見る、見えーる、見えちゃった(。>д<)マジか……
たかさば
アカシック_レコード
いらっしゃいませ、いらっしゃいませ!
こちらあなたのすべてを知る、アカシックレコード取扱店でございます!
あなたの知りたいことは何ですか?
なんでもお答えいたしましょう!!
「私の前世を教えてください。」
前世ですか?今を生きているのに、終わった人生を知りたいと!
なるほど、なるほど、追求心ですね、わかります、わかります!
パラららららららららら!!!!
分厚いアカシックレコードが、勢いよくページを開いて、20200401ページで止まりました。
フムフム、あなたの前世は、おけらですね!
夕方過ぎから、土の中でじーじー鳴いてましたね。
最後は道路拡張工事のショベルカーに掘り起こされて、真っ二つになって土の中に混じりました。
人だった記録が聞きたいといいますか!
ほうほう、了解いたしました、少々お待ちくださいね。
そうですね、かなり前にごく普通の主婦でしたね。
毎日がつまらないと嘆いて、猫に生まれ変わりたいと願いましたね。
猫になった後人間に虐待されて、鳥になりたいと願い、そのあと狩猟で散弾銃の直撃を受けて墜落、狩猟犬に食い散らかされました。ええとそれから…おや、聞かないんですか、いいんですか?
お客さんが帰ってしまいました、なんという事でしょう。
まだずいぶん記録があるのに、せっかちな人ですねえ。
仲良く寄り添う二人組のお客さんが来ましたね。
「私たちの相性を教えてください、前世のつながりとかも。」
フムフム、相性ですか。
ああ、今はやりの、ソウルメイトとか、そういう確信が欲しいという事ですね。
わかりました、見てみましょう。
まずはあなたから。
パラららららららららら!!!!
分厚いアカシックレコードが、勢いよくページを開いて、10120407ページで止まりました。
フムフム、あなたの前世は名も無いタンポポですね!
こちらの方に、踏みつぶされて枯れました。
今後もあなたは踏みつぶされることになりますね。
…おや、何やら空気が凍ってますが、大丈夫ですか?
続けますね。
次はあなたを見てみましょう。
パラららららららららら!!!!
分厚いアカシックレコードが、勢いよくページを開いて、15238821ページで止まりました。
フムフム、なんだ、あなたたち昔夫婦だったんですね、あなたが奥さん、ずいぶんひどい目にあいましたね、復讐を誓って生まれてきましたね、どうです?復讐、進んでますかってあれ?
いつの間にやらお客さんがいなくなっちゃいました。
話は最後まで聞きましょうよ…。
おや、次のお客さんが来たようです。
「この世のすべての謎が知りたい。」
フムフム、謎ですか。
そもそも、なぞとは、どういう事ですか?
漠然と言われましても、答えようがないですね。
あなたね、うんこの中の雑菌すべてあげてくださいって言われても、書き出すだけでものすごく時間がかかるっていう事実、理解できます?
謎とされるものは、人によって千差万別。
あなたの知りたい謎を、単語表記で持ち込んでください。
すべてお答えいたしますよ?
ただし、あなたがその答えを理解できるかどうかは、あなたの知能程度によりますね。
あなたどれほどの知力をお持ちですか?
まさかと思いますが、ナビエ–ストークス方程式の解とか、理解できてますよね?
まさかと思いますが、クォーク、レプトン、ボース素粒子にゲージ粒子、ヒッグス粒子、重力子、そのあたりの知識程度で満足してたりしませんよねえ?
おや、どうしたんですか、お帰りですか?
ああ、単語を書いてくるのですね。お待ちしておりますよ。
おや、次のお客さんが来ましたね。
「生きる意味を教えてください。」
生まれたからですね。
「どうして僕は生まれてしまったのですか。」
生まれたいと願ったからですね。
「こんなに苦しいのに?」
苦しむ自分を生きたいと願ったからですね。
「そんなことは、願っていない!」
願ったときの記憶は置いて生まれてきますからね、忘れているのも当然でしょう。
あれ、どうしたんですか、まだ話の続きをしなくていいんですか。
抜け出せそうにない闇の感情の中で希望を見出し藻掻きたいと願ったあなたなんですけどー!!
人の話を聞かない、せっかちな人ですね。
おや、次のお客さんが来たようです。
次のお客さんはのんびりした人だといいんですけど。
「未来が知りたい。」
ほうほう、未来ですか、なるほどなるほど。
未来は常に書き換えられていますが、それでもあなたは知りたいですか?
「知りたいと願う。」
そうですね、特に問題はないですね。
「もっと詳しく。」
もっと細かい希望を教えてくださいな。
「いつ人類が滅亡するのか。」
しませんね。
「いつ大地震が起こるのか。」
来ませんね。
「嘘をつけ!!!」
ですから、未来は変わるものなのですよ。
今この瞬間には、そのような記録は載っていないのです。
「そこにすべてが載っているというのか?」
ええ、そうです。
「それを、よこせ。」
いいですよ。
今お渡ししますねって、ちょっと!
アカシックレコードに、手が伸びました。
奪い取られちゃいましたよ、アカシックレコード。
あーあ、せっかちな人ですね!
いや、横暴な人ですかね!
…ああ、そんなに、欲張るから。
アカシックレコードの重さに、つぶれてしまったじゃありませんか。
世界のすべての記憶が、たった一人の人間に、収まりきるとでも思ってたんでしょうかね。
ああ!!
お客さんのすべてが、アカシックレコードの重圧に飲み込まれて、存在が消えてしまったじゃありませんか!!!
こうなったらもう、元に戻すことは難しいです、残念なお話です、はい。
なかなかこの仕事も、きついものが、ありますねえ。
けれども、こういう仕事をすると決めて、ここに、いるのですから。
逃げ出すわけには、行かないんですよね。
…本当はね、誰かにこれ、アカシックレコード、もらってほしいなって、ちょっとは、思ってるんですよね。
この、すべての記録。
この、恐ろしい記憶。
この、世界の真実。
私も、この仕事をやるのに、少々、躊躇はしたんですけどね。
やろうと決めたんですよね。
前世で。
…あなた、やりたいなって、思ったでしょう?
ええ、分かりますよ、私には。
私、実はね、あなたの、来世なんです。
あなたはもう、人に生まれ変わることはありません。
ここで、誰かのために、アカシックレコードの記録をのぞいて、手を差し伸べる役目をもってここに留まる運命を持っているからです。
あなたの最後の、人生ですから。
やりたいことをやって。
感情を楽しみつくして。
その人生を、味わいつくしてくださいね?
まあ、私はね、あなたがどういう人生を過ごしたのか、すべて知っているわけなんですけどね。
あなたであった、私から、いえることは。
未来は変わるという事です。
変える未来も、変わらぬ未来も、あなた次第。
あなた、次第、なんですよ。
パラららららららららら!!!!
バッタン!
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