第2話 恋。
僕は恋をした。第一印象が儚く、透明感のある、夏色渚と言う女の子に、恋をした。
「僕は、あの子に恋したのか………」
これは、正真正銘の一目惚れである。
しかしどうだろう。僕は約19年間、生まれてこの方恋というものをしてこなかった。恋に関して無頓着だった。それ故に、この気持ち、感情が恋なのかどうか、俺にはわからないのだ。
ただ単に、かわいいと思っただけなのかもしれないし、ただ単に、周りとは違う異様な存在感に好奇心を擽られただけなのかもしれない。
あるいは、あるアニメのセリフを借りるとすれば『見とれ、見とれとれ』と言うように、彼女に見とれていただけなのかもしれない。
恋愛未経験の僕からすると、確定要素が少なすぎる為『恋をした』と断定することが出来ないのである。
そこで僕は、相談をするべく、親同士が仲が良く、幼稚園の頃から隣の家に住み、よく一緒に出掛けたり、お泊りなんかをした幼馴染であるサクラの元を訪れた。
「で、私は今日、なんでここに呼び出されたのかな?」
「いや、それは……えっと、あの……」
「相変わらずはっきりしないよね、光来って」
それに関しては、申し訳ない気持ちでいっぱいである。
「単刀直入に言うと、恋って何?」
僕は、それは、それはド直球に問いかけた。
「なに、なに?光来恋でもしたの?え、もしかして私?それならそれで、もっと早く言ってよ!もう~」
「いや、サクラの事を好きになる奴なんて、世界中探してもゴリラくらいだと思うぞ」
「な……言っていい事と、悪い事があるでしょ!そんな事言ってると、相談乗ってあげないよ?」
「それだけは御勘弁を……」
僕は、サクラに対する侮辱を前言撤回し、土下座する勢いで深々と頭を下げた。そして、サクラからのお許しを貰うことが出来た。
「で、恋についてだったよね?」
「うん」
「まあ、簡単に言うと、恋って言うのは、その人とずっと一緒に居たいって思ったら、それは恋なんだと思うけれど、光来はその人とずっと一緒に居たいって思うの?」
「それがまだわからないんだよな~。まだ一回しか会った事ないし、話したのも自己紹介くらい……でも、その人を見てると、なんだか幸せな気持ちになるんだよ。説明するのは難しいけれど、サクラが言う「ずっと一緒に居たい」っていう気持ちに近しいものなのかもしれない」
まだはっきりとはしていないが、サクラと話した事により、自分の気持ちが何なのかを理解し始めているのだ。
恋だと気づき始めているのだ。
「光来、それはたぶん、いや確実に恋だよ。光来はその子に恋をしている」
御年19歳。春野光来は、初めて恋を知り、初めて人を好きになった事を自覚した瞬間だった。
それは、高校最後の夏休み初日の事だった。
「あ、僕買い物の途中だったんだ。サクラすまん、また今度詳しく恋について教えてくれ!」
「まあ、光来がどうしてもっていうなら、教えてやらなくはないかな」
「ありがと!」
僕は、買い物袋を片手に、店を飛び出した。
「はぁ……いつになったら私の気持ち、光来に届くのかな……」
彼女もまた、恋をし、自分自身に言い聞かせ、嘘を付き続けている。
これまでも、これからも。
僕は、残っていた買い物を急いで終え、岐路ならぬ帰路へと就いた。
「あ、奇遇だね。こんな所で会うなんて」
「渚……さん?」
買い物からの帰り道、少し薄暗くなりつつある空の元、彼女は再び、俺の目の前に現れた。
「少し、あるこっか」
僕はまた、彼女に、渚さんに見とれてしまっていた。
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あとがき。
第2話からあとがきと言うものを書いてみることにしました!
ただ、あとがきとは何を書くものなのかよくわかないので、今回は、第2話の見どころを紹介!
1番の見どころは、幼馴染サクラの心情ですかね。まさかの片思い……。今後どうなるのやら。
そして、最後に再び渚さんと出会った光来。1話では語られなかった、渚さんの素性が次回明らかに、なるかも?こうご期待!
ということで、皆様からの応援コメント、辛口、甘口レビューお待ちしております!
次回、夏色渚。
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