第百九十四話 次の通路が開く時

「ええ、次の異形の出現に合わせて私と神楽が調査に向かう事になっているのだけどそのタイミングが測れない以上大きく動けないのよね」

「何時出現するか分からない以上大きく動いてそちらに対応出来ない……と言う訳には行かないという事ですね」


七宝がその理由を説明するとパウは納得した返答を行う。

それだけその説明に説得力があったという事なのだろうか?


「何れにしろ星間連合、異形共に次の戦いで大きく動く可能性が高い、その点を考慮しつつ今後の戦況を見て動いていくしか無い。

その事を皆も肝に銘じておいてくれ」


高御がそう告げると他の面々は一斉に敬礼し、そのまま謁見の間を後にしていく。


「新戦力か……それを喜んで良いのかどうか……」


謁見の間から一同の姿が見えなくなった後、高御はふと内心の言葉を漏らす。


「確かに喜ぶというのは違うかも知れないわね、だけど今はこうするしか無い。

例え生涯大逆者となるのだとしても」

「僕はそれで構わないさ、只あの子達がね……」

「それでも進むしか無い、既に分かっている事でしょう」

「ああ、らしくない発言だったね」

「それも仕方の無い事だと思う、既に世界は前例の無い状態へと進みつつあるのだから」


高御の内心の不安を知ったが故なのか、ミスティは彼に激励の言葉をかける。

いつの間にか先程まで電源がついていたモニターも消えており、部屋の中は妙な薄暗さに包まれていた。

その薄暗さは高御の内心の不安を映し出している様にも見える。

一方その頃、ESB本部とは全く異なる場所、静かな何処かの山奥で何か不気味な空気が渦巻いていた。

登山客が訪れているのか笑い声は聞こえるものの周囲に人影は見られない。

人があまり訪れない場所なのだろうか?

そこに小さく黒い何かが出現しつつあった。

それから数日後、日本首相からESBの面々に通信が入る。


「日本首相、いきなり通信が入りましたが何かあったのですか?」

「ESBの皆さん、申し訳ございません。

ですが至急連絡しなければならない事態が発生したのです」


突然の通信にも冷静に対応する高御に対し日本首相は明らかに焦燥感を感じさせる喋り方で話しかけてくる。


「一体何があったんです?」

「実は皆さんから提供して頂いたレーダーに反応が見られたのです。

場所は東北地方の山奥、転移通路の反応です!!」


その場に居たパウが首相に問いかけると首相は転移通路が開きそうになっていると言う事を告げる。


「転移通路……と言う事は偵察員が又何か仕掛けて来るつもりなのでしょうか……」


首相の発言を聞き、アデルはこう発言する。

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