第5話
二本目の煙草を吸い終わる頃に街に着いた。
ちょうど日も落ちてきているのでちょうどいい。
その足で雑貨屋へと向かう。
「いらっしゃい。おや、傷薬の補充かい?」
「いや、そっちは大丈夫だ。討伐部位を入れられる大きめの皮袋と採取した薬草なんかを入れる皮袋をいくつか欲しいんだが。」
「皮袋はそっちの棚にあるから好きなのを選びな。」
店員の指す方の棚に行くと大中小に分けられた皮袋があった。
とりあえず大と中は2つ、小は5つ買っておこう。
「これを頼む。」
「毎度。大が800、中が600、小が400ドルグだよ。合計で4800ドルグだよ。」
タグを取り出し会計を済ませる。
バックパックに仕舞って店を出る。
外に出ると隠密行動を発動して人気の無い路地へと入る。
バックパックから先ほど買った大きい皮袋と中くらいの皮袋、小さい皮袋を2つ出して、それぞれにウルフの皮とゴブリンの右耳、採取していた薬草と毒草を入れ直す。
バックパックを背負い直し、皮袋は手に持って傭兵ギルドへと向かう。
これは面倒だな。
神様からもらった常識の中にマジックバッグは存在するが、貴重な品で大きな傭兵団や力のある領主や商人ぐらいしか持っていないというのがある。
俺みたいなソロの傭兵が持っているのがバレたら何を言われるか分らんな。
悪目立ちするよりは皮袋手持ちスタイルのほうがましか。
そう考え、今後も皮袋を持つスタイルでいく事を決める。
傭兵ギルドに着くと、依頼の報告に来たであろう傭兵達でカウンターと食堂が混雑していた。
とりあえず一番空いている列に並ぶ。
「次の方どうぞ。」
俺の番が来た。
並んでいる時に気づいていたが今回の対応もブルクスだった。
「常設依頼の西の森の調査・討伐の報告にきた。ゴブリンの右耳がこっちでウルフの皮がこっちだ。ゴブリンが11体、ウルフが6体分だな。あと薬草と毒草も採取したんだがどうすればいい?」
「討伐部位はこちらでお預かりしますね。薬草と毒草も常設依頼で、薬草は5つで一束と数えます。一束500ドルグですね。毒草は3つで一束、一束300ドルグですね。」
「どちらも数は数えてないな。」
「でしたらお預かりしてこちらで数えて精算しますよ。数をごまかしたりはもちろんできませんのでご安心を。」
「悪いな頼む。あと、西の森の近くにある廃墟のほうで大きな音と煙が上がっていたがあの辺なにかあるのか?」
「いえ、特になにも。たまに森から出た魔物が徘徊するぐらいですが、だいぶ前に誰も居なくなった街の跡なので。」
「そうか。」
「念のため裏で何か報告が上がってないか確認してきます。では、精算してきます。皮袋はお返しするので少々お待ちください。」
そう言ってブルクスは皮袋を抱えて、カウンターの奥へと引っ込んで行った。
少し待つとブルクスが皮袋を持って出てきた。
「すいません。お待たせしました。まずが討伐の報酬ですがゴブリンが5500ドルグ、ウルフが4800ドルグになります。次に薬草が4束ありましたので2000ドルグ、毒草が3束で900ドルグになります。合計で13200ドルグですね。タグを出してください。」
言われた通りタグを出すと、薄い板を重ねられる。
それが青く光りを発した。
「これでドルグが追加されたはずです。」
タグを握りステータスと呟くと
名前: ハント LV:2
ランク: 1
性別: 男
種族: 人種
スキル: 魔弓術 短剣術 体術
身体強化 気配察知
隠密行動 鷹の目
魔力操作 職人の目
所持金:48900ドルグ
と所持金が少し増えていた。
さっき皮袋も買ったしなと思いながらタグを仕舞う。
「ありがとう。問題ない。」
「それとさっきの報告の件ですが、他にも煙を見たという報告が一件だけ来てますね。もし気になるようでしたら西の森の調査依頼のついでに行って来てはどうでしょうか?何かの異常や、異常発生の兆候があればギルドで情報を買い取りますよ。」
ニコリと話すブルクスに余裕があったらなと返す。
「それと、他からの報告も合わせてですが少しゴブリンの数が多い気がします。もし巣が作られているような場所を見つけたら教えて下さい。こちらも情報を査定して報酬にプラスされます。」
「分かった。」
報告が終わったのでギルドを出て宿へと向かう。
宿へ戻りカウンターで弁当の礼を伝え鍵を受け取る。
部屋に戻って煙草を咥えながらバックパックを下ろして、腰のベルトも外す。
バックパックから新しい着替えと先ほど使った皮袋を出す。
椅子に腰かけてふぅ~っと煙を吐き出しながら明日は廃墟も見てみるかと考える。
煙草を吸い終えて服を脱ぎ皮袋と一緒にクリーンを掛けてバックパックに仕舞う。
そのままシャワーを浴びて今日の汚れを落としてから一階へと降りる。
カウンターでカギを見せて夕食を頼む。
プカプカと煙草の煙を吐き出しながら夕食が来るのを待っていると他のテーブルの話し声が聞こえてきた。
「何事も無くて良かったな。」
「ああ。バンデットレイヴンの連中と会わなくて良かったぜ。」
「あいつら村をひとつ潰して逃げた村人を追い回してたって話だからな。」
ちらりと視線を向けると6人ほどの傭兵がテーブルを囲んで飲み食いをしていた。
「しかし、北も物騒になってきたな。」
「そうだな。このままこっちに居たいもんだが帰りの護衛もあるしな。」
「護衛依頼が終わったら西か東に移動しようぜ。」
「そうだな、中央でもいいぞ。」
「中央はかたっ苦しい…」
「はいよ!ビールと焼肉とサラダとパンだよ!」
聞き耳を立てていると、目の前にドンドンとジョッキと皿が置かれる。
聞き耳を一旦やめる。
「ありがとう。いただきます。」
礼を言ってビールをゴクゴクと飲んで食事に手を付ける。
食事に手を付けながら聞き耳を立てているとバンデットレイヴンというのは大陸北部で幅を利かせている傭兵団らしい。
どちらかというと盗賊団、山賊団と言ったほうが近そうだ。
どうやら北部から少しづつ南下してきているようで、最近潰された村も西の森の北の方にあったそうだ。
今日の廃墟の煙と何か関係があるかもしれない。
大陸の中央には、『金色の獅子』という傭兵団があって、かなりの規模らしい。歴史と伝統、規律を重んじていて自由気ままな傭兵からすると堅苦しさも感じるそうだ。そう考えると東の荒鷲団は自由だよな、団長のクマズンの性格も悪くないしという話しを聞きながら食事を続ける。
まあ、明日の報告の時にでもブルクスに詳しく聞いてみるか。
出された料理を平らげて部屋へと戻り軽くシャワーを浴びてからベットに潜り込んだ。
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