第二百九十四話 少女がなぎ倒す時

その影が獣人達の前に降り立つと目の前から迫っていた異形は一斉に足を止める。

それを確認するとその影の主、ミスティは


「さて、此処からは私が相手になるわよ!!」


と良い、交戦する構えを取る。

その光景を見た獣人は何が起こったのか分からず、只呆気にとられているといった印象だ。

そしてミスティは異形に向かっていき、獣人へと向かっているであろうその進路を妨害すると


「パワーパフ……ボディーアップ!!」


と言って全身に何かを纏わせる。

そしてそのまま異形に接近し、流れる様な蹴り、拳を叩き込んでいく。

その威力は一見すると華奢な少女にしか見えないその身体からは想像もつかないものであった。

一撃で異形の体をへし折り、その場に蹲らせていく。

その光景を見ていた獣人の一人が


「何が起こっているのかは分からないが、どうやら我々の味方の様だ……

総員、今の内に体制を立て直せ!!」


と叫ぶ。

その叫び声から恐らくその部隊の指揮官なのだろう、だがその声も


「しかし、既に消耗しきっている我々が再び体制を立て直して交戦するには……」


と言う配下らしき兵士の現実的とも取れる意見にかき消されそうになる。

だがその言葉が耳に入ったのかミスティは


「でしたらこれを受け取って下さい!!ホーリー・ヴェール」


と言うと負傷している獣人達を白い幕で包み込む。


「え……これは……」


またしても突然の出来事に獣人達は困惑するが、その直後にその体の傷が癒えていくのが目で分かる。


「何……この優しい何か……詳細は分からないけど何か穏やかな気持ちになれるもの」

「これも……あの存在がやっている事なの?」


ミスティの事を存在と呼んでいる辺り、どうやらこの世界には人類という認識は無い様だ。

それ故存在と呼ぶしか無いのだろう、獣人達の困惑した声もそれを物語っていた。


「さて、続きをしていかないとね!!」


ミスティはそう叫ぶと異形への攻撃を再開し、格闘術で薙ぎ倒していく。


「凄いですね……ああっ!!右を」


それを見ていた獣人の一人が右に注意を向ける様にミスティに呼びかける。

だがそれよりも早くそこに立っていた異形が妖術らしき紫の光を放ってくる。

それに対して獣人達も魔術を使おうとするが展開が明らかに間に合っていない。


「つっ、助けられてばかりで……」


獣人達は目を瞑ろうとするがミスティは


「レッド・バリア!!」


と言って右手を翳し、迫ってきた妖術の前に赤い膜を出現させて妖術を防ぎ、それをそのまま押し出して妖術ごと押し返す。

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