第十二話 先が見えない時
突如として空にその姿を表し、世界各地に謎の紫の壁を出現させて一部を世界から断絶させた高御。
サミットの参加者達はその風雲急を告げる事態に対応しきれず、一体何が起こっているのかを把握するので精一杯であった。
サミット開催国の米国、デトロイト州にも件の壁が出現した事は伝わっており、出席者は会場で眠れぬ一夜を過ごした後翌日一番の飛行機でデトロイト州に向かう。
だがデトロイト州の空港も当然その壁に覆われており接近する事が出来ない。
壁に触れても弾き返されてしまうのだ、だがそれによって飛行機が墜落するという事も無い。
「触れても墜落はしないけどその代わり突破も出来ない……一体どうすればいいの?」
飛行機の中に乗りながら神楽の母は内心に焦燥感を懐きながら頭を抱える。
しかもそれは神楽の母だけでなく、父も含めサミットに出席していた全員、いや世界中に生きている全ての人に共通していると言っていい頭痛の種であった。
当然直ぐにその紫の壁は世界中の研究者達がこぞって研究しようとするものの、何を何処から手をつければ良いのかわからない状況のまま一年が経過しようとしていた。
「今日であの事件から一年が経過しようとしている……世界中の研究者達が一丸になっても未だ何を調べたら良いのかすら分からない状況のまま時間だけが過ぎてしまった……」
「ええ、それにこの世界の秩序も徐々に乱れ始めている。
いきなり出現した得体の知れない物が出現してしかもそれが一部の地域を断絶している。
場所によっては国までもとなると不安を抱くのも当然だけど、それだけじゃない気がするわ……」
あの事件の後、米国政府が事件の関係者に特別に用意した宿泊施設で寝泊まりしていた神楽の両親も又、この一年を苦悩の中で生きていた。
「軍隊を差し向けた事もあるけどそれすらもあの壁は退けた……あらゆる兵器を投じてもあの壁を破壊する事は出来なかった。
こうなってくるともう……」
「それだけは言うな!!俺達が言っていいことじゃない!!」
神楽の母が何かを言いかけると父は慌ててそれを静止する。
それ程の事を言いかけたのだろうか。
そこに慌てた様子で誰かが駆け出してくる足音が聞こえてくる。
その足音が止まり、神楽の両親の部屋の前で止まると扉をノックし始める。
「はい、どうぞ」
神楽の母がそう告げると扉が開き、その先に居たのはサミットの際に参加者を案内していた男性スタッフであった。
「一体どうしたのですか?」
神楽の父が問いかけると男性スタッフは
「お二人共、直ぐに来て頂けますか?」
と訪ねてくる。
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