第百五十話 別世界の会話を聞く時

「移動魔術の使用中に何らかのトラブルが生じたのでしょうか?」

「可能性としては考えられなくはないな、あの魔術はかなり高度な詠唱が必要となる魔術だ。

付け焼き刃であの戦力に習得させるというプランそのものに無理があったのだろう」

「やはり詠唱に特化させる必要があるという訳ですか。

提案事態は決して悪くはないと思ったのですが」

「実際悪くは確かに無いさ、戦力を一つに集約する事で対応力を高めると言うのは理に適っている。

だが今回の場合はそれが当てはまらなかったというだけだ」

「プランの見直しを提案します、今後同様の事態が生じた場合にどの様な問題が生じるか分かりませんから」

「ああ、そうした方が良いだろうな。

だが一方で安定した移動魔術の稼働は今後の戦局を左右する重要な問題だからな」


この会話を行っているのは見た目は人に近いものの、明らかに人とは異なる毛皮や尻尾等が確認出来る何者かであった。


「それはそうと問題が起こった移動通路は何処に繋がったのか分かったのか?」

「ええ、追跡して調査した結果別の世界に繋がっている可能性が極めて高いと推察されます」

「つまり、我々の世界とは異なる世界への通路を開いてしまったと言う事か、だとすると厄介な事になるな」

「ええ、あの兵力は只周囲を見境無く攻撃するだけの存在、移動先で無用な騒動を引き起こしたとなれば此方の世界に進行する口実を与える事になりかねません」

「そうなると厄介だな、此方側が先に手を出した事になる以上その存在が此方にテオを貸してくれる事はあるまい」

「移動通路魔術の改善も含め、全てを並行して勧めていく必要がありますね」


何者かは会話を続けるがその内容は何処か不穏な空気を感じずには居られないものであった。


「その改良にはどの位の時間がかかりそうか?」

「はっきりと申し上げる事は出来ません、ですが魔術事態に大きな欠陥がある訳ではない以上そこまでの時間がかかる事は無いかと」

「そうか、だが油断はするな。

その慢心が今回の問題を引き起こした側面がある事は否定し難いのだから」

「はい、肝に銘じて起きます」


何者かの会話は此処で途切れ、その内の一人はその部屋の外に出ていく。

部屋に残っている他の面々はそれをじっと見つめるのであった。

そして翌日、舞台は再び高御、神楽の世界へと戻り、地球へと向かう移動艇の前にエリーが立っているという状況となる。


「さて、これから地球に向かう訳ですが、首脳達との接触場所は何方なのですか?」


エリーは高御達にそう問いかける。

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