俺は笑顔で、

「平坂さんの担当の数学も苦手だしね」

「うんうん、苦手なのはしようがない…ん?担当?数学?」

「それなのに平坂さんへの愛は本物だって…」

「これ以上はストーップ!!」

優は顔を赤くして俺の口を塞ぐ。

「聞かなかったことにしてください!!」

「…まぁ、先生に憧れるのはわかるよ」

父さんは優しい笑顔で優に微笑みかけた。

「恥ずかしがることないじゃん、本・当・の・愛何だろ?」

俺は満面の笑みで優しく、けれど強調して優にいってやると優は「イジメだ!」と嘆いていた。


優が帰るのをコンビニの買い出しついでに途中までついていく。

「今日も旨かったな、和人のご飯」

「優の胃袋掴んでも嬉しくないな~」

俺は照れ隠しにそんな風にしか言えなかった。

だけど優は急に真剣な顔になって

「お父さんには渡辺さんのこと話してないのか?」

「…うん、心配かけたくないから」

「薄々感づいてるみたいだけどな。和人がトイレ行ってる間さりげなく俺に学校での渡辺さんとのこと聞いてきてたぜ。他のクラスだからわからないって流したけどな」

優に気を使わせたことに申し訳なくなって俯いてしまう。

「そっか…ごめんね」

「別に良いけど…どうするんだ?」

「どうもしないよ、このまま。俺たちはもう他人でしかないんだよ」

俺はそう呟いた。

「そっか、まぁ後悔はするなよ。じゃあ明日な!」

優がはそれだけ言って別れを告げる。

気付けばもうコンビニの前に着いていた。


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