第二百六話 アデルの問いかけを聞く時

そしてその闇を受けた獣人はその場に座り込み、その身に纏っていた紫の靄が消滅していく。

そしてそのまま両目を閉じ、その場に倒れ込んでしまう。


「後はもう一方を!!」


ミスティはそう告げるともう一人の獣人に対して目をやるが獣人は直様ミスティに攻撃を加えようとしてくる。

だがその直後先程ミスティが放った闇と同じ物が現れ獣人に当たる。


「ミスティさんが放った物と同じ闇を?しかし一体誰が……」


アデルの側近の兵士が困惑した表情でその闇が放たれた方向に目をやるとそこには高御が掌を交差させていた。


「高御さん?高御さんも同じ力を使えると言う事なのですか?」

「そうかも知れないけど、それを知りたいのであればご本人に聞くしか無いと思う」


兵士が呟いた事に対してアデルは本人に問いかける他無いと告げる。

すると高御が放った闇を受けた獣人もその場に座り込み瞳を閉じて倒れ込む。

それを確認したのか周囲の闇が解除され、入った直後の部屋に戻っていく。


「これで……被害が生じる恐れは無くなったね」

「だけどこれで全ての問題が解決した訳じゃない、いや、寧ろここからが始まるのかも知れない」

「ええ、この二人が目を覚ましたら聞かなければならない事が山程存在しているからね」


戦いは終わったものの、一同の表情は何処か暗さ、深刻さを増している様に見える。


「とにかく、今は彼等を医務室まで運び込みましょう」


明帝がそう告げると同時にクウォスと高御が獣人を背負い、そのまま医務室へと移動していく。

そしてそのまま医務室のベッドに寝かせると医務員に


「この子達が目を覚ましたら直ぐに連絡を入れて。

万が一先程と同じ様に暴れようとした場合は拘束結界の使用も許可する」


と高御は告げ、医務員は首を縦に振って頷き、了承した事を証明する。

そして医務室から出ると


「さて、申し訳ございませんが……」

「分かっているよ、僕とミスティが使った力が何なのか、それを知りたいんでしょう?」


アデルが早々に質問を行い、それに対して高御はこう返答する。


「よくお解りですね、それともそれも力の一環なのでしょうか?」

「その回答で正解よ、先程の光景を見られた以上隠し通すのは不可能だから先に言っておくわ。

最も、隠すつもりがあるのかと聞かれれば微妙な所でもあるけど」


アデルが続けて発した言葉に対しミスティはこう返答する。

その言葉に対し他の面々が反応を見せない辺りどうやら彼等は二人の力について承知しているようだ。


「とは言うものの、廊下で立って話す事ではないからね、何処かに移動しようか。

しかし謁見の間では医務室から距離がある」

「なら私の部屋であればデータも揃っていますよ」


高御が話す場所を探し始めると七宝は自分の部屋が良いのではないかと提案する。

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