第二百八十一話 新たな紫が見える時

「何とか市街地に出て物資を補給したいですが、現状ではそれも難しいですね。

せめてその点だけでも……」

「仕方無い、リスクは承知の上で転移通路を……」


兵士の一人が市街地に出る事を提案すると指揮官らしき人物は転移通路の使用を検討するがその直後に更に別の兵士が


「隊長、一寸待って下さい……アレを……」


と行って隊長を制止し、更に奥の方を指差す。

他の兵士と隊長が指が指す先を見つめるとそこには紫色の光が見えていた。


「あれは……一体?」

「しかし、あの光の色は我々の転移通路に混入してきた転移通路の色に似ていませんか?」

「とにかく行ってみましょう、もしかすると打開策になるかもしれません」


兵士がそう告げると部隊は一斉に立ち上がってその光が見える方へと歩いていく。

そして翌日早朝、ESB本部の謁見の間に一同がドタドタと集まって行く。

中に入ると高御が既に待機しており、その奥の画面には中東地域の代表が映し出されていた。

一同が集まっていく中、最後にセリアンとスロープも入ってくる。


「皆さんお揃いの様ですね、ではお話を初めさせて頂いて宜しいでしょうか?」

「ええ、始めて下さい。

いきなり僕達に通信を送って来た理由から」


中東地域の代表が口火を切ると高御はこう返答する。

その口ぶりから高御も今回の通信の目的が何なのかは把握していない様だ。


「実は昨日、我々の部隊に皆さんから貸与して頂いた機器に反応があり、その反応を調べた所、先日日本地区に出現したゲートの反応と同じ物が検知されました」

「つまり、中東地域に日本と同じゲートが開こうとしているという事ですか?」

「ええ、そう考えてまず間違いないと思います。

場所が森林地帯なのでまだ直視する事は出来ませんが間違いないと思います」


中東地域の代表がこう話すとミスティが問いかけると中東地域の代表は森林地帯であるが故に確認は出来ていないと言う事を告げる。


「つまり、それの確認をする為の部隊を送り込むという訳ですね」

「ええ、ですが場所が場所である上、発生した現象が現象であるが為に皆さんにもお伝えしておくべきだと思いましたのでご連絡させて頂きました」

「つまり、僕達の方でも部隊を派遣して欲しいという訳ですか?」

「いえ、そこまで強制している訳ではありません。

ですが何かあってからでは遅いのです」


高御が問いかけると中東地域の代表はあくまでも通信は送っただけだと告げるものの、その本心が部隊を派遣して欲しいと言う事なのは口振りだけでも明らかであった。

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