12話 お礼の料理
目が合った渡辺はすぐに目をそらす。
おれは気付かないふりをして優達と買い物しながられじまで行く。
会計を終えると優が2つあるレジ袋の1つを持ってくれる。
「明美は料理できる?」
「…聞くまでもないこと」
苦い顔しながら応える日笠に俺達は顔を見合わせて笑う。
「みんな、良かったら今日晩御飯食べていく?」
「いいのか!?」
「でも、お金が…」
優は嬉しそうに言うが柊は遠慮気味だった。
「気にしないで、父さんからは食費以外からも少しお金貰ってたから実はそれで皆の分の材料も買ってたんだ。買い物に付き合ってくれたお礼だよ」
「そっか…それじゃあ言葉に甘えようかな!」
俺の言葉を聞いて柊は笑顔を浮かべる。
しかし、日笠の顔は苦いままだった。
「…水瀬君、そのお金って…」
「それで!今日の晩御飯は何なんだ!和人!」
日笠が何かを言いかけた時に興奮してる優に遮られる。
「青椒肉絲だよ。ピーマン苦手な人いるかな?」
「俺は大丈夫だ!」
「私も大丈夫だよ」
「…問題ない」
「そっか、なら決定だね」
恐らく気付いている日笠も今言うことではないと思ったのかそのまま返事をしていた。
父さんと二人だけでも少し広いと感じていた家に賑やかな3人が来ると思うと少しワクワクした。
三人にお茶を出して晩御飯の支度を始める。
各々親に電話して友達の家で晩御飯を食べることを伝えていた。米をセットして野菜の切り出しを始めようとすると優が来て、
「何手伝う?」
「今日はいいよ?二人の話し相手になってあげて」
実は優が荷物持ちしてくれるときはおれの晩御飯を食べていっている。
その時いつも料理の簡単な手伝いもしてくれていた。
「けどアイツらも手伝いたいって言ってるんだが…俺が手伝ってくるからゆっくりしとけって言っちまったんだよな」
「まぁ、本当に今日は簡単だし米が炊けないとどっちにしろ食べられないからね。」
「…そうか、わかった。なら向こう行っとくからお前も準備終わったら来いよ」
「わかった」
そうして優が戻っていった。
仕込みと言ってもピーマンとパプリカ、タケノコの水煮を刻むだけなので手早く終わらせてザルに上げ、米が炊き上がるまで暇なので皆の所へ行く。
「もう準備終わったのか?」
「刻むだけだからね」
「なんかほんとに家でお母さんが晩御飯作ってる感覚になったな」
「美鈴」
柊の言葉に日笠は少し咎めるように名前を呼んだ。
柊のしまったって顔に俺も苦笑いする。
「別に気にしなくて良いよ?逆にそこまで気を使われたら逆に変だからさ」
「そうだよな~俺なんか母親いないって聞いたときは思わず自慢したくらいだぜ!」
「…それはどうかと思うな…」
「…人としてどうかしてる。小学生からやり直すべき」
「辛辣!!」
優はあんなこと言ってるが、実際はかなり慌てて謝りまくっていた。
本当に良い友達を持ったと思う。
そしてそんな友達と別れることになるのに忘れようとしていた寂しさが少し溢れていた。
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