第三百二十五話 長老が決断する時


「つまり、その方向を奪回出来れば他の場所に居る面々と合流、そこまで行かなくても他のエリアの面々に呼びかけられると?」

「はい、しかし施設を奪回された事はピープルも気付いて居るでしょう、故に現状で無理に押し込むのは危険だと思われます」


高御が今後の方針を問いかけると長老はこう返答し一旦ここで行動を中断する事を告げる。


「その方向が重要なのであればそちらに戦力を集めてくる、或いは施設を再度狙ってくる可能性は十分考えられますね。

そう考えるとまずは守りを盤石にしておくべきでしょう、もし希望されるのであれば此方からも戦力を派兵します」


高御が提案を持ちかけると長老は


「戦力でございますか?しかしそちらの人員は……」


と少し戸惑った返答を行うが高御はそれに対し


「確かに人員は遅れませんが、それ以外の物であれば送る事が出来ます」

「それ以外の物って……ああ、あれの事か」


と返答しスロープもそれを察した表情を浮かべる。


「高御様が言っているあれの正体をお前達は知っておるのか?」

「ああ、向こうで世話になってた時鍛えさせてもらったからな」

「あの無人兵器の事ね、それを送ってくれると言う事でしょうか?」


長老がスロープに問いかけるとスロープはそれに対して納得した表情を浮かべセリアンもそれに同意する。

そしてその二人が見せた表情に対して高御が満面の笑みを浮かべている辺り、それは事実の様だ。


「ああ、型落ちモデルだから性能はそこまででもないけど防衛戦力にはなると思う。

後彼等が言ってた様に訓練用にもなるかな」


そう続ける言葉の声色が明らかに高かった事もそれを裏付けている。


「まあ、提供して頂けるのであればそれは助かりますが……それは此方の世界でも使えるものなのですか?」

「ライトの発明品は問題なく作動していたから大丈夫だとは思うんだけど、それを確認する意味も兼ねてそちらに送りたいのです」

「それはそうですが、それでは此方が借りを作り続ける事になってしまいますね」


側近の兵士の発言についても軽く流す高御だが、その直後に長老の発した言葉に少々引っかかりを覚える。


「?それはどういう事ですか、今の状況で貸し借りを気にしている場合では……」

「確かにそうかも知れませんが、我々は本来貸し借りを好まないのです、故に対等な立場にて協力しあいたい、そこでですが、セリアンとスロープをそちらへの協力者として加えさせて頂きたいのです」


その直後に長老が言った言葉は側近の兵士に動揺した表情を浮かばせる。

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