6話 選択
「そんな、なんで!」
柊は顔色を変えて立ち上がる。
日笠はただ目を見開いて固まっていて、優は少し不機嫌そうに俺を見ていた。
「黙っていてごめん、本当は柊に告白されたときに伝えるべきだったんだけど…言えなくて」
日笠の顔が見れなくて俯いてしまう。
そんな俺を見て優にはため息をついた。
「こいつにも色々あったんだ、わかってやってくれ」
「っ…青木君は知ってたの?」
優がフォローしてくれたのだが、優の言葉に柊は驚いた顔をしたあと、そのまま歪ませる。
「え?ああ俺は聞いていた」
優はきょとんとして頷く。
「そっか、なら私は話すまでない程の仲だったって事なんだね」
柊の言葉に俺は頭が真っ白になる。
「…ごめん、わたし帰るね」
そう言って柊はお金だけ置いて出ていった。
俺はそれを引き留めることも出来ずただ見送っていた。
「私も帰る、ごめん」
そう言って日笠もお金を置いて柊を追いかける。
外へ出てこちらを1度振り替えるともう一度ごめんと謝って走っていった。
部屋には俺と優の二人だけが残る。
「…すまん、余計なこと言っちまった」
「いや、俺が全部悪い」
クラスで仲の良い柊に言わなかったのは色々理由はあったが、結局は逃げていただけだった。
そして元々伝えるのは渡辺と優だけのつもりだったのも事実だった。
柊が自分に好意を持っていることを知っていたから言いにくくて逃げていたのだ。
「俺ってサイテーだな」
「…これ以上俺は何も言わない。帰ろう、お前もお父さんの晩御飯作らないといけないんだろ?」
立ち上がった優に言われて俺も頷き立ち上がる。
~柊美鈴side~
わたしは早歩きで帰っていた。
涙が溢れて止まらなくて、ただ早く帰ってベッドに横になりたかった。
「美鈴!」
後ろから呼ばれて無意識に足が止まる。
そして後ろから腕が捕まれた。
「はぁ、はぁ、はぁ、ごめん、美鈴。わたしのせいで…」
明美が息を切らせながらも謝ってくる。
「…私、それなりに水瀬君と仲良かったつもりだったんだ。まだ名字で呼びあってたけど…毎日挨拶してことあるごとに話しかけて雑談して…フラれたけど諦めきれなくて、これからもっと…友達としてでも良いから一緒に居て好きになって貰おうって思ってたのに…」
私は込み上げてくる言葉をただ吐き出していた。
「もうそばにいることも出来ないんだ…」
そんな私の背中を明美が抱き締めていてくれた。
だから私は泣いた。
幸い人通りが少ない路地に入っていたから人目もなく、あっても気にしなかっただろうくらい泣いた。
明美は泣き止むまでそばに居てくれた。
「…それでどうするの?」
そして私が落ち着いてきた時明美が聞いてきた。
私はただ俯く。
「このままだったら本当に疎遠になるよ。それで良いの?もう時間は少ないよ?」
俯く私に明美は優しく、でも何処か厳しさを含んだ声音で私に聞いてくる。
「私は…」
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