パーティ追放された最弱荷物持ち! 外れユニークスキルは、『神器級装備』を美少女化させて好かれまくるチートだったので、成り上がって世界最強を目指します!

艇駆いいじ

第1話 パーティ追放、そして絶望

 スキル。誰にでも一つ与えられる、才能を反映はんえいした異能いのうの力。


 僕、ルカ・ルミエールは、10歳の時にスキルをさずかった。名前は<アーマー・コミュニケーション>。剣や防具などの装備品たちの声を聞くことができるというものだ。


 『声を聞くことができる』と言っても、防具のどこが痛んでいるとか、どこを修理してほしいとか、どこに落ちているとか……そんなことがぼんやりとわかる程度。


 前例のないこの奇特きとくなスキルを、周りの人々は『外れスキルだ』とののしった。でも、僕はこのスキルが大好きだった。


 なぜなら、僕は小さい頃から装備品が大好きだから。美しい形をした剣を見れば心が躍ったし、いい素材を使った鎧を見たら感動する。


 だから誰が何と言おうと、僕は自分のスキル、<アーマー・コミュニケーション>を誇りに思って生きてきた。


 生きてきたんだけど。


「ルカ、お前パーティ抜けろよ」


 どうやらこのスキルは、僕に楽な人生を歩ませてくれるつもりはないらしい。


「お前、自分が邪魔だってわかってるだろ? 荷物持ち君」


 パーティリーダーのルシウスが、威圧的いあつてきな態度で言い放つ。『話があるから来てくれ』とダンジョンの入り口まで連れてこられたと思ったら、開口一番かいこういちばんこれだ。


 とうとう来たか、と思う。普通なら衝撃的しょうげきてきなパーティ追放発言ついほうはつげんは、自分でも驚くほどストンと飲み込むことができた。



 僕はS級冒険者パーティ、『緋色の不死鳥スカーレット・フェニックス』に所属しょぞくしている。役職やくしょくは『荷物持にもつもち』。パーティメンバー全員分の荷物を持つのが仕事だ。


 外れスキル持ちの雑魚ざこである僕が緋色の不死鳥に所属することになったのは、幼馴染おさななじみのセシルが原因だ。


 彼女は、ルシウスにパーティに勧誘されたとき、『僕を同じパーティに入れること』を交換条件こうかんじょうけんに加入を決めたのだ。


 優秀なメンバーがどうしても欲しかったルシウスは、仕方なく条件を飲んだ、というわけだ。


 僕は自分のスキルのことをわかっていたし、実力がないから、入らないって言ったんだけど……何故かセシルがゆずらなかった。


 そんなわけで僕は荷物持ちになったというわけだ。


 パーティに入ってからは地獄じごくだった。ダンジョンを攻略する時は重たい荷物を運ぶことになるし、雑用ざつようばかり押し付けられる。


 おまけにパーティメンバーは、セシルを除いて全員、僕のことが嫌いで仕方なかった。


 どこにいても『邪魔だ』と言われるし、セシルが怪我をした僕のことを回復しようものなら、パーティメンバーが横から『荷物持ちに分ける魔力はない』とか、そんな罵倒ばとうは当たり前だった。


 それでも、僕は武器を見ることができればそれでよかったし、セシルが頑張る姿を手助けするのも仕事のうちだと割り切っていた。



「で、どうすんだよ。パーティやめるのか? やめないのか?」


 ルシウスはあからさまにイライラしながら、僕にる。


 ダンジョンの洞窟の中で大声を出すから、声がよく響く。いつにも増して迫力があって、僕は思わず息を飲んだ。


 普通なら嫌だとか言うものなんだろう。しかし、心の中で答えは既に決まっていた。


「……辞めるよ。僕はパーティから出て行く」


 僕は別にこのパーティに居座りたいわけじゃない。パーティのみんなも僕の存在を迷惑に思っているのはわかるし、だったら答えは一択だ。


 セシルは僕が仕事を失わないように気を利かせてパーティに入れてくれた。でも、これからは少し遠くで彼女の冒険を応援したほうがいいと思う。


 だから、僕はパーティを抜ける。


「そっかあ……ルカ、パーティを抜けてくれるのかあ……」


「うん。話は終わりでしょ? もうこんなところから出て、帰ろう」


 ルシウスは、この会話をよっぽど他人に聞かれたくなかったようで、わざわざ僕をダンジョンの入り口まで連れてきたのだ。


 警戒されているところ申し訳ないが、セシルに告げ口をするつもりはない。それでルシウスも満足だろう。


 告げ口をする意図いとがないことをルシウスに説明しようとした途端。彼の口元がニタリとゆるむ。今まで見たことないような不敵ふてきな笑みに、僕は全身に鳥肌とりはだが立つのを感じた。


「話は……まだ終わりじゃないんだよ!」


 その時だった。ルシウスはニヤニヤと笑いながら、僕の首に右手を伸ばしてきた。グッと首を掴まれ、息が苦しくなる。


「なに……するんだ……!」


「もしお前がパーティを抜けると言い出したら、どうなると思う?」


 どうなると思うって? 意味がわからない。ルシウスの力が強く、息をするのがやっとだ。僕は力を振り絞ってじたばたともがくが、彼はビクともしない。


「セシルはお前のことを心配して、後に続いて『自分もパーティを抜ける』なんて言い出すだろうなあ」


 ルシウスは僕の首を掴んだまま、ダンジョンの奥へと足を踏み入れていく。


「セシルにはパーティに留まってほしい。でもお前には消えてほしい。だとしたら、俺はこれからどうすると思う?」


 そこで、彼が言おうとしていることの意味を理解した。なんとか抜け出そうとするが、ルシウスの強い力から逃れることはできない。暴れれば暴れるほど、息は苦しくなっていく。


「お前は今日、行方不明になる。


 緋色の不死鳥のメンバーが必死に探すも虚しく、お前が見つかることはない。


 セシルはお前のことを諦め、もう二度と仲間を失うことがないように努力し、自分の才能を開花させていく……最高のシナリオだろ?」


 ぬかった。思ってみればこんなダンジョンの前に呼び出された時点でおかしかったんだ。


 ルシウスは、セシルをパーティメンバーとして留まらせるために僕を殺そうとしている!


「やめ……ろ!」


「やめるわけねぇだろ馬鹿が!」


 ルシウスは首を掴んでいる右手を離し、僕の腹部ふくぶに蹴りを入れる。圧倒的な実力差だ。強烈な一撃を食らって、僕は地面を転がって嗚咽おえつする。


目障りめざわりだったんだよ。セシルが貴重な魔力をお前に割くのが……お前に足を引っ張られているのが!」


 地べたに倒れている僕の顔面を、ボールのように蹴り上げる。痛い。口の中は土と血が入り混じったような味でいっぱいだ。


「セシルが自分の意志で魔力を使ったんだ……! お前が口を出す筋合いはないはずだろ!」


「うるせえ! ごちゃごちゃ言うんじゃねえ!」


 もはやルシウスは僕の話を聞いていない。


「いいか、俺たちは世界一の冒険者パーティを目指しているんだ。そのためにもお前の存在は邪魔だ。


 才能のないやつが生きている資格なんてないんだよ」


 息が苦しくて、過呼吸かこきゅうになっている僕の首根っこを掴み、ルシウスは僕の上半身を浮かせた。


「見てみろよ、これ」


 ルシウスに持ち上げられている僕の顔が見ている先は、ダンジョンのどこよりも真っ暗な、穴だった。


 ダンジョンの地面に大きな穴が空いている。一寸先いっすんさきも見通すことができないほどの闇が眼前がんぜんに広がる。風の音が聞こえてくるので、かなり深いことがわかる。


「じゃあな、無能。来世では俺の邪魔をしないでくれよ」


 ルシウスは僕の体を強く押す。抵抗ていこうすることができるはずもなく、僕は下へ下へと落下していった。

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