15話 忠告


「…返信が来ない…」

結局メッセージを和人に送って既読がついてからも返信は来なかった。

返信を待ち続けて結局寝たのは朝の4時くらいで、数十分もしないうちに目が覚めてそれを繰り返していた。

「でもこんな内容じゃそれも当然か…」

寝不足の頭で脳がちゃんと回ってないせいなのか逆に冷静に考えることができた。

私はどんな返信を期待していたのだろう?

これまで自分が既読無視して和人の話をきかないで酷いことを言ってきたのに…そんな私が何を期待しているのだろう。

私は考えれば考えるほど暗くなる気分に耐えられなくなって何時もより早いけどベッドを出てシャワーを浴びに行った。



親が起きる時間になる前にお風呂場から出る。

最近親とはまともに話をしていない。

中学に入る頃くらいから親の口煩さに嫌気が差し、和人との自分で作った距離、今の仲良しグループとの付き合いのストレスに腹をたてて八つ当たり気味になっていた。

別に親の言っている事が間違っているわけじゃないのは分かってる。

それでもどうしようもない自分の感情に制御が出来ない。

「まだ子供でいた方が楽しかったな」

中学生である今の自分もまだ子供だろう。

でも大人になりたいと、意地を張って私はもう子供じゃないんだと、事あるごとに口を出される親への反発は抑えられなかった。

「大人になるってことがどういうことか分かってもないのにね…」

そして結局自分は子供なのだと自覚して自己嫌悪に陥る。

シャワーを浴びても心さっぱりすることは出来なかった。



「あ!おはよう~渚~」

「おはようさん」

「おはよう」

教室に入るといつも一緒にいる美紀(みき)と杏花(きょうか)が挨拶してくれる。

中学入ってからの友達で、クラスにあるカースト的なものでも私と三人だけでそれなりに上位にいる。

一番上のカーストのクラスメイトともそれなりの関係は築いている。

「どしたん?渚、なんか憂鬱そうじゃない?」

「それに眠そうだね?」

二人は私の異変に気付いてくれる。

「まぁ、ちょっとね」

私は少し歯切れ悪く応える。

「ふ~ん、まぁ色々あるよね」

「それよりさ!今日の放課後駅前の近くのカフェ行かない!昨日から新作のパフェが出てるんだって!」

「マジ!ちょっとお小遣いピンチだけど…行こ!!」

気を使ってくれたのか、二人は深くは聞かなかった。

そんな気遣いが嬉しかったが同時に寂しくもあった。


お昼ご飯を食べ終え、お手洗いに行って教室に戻る廊下で向こうから和人が1人で歩いてきた。

和人は目が合うと私の前で立ち止まる。

私は少し焦ったけど和人と話がしたくて声をかけようとした。

「幼馴染みとして最後に忠告しておくよ。いつもいる二人とはもう関わらない方が良い」

「…はぁ?なんで和人にそんなこと言われないといけないわけ?」

急に和人に言われた意味が分からなかったが理解した瞬間に私は怒りが沸いてくる。

「渡辺がどう思うかは自由だ。けど俺はもう助けられないから」

そう言って和人は私を通りすぎていった。




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