第四百三十一話 最深部にたどり着く時

「つまり、ここもその希少な場所の一つであり、

それ故に星間連合は侵攻を遅らせてでも確保を優先していると?」


兵士とアップルのやり取りは完全に先程までと立場が逆転していた。

だが兵士はここで


「え……侵攻を遅らせているとはどういう事です?」


とあっけにとられた表情を見せる。

どうやら今の発言は想定外だったようだ。

その表情だけでなく、一瞬手がビクンと動いたのもその証明である。


「ええ、ここは皆さんの拠点からあまり距離はありません。

それに私達が来る前は戦力差が圧倒的だったということですよね?」

「ええ、今となっては心苦しい話ですが、

確かに星間連合との戦力差は圧倒的でした」


アップルの発言を聞いた兵士は体を小刻みに震わせていた。


「だとするとこの地点に拠点を作るより、

一気に制圧してしまったほうが早いはずです。

にも関わらずこうした施設をわざわざ作ったという事はつまり……」


兵士が震えているのが分かったのか、

次のアップルの言葉は少し回りくどい印象を受ける。

だが兵士は


「それだけ資材の確保が大切である、そうおっしゃりたいのでしょう」


と言葉を続けていく。


「その点を承知されているのであれば十分です」

「そろそろ先に進みましょう。

お互いの疑問もひとまずの答えが出ましたし」


アップルとラズベリーは椅子から立ち上がる。

すると兵士も


「そうですね、先に進みましょう」


と同意して同じく椅子から立ち上がり、

その目を通路の先へと向ける。


「さて、ここから先には何があるのかな?」


ライトはそう告げると再び先頭に立って足を動かし始める。

その足取りは軽く、傍目には遠足に来た小学生の様にも見える。

いや、外見からすればそれでもおかしくないのだが。


「おや、又別の機械が見えてきましたね」

「本当だね、だけど自立して動いてこない辺り、

兵器とは違うみたいだ」


前に視線を集中させていたライトとラズベリーの言葉を合図にして

他の面々も前方に視線を目にやる。

するとそこには二人の言う通り、

確かに今まで見たことのない機器が置いてあった。


「あれは……星間連合の発掘用機器ですね。

おそらくはここが現在発掘されている最深部なのでしょう」


機器をみた兵士達はすぐさま話し始める。

その様子からこの機器を見たのが初めて出ないのは明らかであった。


「なるほど、だから資材がむき出しになっているのですね」


その直後にライトがふと何かに目をやる。

それに合わせて他の面々も視線を動かす。

するとその先には砂の中に埋まっている金属が見えた。


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