第百七十六話 四人が駆け寄る時

「ええ、異形の上層部は何らかの目的があるのかも知れませんが、その下にいる異形は思考能力が無い野蛮そのものと言っていいでしょう。

然しそれ以上にそうした存在が姉弟な戦闘能力を持っていると言うのが厄介です、それが今回の一件で起こった職員や民間人に対して襲いかかると言う事態を引き起こしました」

「ええ、皆さんが武装を提供してくれていなければどんな事になっていたか……特に日本はこれまで殆どこうした戦いの経験がありませんから」

「ええ、ですが今回民間人のお二方が迎撃して頂いた事で民間人でもある程度防衛する事が可能だという事は証明されました。

今回のケースをベースに呼びかけ、自衛を徹底して頂けますとせめてもの救いになります」

「分かりました、此方でも可能な限りの呼びかけを行います」


高御と日本首相が話をする中、民間への自衛の必要性の呼びかけを行う事で話を纏める。


「此方も可能な限り異形についての情報を収集し、今後の戦闘に備えます。

現状此方の言葉が通じない以上戦うしかありませんから」


高御と日本首相の間でそれぞれ防衛についての約束が結ばれた所で通信を切り、高御は続いて何処かへと移動していく。

その移動先は異形を捕らえている地下牢であった。


「七宝が粗方調べてくれたとは思うけどこいつらから何か情報を得られないだろうか?僕の方でも念入りに調べておこう」


高い親御はそう告げると周囲を見渡し、地下牢の様子を見回す。

するとそこには異形によってついたと思われる壁の爪痕や格子についた牙の噛み跡等が残されていたが、最早抵抗する気力も失ったのか異形はその場に横たわっている。


「爪や牙の後が生々しいな、それだけ思考能力が無いという事なのか……

そして今横たわっているのは力尽きた故なのか、それとも……」


その周囲を見渡しながら呟くものの、その表情は暗く晴れていない。

その様子は明らかに沈んだ口調である。

新しい情報が得られない事が理由なのか、それともそうでないのか。

暫く異形と地下牢の様子を見ていたがその後諦めた様に地下牢を後にしていく。

そしてその足で向かった先は兵器の開発、実験場所であった。

そこに居た四人の少年少女が高御の姿を見ると彼等は一目散に近寄ってくる。


「高御様、此処に一体何をしに?」

「君達の様子を見に来たんだ、そろそろ君達の戦力も完成する予定だからね。

クリン、レモン、テテル、グレープ」


高御に近付いていった四人がそれぞれ名前を呼ばれると四人は嬉しそうな表情を浮かべる。

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