第四百六話 ピープルの思考を読む時

「となると、今後は言葉を発する獣人も投入されてくると?

しかし何故今になって言語を発する獣人が……

作戦行動の統率自体は既に取れているはずですが」

「柔軟な思考能力を与える必要が生じたのかもしれませんね」


セリアンが疑問を口にすると明帝はこう返答する。


「その柔軟な思考力というのを、

是非私にも聞かせていただけますか?」


と通信が入り、同時に部屋の画面に長老も映し出される。


「長老、そちらも通信が繋がったのですか?」

「ええ、司令官に先程から何度も通信を送っていたのですが、

反応してもらえず、今になってようやく繋がったと思ったら、

作戦報告が行われていたという訳です」

「い、いや人聞きが悪いですよ。

それじゃまるで私が作戦の報告を長老に伝えないようにしているんじゃないか、

と解釈されるではないですか!!」

「おや、違うのか?

そうだとしたら失礼したな」


通信が繋がった事にセリアンが質問すると長老は飄々とした言葉ではあるが、

明らかに司令官に対して牽制しているような口調で話しかける。

それを聞いた司令官は間違いなく動揺しているとしか思えない声を出し、

長老に訂正を求める。


「やはりこの司令官、腹に一物ありそうだね……」


今のやり取りを聞き、明帝は内心でこう思考する。

長老の話で動揺していることと合わせ、司令官をそのまま信用して良いのか、

明帝の中でその判断基準がぶれつつあった。


「僕達の方から行う報告は以上だよ。

続いてはそちらの作戦を聞かせてくれるかな?」


高御がこう話をすると明帝は


「では、こちらの方は僕からお話します」


と言って作戦内容の詳細を話し始める。

その話の途中


「というわけでこちらでも言語を発する獣人と交戦、

その後司令室と獣人を生み出していた場所を制圧しました」


と話すと高御は


「さっきも少し話していたけど、そちらでも言葉を話す獣人と交戦したんだね」

「ええ、ピープルの司令官の口調から考えると、

恐らく施設内獣人の切り札だったのでしょう」


こう話を明帝と続ける。


「これまでの話をまとめるとピープルは、

言葉を話す獣人を重要な戦力として考えているようですね」

「ああ、柔軟な思考力を生み出せる様にする事で戦力をより強化したいんだろうね」

「ですが何故急にピープルは獣人の強化を……」

「それについてだけどよ、司令官の口調から考えると、

高御さんたちの助力を得られた事がどうたら言ってたから、

それに驚異を感じたんじゃないのか?」


一同は話を続け、獣人の強化は高御達と関係があると結論づける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る