第五十七話 門が開かれる時

「開け、月輪の門よ」

天井に手を翳した神楽がそう叫ぶと神楽の真上に突然円形の黒い何かが出現し、そこに神楽が飛び込む。


「直ぐに行っちゃいましたね、本当に行動が早いです」

「そこが彼の良い所であり悪い所でもある、まあこれは誰でも持っている事だけどね」


それを側で見ていた明帝と高御はボソリとそう呟く。

最も、呟くと言っても会話としては成立していたが。

一方その頃、反応があった東北地方の某所において紫色の謎の渦の様な物が発生していた。

その数分後、そこから何者かが出現してくる。

その外見は明らかに人間とは異なり、獣人、或いは怪物と言える者であった。


「しかし、この辺りに標的があるというのは本当なのか?態々危険を犯してまで……」


そこから出現した存在が何か呟くと同時に後からぞろぞろと同じ様な怪物の様な存在が出現する。


「ああ、奴等から入手した情報が確かであればな。

だが本当であれば現状を打開する機会になるだろう」


後からそう告げる存在がそう告げるが、それと同時に


「そうはさせませんよ!!」


そう告げる声と共にその周囲を人間が取り囲む。

否、人間だけではない、周囲を取り囲んだ存在の中には出現した存在と同様の獣人の様な存在も混ざっていた。

その獣人の様な存在を視界に入れた怪物は


「ちっ、裏切り者共が……俺達の邪魔をするんじゃねえ!!」


と明らかに怒りを込めた罵声を浴びせる。

その罵声を受けた獣人は


「裏切り者って、それは違う!!貴方達のしようとしている事は……」


そう言いかけるがそれを見た周囲の人間の一人が


「やめておきなよ、感情による主張のぶつけ合いは不毛に終わるだけだから」


とそれを制止する。


「ほう、そっちの人間はその辺りを理解しているようだな、ならば俺達が望んでいる事も承知しているのだろう!!」


と言うと口から炎を出して周囲の人間や獣人を攻撃してくる。


「つっ、流水の壁よ!!」


周囲に居る人間の一人がそう叫ぶと人間と獣人の周囲に流れる川の様な水が一同を守り、炎を消す。


「只の人間が魔力を使うだと……ええい、だが純粋な魔力に勝てると思わない事だ!!」

「何故見下した視点しか持てないの!!彼等と僕達が交わる事が可能だという事が既に証明されていると言うのに」

「君達、さっきの僕達の言葉をもう忘れたの?まあ、少し僕も頭には来たけどさ」


周囲を取り囲んでいる人間と獣人は渦の中から出現し続けている怪物との交戦を開始する。


「彼等もこの世界も、そして私達の故郷もやらせはしない!!」


獣人はこう告げると怪物に接近して力を込めた蹴りを叩き込む。

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