平行世界が交わる時、それぞれの世界は何処へ向かう?

日常演舞

序章 始まりの時

「愈始めるのね……」

「ああ、世界を変える戦いをね」


周囲が無機質な機械で覆われているとある部屋においてこの様な会話が交わされていた。

声の一方はその体格からすると少年、もう一方は少女である。

二人共決して逞しいといえる体格ではなく、寧ろか細く何処か心許ない雰囲気すら漂っている。

彼等は何故、こんな所に居るのだろうか?


「この日を迎えるのは……長い様であっという間だった気がするわ」

「僕もだよ、だけど今は昔語りをする時じゃない。

寧ろこれからが始まりなんだから」


無機質な部屋で会話する少年と少女の顔は受け取り方次第で暗く沈んでいる様にも未来に希望を持っている様にも見える複雑な物であった。


「さて、まずは何から始めましょうか?」

「決まっているよ、救済からさ」


そう告げると少年少女はそれぞれ機械に向かい、電源らしきスイッチを入れて操作をし始める。

すると目の前にある画面に地球が映し出され、続けて画面上で地球をスキャンしているような赤い線が流れ始める。

すると地球上の所々に赤い点が出現していく。

それを見た少女が


「これは……想像以上ね」


と呟くと


「ああ、だからこそ僕達がこれをやる価値がある、この赤い点を大きく変える為の戦いをね」


と少年も声を続ける。

その声の音程は先程の表情と同じく、絶望と希望の両方を感じさせる物であった。

いや、この場合は寧ろ絶望から希望へと変わっていくと言った方が良いのかもしれない。


「なら、手始めに何処から仕掛けていく?」

「何処から……じゃないさ、この赤い点が広がっている場所全域に仕掛けていく。

まずは最初の段階である程度此方が握っておく必要があるからね」

「握る?一体何を?」

「そんなもの決まっているさ、僕達二人だけで成し遂げるのは幾ら何でも時間が掛かり過ぎる。

その点を考慮すればまずやるべき事は何か分かっているでしょう」

「あ~確かにその通りね、で、候補を見つけたら試すの?」

「ああ、あれはまだまだ未解析な部分が多い。

いや、恐らく僕達だけでは解析出来ないだろう、だから必要なのさ」


少年と少女は機械を操作しながら言葉を交わしていく。

その音程、表情どれ一つとっても希望と絶望が入り混じったものであり、その様子から二人が年齢不相応な並大抵の経験ではない何かを積んでいる事は容易に想像出来た。


「で、千里の道も一歩から。

まずは何処から向かう?」

「今のは諺だね、ならその諺が使われている国々から行こうか」


そう言うと少年少女は顔を見合わせて不敵な笑みを浮かべるのであった。

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