第四百三十六話 アデルの不安を察する時

「それは……そうだけど」


ライト本人から説明を受けたにも関わらず、

アップルの表情はアデルからやや斜めに視線を反らしている。

そんなアップルをみてライトは


「アップルが不服に思うのも分かるけど、

アデルさんの不安を払拭するには結果を出すしか無いよ。

それよりも万が一に備えて僕達も待機しておこう」


と言いながら、アップルがアデルから反らした視線に合わせる。

その様子を見たアデルは


「ええ、ですが今回は兵士達にギリギリまで戦ってほしいと思っています。

今ライトさんがおっしゃったように、僕が兵士達の初陣に不安を持っているのは

事実です。

ですがそれを払拭するには……」


こう告げながら視線をアップルとライト双方と合わせる。

その様子を見たラズベリーは


「兵士に戦って、そして勝ってもらうしか無いという訳ですね」


そう言いながらアデルに真剣な顔つきを向ける。

その言葉に対しアデルは黙ってうなずくものの、

表情はラズベリーと同様に真剣そのものであった。

そして少しの間の沈黙が流れるとライトは


「その答えはそろそろ出ると思いますよ、

モニターを見て下さい」


と唐突にモニターに目をやるように促す。

その言葉に促されるままにアデルやアップル、ブルーベリーは、

いや室内に居た全員が同時にモニターへと目をやる。


「なるほど、もうすぐ答えが出そうですね。

彼等に連絡を入れなくて宜しいのですか?」


モニターを見たアデルの側近はこう告げると、

画面に向けていた視線をアデルの方へと戻す。

側近が言っている通り、間もなく兵士達と星間連合の部隊が交戦を開始するのが、

モニターに映っている反応から見ても明らかだった。


「ええ、ただでさえ初陣となる先頭だからね。

ここで余計な連絡を入れて彼等に重圧を与えたくない」


そんな側近に対し、アデルは敢えて連絡は入れないと告げる。

それは兵士達に対する気遣いから来る事なのは疑いようが無い。

しかしそれを見ているライトは


「手や足の動作に落ち着きが無いね……やはり言葉ではああ言っても、

不安は隠しきれていないか。

だけどそれを払拭するには結果を出してもらうしか無い」


と答えを示す方法がアデルの言う通り、

兵士達に勝ってもらうしか無いと悟っている為、

ライトも敢えてそれ以上何も言う事はなかった。


「さて、そろそろ交戦開始ですね」


ブルーベリーがそう告げると同時に、

それをゴングにしたかのように迎撃部隊と星間連合が交戦を開始する。


「さて、皆さんがどこまでやれるのか、僕にも見せて下さい」


その画面を見ながら、ライトも又兵士達を見極めようとしていた。

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