第五十六話 神楽が動く時
「無論、此方としてもみすみす奴等をそちらに向かわせるつもりは毛頭ありませんが」
「万が一に備え、此方も迎撃体制を取ってほしいと言う訳だね」
「はい、我が方の情けない一面を見せてしまって忸怩たる思いです」
通信相手がそう言って表情を曇らせると高御は
「構わないさ、そうした事が言えるのは決して悪い事じゃない」
と激励していると思わしき声で通信相手に話しかけ、その声で通信相手も少し穏やかな表情を浮かべる。
「それは良いのですが、どうやら奴等の行動の方が早かった様です。
既に此方の世界に反応が出始めています」
明帝がそう告げると高御は目の前にあるモニターに地球の全体図を出現させ、その反応が出始めたという部分を特定する。
するとそこをみた七宝が
「やだ……ここって私達の国の東北地方、福島県じゃない!!」
と発言したのを皮切りに
「そこは確か……だとすると奴等の狙いはあそこでは?」
「その可能性は十分考えられるね、目的が此方の考えている通りだとしたら」
「此方でも反応を感知しました、直様制圧部隊を送り込みます」
「では、此方からは私が向かいますよ」
それぞれが言葉を出し合い、最終的に神楽がこう告げる。
「いえ、神楽さんが出向く程の事では……」
通信相手がこう言いかけるが神楽は
「場所が場所なだけに被害を拡大させる訳にはいかない、現地にも連絡は入れるけど、誰か向かった方がより精度が上がる」
と通信相手を説得しにかかる。
それを聞いた通信相手は
「ええ、その点は承知していますが……」
「なら早速準備に取り掛かるとするよ」
「……分かりました、有難うございます」
と告げる。
最終的に神楽が押し切った様な印象を受ける会話となったがその顔は決して言い包められたと言う様な表情ではない、
寧ろ感謝と共に申し訳無さを感じさせる、そんな表情であった。
その表情を確認した神楽は早速立ち上がる。
「やれやれ、相変わらず仕事が速い事で」
七宝が誂う様な喋りかけをするが神楽は
「それが私の性格なのは承知の上でしょう?」
と返答しそれに対して七宝は
「ええ、だから敢えて誂ってみたの」
と今の発言が誂いである事をあっさりと認める、どうやら神楽に誂いをすると言うのはこうしたやり取りになるというのが周知の事実の様だ。
「それにしても奴等が東北に向かったタイミングで此方も来るとは……果たしてこれは偶然なのかそうでないのか……」
高御がそう告げると神楽は
「その確認の為にも向かうのです、では」
と言うと天井に向けて手を翳す。
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