3話 別離の足音
「おはよう」
「あ、水瀬君!おはよう!」
次の朝、登校すると柊が元気よく挨拶を返してくれた。
柊は昨日のこと引きずってないみたいだった。
「よう!和人!」
席についた俺に挨拶してきたのは友人の青木優(あおきゆう)だった。
そして優は声を潜めながら話しかけてくる。
「なぁ、昨日柊に告白されたんだろ?」
「なんでしってるのさ」
噂好きの友人にジト目を向ける。
「お前の恋愛事なんてクラスのやつら大概知ってるぜ。まぁ柊がわかりやすいってのもあるが…でもあの反応、お前OKしたのか?」
途中まで笑っていた優が真剣な顔になって聞いてきた。
「断ったよ、いつも通りにね」
「そうなのか?でも…」
優は納得していないようだった。
「これまでのやつらと比べたらやっぱ反応が違いすぎるんだよな」
「柊は前向きな性格してるから。それより…」
この話を打ち切るように話題を変えて朝のHRまで優と雑談していた。
「よし、これで授業は終わりだ。水瀬、お昼食べ終わったら職員室に来るように。」
担任の平坂茜(ひらさかあかね)先生が授業の終り、俺にそう言い残して出ていく。
「なんだ?なんかやらしたのか?和人」
「何かやらかして呼び出しくらうのは本来お前だもんな」
友人の優は担任の女教師平坂先生に恋愛感情っぽいものを持っているらしい。
らしいというのは始めての事だからわからないというのを実際に相談を受けた。
「いい加減にわざと聞こえるように結婚ネタでいじるのやめような」
「別にいじってる訳じゃない!先生は綺麗ですよって遠回りに言ってるだけで!」
優も悪気があるわけでなく、純粋にそう思ってるらしい。
優はなんで先生が結婚出来ないかわからないという風なことを毎回言い方を変えて先生に聞こえるように言っているのだが、それが先生にはケンカを売られていると取っているようだった。
「まぁ、実際に実る恋でもないしあまり気にすることではないな。」
「なっ!そんなことないぞ!!おれは絶対に諦めない!!」
優のその言葉に俺は思考が一瞬停止する。
「…え?お前ガチなの?」
「ああ、俺は気付いたんだ…これこそが真の愛なんだと!!」
優は拳を握りながら力説する。
「…まぁ誰を好きになろうと自由だしな。がんばれ」
俺が苦笑しながらも応援すると、優は良い笑顔で頷いた。
きっと無邪気にアイツを好きになれていた俺もこんな顔していたのかなと思うと少しうらやましくなった。
そして優と昼食を食べてそのまま職員室に向かう。
「失礼します」
「ああ、水瀬、こっちだ」
黒髪ロングに整った顔立ち、切れ長の目。
クールな雰囲気と男子の人気があってもおかしくないほど大人の色香は優が夢中になるのもわからなくはなかった。
「平坂先生、呼び出しの件はあのことですか?」
「ああ、水瀬が自分で伝えると言ってたから私は何も言わなかったが…どうも伝えられていない様子だしな。言いにくいなら私がHRにでも伝えようかと思ったんだが?」
「…友達や中の良い人には自分で伝えようと思ってます。」
俺は顔を俯けながら言う。
「…そうか、わかった。それ以外にはお前が転校した後に私から伝えることでいいな?」
「…お願いします。」
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