10話 歩みより
朝6時。
いつもの起床時間に目が覚める。
いつも大体父さんが起きる時間と一緒で父さんが出勤の支度をしている間に登校の支度と朝御飯を作る。
朝御飯をといってもトースト、目玉焼き、ベーコンにサラダなどかんたんなもので、父さんは朝からガッツリとご飯を食べられない。
だからいつも朝御飯の準備は簡単で済む。
父さんがシャワーから上がって二人でご飯を食べ、父さんが家を出るのが七時ちょっとすぎ、その後俺もシャワーを浴びて登校する。
家から学校まで歩いて10分程なのでギリギリまでゆっくり出来る。
数年前までは朝御飯は父さんが作っていて、一緒に登校する渡辺と食べていた。
しかし、父さんの負担を減らせるようにと俺が作るようになって、その頃には渡辺は家に来なくなっていた。
当時は寂しかったが、今ではそれで良いと思った。
幼馴染みだからといって無駄に付き合う必要はない。
それは渚が最後に教えてくれたこと。
だから家族でない渡辺を朝の時間まで共にいる必要はないのだ。
「おはよう。」
「おはよう、優」
いつもは元気よく挨拶してくる優が元気無さそうだった。
「なんで優が落ち込んでるんだよ」
「その…な」
昨日の事を気にしている優に俺も苦笑いになる。
「あれは俺の自業自得なの、わかったら気にしない!」
「…ああ。わかった!」
吹っ切るように言った優は笑うも少し曇った笑みだった。
「(優しすぎるんだよな、優は)」
そう親友を思いながらいつものように喋っていると、
「おはよう~」
「美鈴、おはよう!」
女子たちの声に柊の名前が上がって一瞬気をとられる。
優も気づいて表情を硬くしていた。
俺は取り繕って気づいてないふりして優と喋っていると、
「お、おはよう、水瀬君、青木君」
まさかの柊から声をかけてきた。
隣には日笠もいる。
「…おはよう柊、日笠」
「うん、おはよう」
日笠もあいさつを返してお互い無言になる。
周りもへんな空気に気付いてこっちを見る目がチラチラと増えてきているのがわかった。
「っ~~もう!美鈴!伝えることがあるんでしょ!早く!」
日笠は耐えきれなくなったのか、美鈴を急かした。
「っ!う、うん!水瀬君、お昼一緒に食べない?」
柊の突然の提案に驚いて返事が出来なかった。
「あ!勿論青木くんと明美も一緒にね」
「あ、ああ、俺は良いけど」
優も自分が入っていることに驚いてるものの、なんとか返事する。
「…おれも良いよ、一緒に食べようか。」
そうして4人でお昼を食べることに決まった。
午前の授業も終わり、購買に行って惣菜パンを何個か買って待ち合わせの中庭に行く。
中庭ではベンチがあり、日陰になっているので利用する人はいる。
先に来ていた三人と合流する。
俺が来る前に三人で話していたのか、優の顔にはもう気まずさは無かった。
「おまたせ」
「まってないから大丈夫だよ。」
そう言って柊は柔らかく迎えた。
「(なんか朝と違う)」
柊も日笠も朝のような気まずさはどこか抜けていた。
俺は不思議に思いつつもベンチに座りパンを開けて食べ始める。
気付けば昨日のことが何も無かったように4人で雑談していた。
「ねぇ、水瀬君」
俺がパンを全部食べ終わると、柊が俺に真剣な眼差しで話しかけてきた。
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