第百六十二話 罠を見抜く時

「焦燥感が生まれているのであればその鋤を突いて本星の同志達を救助出来ませんか?」


アデルの発言で焦燥感という言葉を聞いた側近の兵士はこう問いかける、

それに対して他の兵士も


「確かにその通りかも知れませんね!!今なら……」


とその兵士の言葉に賛同するがそこに神楽が


「本当に奴等に焦燥感が生まれているのであればね」


と水を射す様な発言をする。


「?それはどういう意味です?焦燥感が生まれているというのが本当というのは?」


兵士が神楽に質問するとアデルは


「あの戦力が初めから捨て駒であった可能性もある、そういう事なのでしょう?」


と神楽に返答し神楽はそれに対して首を縦に振って頷く。


「捨て駒?それは一体どういう……」

「つまり、あの戦力を用いて異質な行動を取る事で焦燥感を抱いていると思わせて調子に乗らせ、その上でのこのこやってきた所を戦力多数で返り討ち、そういうパターンも考えられるって事だよ」

「あの戦力が初めから捨て駒……考えられなくはないですね」

「型落ち品を送り込んできたのもそう考えれば納得は行くわ、だから此処は……」

「当初の予定通り地球の防衛戦力増強を最優先事項として行動する、それが一番得策と言えるでしょうね」


兵士が一旦は本星への帰還を提案するものの、それが罠の可能性もあるという神楽の指摘からその提案は断念する。


「ええ、僕達も当初からそのつもりで考えていましたから。

罠でなかったとしても今直ぐ本星への帰還を行うのは時期尚早だと思います」


アデル自身もそう考えている事を話し、一同の次の方針は当初の予定通り地球の戦力増強である事を再確認する。

一方その頃マルティー本星において


「ええい、奴等を焚き付ける為の戦力として送り込んだが……」

「完全に敵の手に落ちてしまった様だな、それに此方に仕掛けてくる素振りも見せん、どうやら此方の手の内は読まれている様だな」


という会話が行われていた。


「奴等に此方の戦力を態と迎撃させ、その勢いで此方に誘い込む事で一気に叩く事を提案してきたがどうやら見抜かれた様だな、地球側の防衛戦力を統率する物も相当な切れ者であると見た」

「そういう事なのでしょうね……此方を迎撃すれば勢い付くと思いましたが。

特にあのアデルという小癪な皇子であれば」

「それを止める程の実力があるという事なのだろう、所で準備している戦力が全て無駄になるという事は無いだろうな」

「ええ、此方で用意した戦力はそのまま本星の反乱軍制圧に転用します」


その会話の内容は何処と無く不穏であり、ベルマーとマルティーのトップの会話である事が伺える。

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