8話 晴れない霧
「ねぇねぇ、最近和人君来ないね~」
「本当、ケンカでもしたん?」
授業が終わって帰りどうしようか考えていると、いつものように友達が集まってくる。
けれど話しに上がるのは幼馴染みの話だった。
「さぁ?私はいつも通りあしらってるだけだし」
和人の名前が出てきて内心焦ったけど表には出さないようにする。
「なにそれw本当は寂しいんじゃない?」
「そんなわけないじゃん」
前の屋上でのことは少し言いすぎたと思って少し話そうかと思ったけど二人でいるところ見られたくないし自分から声かけるのもなんだか出来なかった。
「渡辺、ちょっと職員室に来い。お前に渡すプリントがある」
担任の中井先生に呼ばれため息を吐く。
「今日はそのまま帰るから待たなくていいや」
「そう?わかった。じゃあ渚、また明日ね」
「バイバイ」
友達の二人を帰して私は職員室に向かう。
その時に和人のクラスを見るけど和人の姿は無かった。
「失礼しまーす」
「ああ、ここだ渡辺」
先生が手をあげていたので先生の所へ向かうと、
「これだ、すまんな。これだけのために」
「いえ、大丈夫です。もう帰っていいですか?」
「ああ、気をつけて帰れよ」
これだけのために呼び出されたことに少し腹は立ったけど我慢する。
「ああ、すまない渡辺、少しいいか?」
職員室を出ていこうとすると、綺麗な女の先生に呼び止められる。
確か和人の担任の先生だったかな。
「なんですか?」
「ああ、確か君は水瀬の幼馴染みだったな」
先生にまで和人の話をされて若干辟易する。
「そうですけど何か?」
「…いや、最近水瀬と話したか?きっと何か話したがっていることがあるはずなんだが。」
先生に言われて屋上の事を思い出す。
「先生に関係あるんですか?」
自分の中で何がモヤモヤと霧のように溢れてつい険のある声を出してしまう。
「…一応担任だからな。別に深入りするつもりはない…ただ、もし話してないなら話しておけ、後悔することになるぞ」
「…失礼します」
真剣な目で先生に言われて居心地が悪くなり出ていこうとする。
「渡辺!少しで良い、アイツと話してやれ」
先生の言葉を背に受けて何も返さず出ていく。
「…渡辺、いつまでもそばにいると思ったら大間違いだぞ」
私は廊下を歩きながら和人に腹を立てていた。
「私たちの問題を先生に話すなんて!」
自分達の間に関係ない人が入ってくるのが何故か腹立っていた。
他人に知られて恥ずかしい気持ちもある。
けれど私との関係に誰かを頼っていたのが許せなかった。
「最近来ないの周りの奴らになんか言われてるからじゃないわよね」
考えすぎかと思うが、先生に話してるならあり得なくはないと思ってしまう。
「勝手にすれば良い」
そう吐き捨てて学校を出る。
帰り道を歩いていると、前のコンビニから和人が出てくる。
私は思わず立ち止まると、後から女子二人と男子一人が出てきてかと仲良さそうに話しながらカラオケに入っていくのを見た。
しかも女子の一人は最近和人に告白したであろう女子だった。
「っ!何なのよ!」
モヤモヤがいっぱいになって考えることを放棄して家に帰った。
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