第四百三十五話 アデルが不安を吐露する時

「現在迎撃に部隊を向かわせています。

敵の数はそこまで多くはありませんが、不安要素もあります」


ライトの問いかけに対してアデルは少ししかめっ面に近い顔で

こう告げる。

言葉通り、その内心に何らかの不安を抱えているのを予想するのは

容易であった。


「その不安というのは?

この数であればこちら側の戦力でも十分迎撃は……」

「いや、その戦力の構成に問題が有るんだと思う」


ラズベリーが不安という言葉に引っかかりを覚えるが、

ライトは構成に問題が有るのではないかという。

その直後にアデルは一瞬両目を見開く。


「どうやら当たったようですね、

そしてその不安はこちら側の迎撃部隊が今回初出陣だからでは?」


そんなアデルの様子を見たのか、ライトは更に真剣な表情で少し前にでる。

前に出たライトの圧を感じたのかアデルは


「やはりあなた方に誤魔化しは出来ませんね……

はい、今回の迎撃戦が初出陣となる彼等が大丈夫なのかが心配です」


と不安が少し滲んた顔でライトにこう告げる。


「初陣って、迎撃部隊の皆さんもずっと今の機体で戦っているのでは?」

「いや、それはあくまで僕達がここに来る前の話だよ」

「それは分かるけど、兵器にしたって初陣というわけじゃないでしょう?」

「そうだね、僕達がそこに手を加えるまではね」


アデルの不安が釈然としないのか、アップルやブルーベリーは

矢継ぎ早に言葉を投げかける。

だが一方でライトはアデルの心境を察しているのか、

二人の言葉に対してアデルに変わり返答する。


「僕達が手を加えるって、

ここに来た後にライトが改修を加えていたけど……

あ、もしかしてアデルさんが不安を感じているのって」


ライトの発言を聞いて何かを察知したのか、

ブルーベリーもハッとした表情を見せ、顔を一瞬上に向ける。

一方アップルはそれを見てもまだ気付いていないのか、

その表情が不思議そうな物になるだけであった。


「ええ、皆さんを疑っている訳では無いのですが、

果たしていきなりの実践に対応しきれるのかどうか……」


ライト達の発言に対し、アデルは遂にその本心を吐露する。

しかしその表情は真剣にライトの目をじっと見つめていた。


「いきなりの実践でって、ライトの改造が不安だって事?」

「まあ仕方ないよ、僕が自分で作った道具でも

初めて使う時は不安を持つんだから。

まして戦場での使用はたった一つの失敗が大問題になるんだ」


アップルは食ってかかろうとするが、

それを先読みしていたかのようにライトはアップルを制止する。

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