お祭り

恋愛はタイミングだとよく聞くが、本当にその通りだ。数々のタイミングを逃した。立て続けに訪れたタイミングという電車に、どれもこれも乗り遅れた。



2人で小さなお祭り会場を目指した、高校1年生の夏。


知り合いに会うのがなんとなく嫌で、なんとなく離れて歩いている。


「亜子だ!誰と来たのー?」

「んー?」

「高矢と来たの?」

「さあ」


私達を含めて誰も追求しようとしない。その雰囲気はなんとも言えなかった。ただ夏の湿気が感じられた。


美奈のダンスも離れて見た。


「もう帰ろっか」


ちゃんと笑顔で言えただろうか。


「そうだね」


いつものように微笑んだ高矢くん。

「来年はさあ、夜市行こうよ」

隣の市で毎年ある花火大会を夜市と呼んでいたことに気付くのに時間がかかった。

「あ、夜市か、うん、行ってみたかった」

「行こうね」

「うん」


今度はちゃんと笑顔で会話出来たと思う。


「せっかくだし遠回りして帰りませんか?」

精一杯の一言を絞り出した。


「道はお任せしてもいい?」

楽しそうに笑う高矢くんと港を目指して自転車を漕いだ。山側に住んでいる私たちには遠回りの道だ。


「美奈のダンスカッコよかった」

「あんなに体が動くの凄いよね」

「高矢くんもサッカーできるじゃん」

「また別の話だよ」

「ダンスってずっと見」


「「あーーーー!!!」」

「今流れ星!」

「見た!俺人生で初めて見た!」

「私人生で1番大きいの見た!」

「やばい!初めての流れ星一緒に見れて良かった」

「流れ星っていいよね、すき!」


私たちの気持ちは同じなのだろうか。

そんなことを考えながらひたすら話した。


私の家の前の交差点で信号にひっかかった。

「あのさ、、、」

「どうしたの?、、、」


次の言葉を口にしない高矢くんの笑顔はどこか悲しそうだった。

慌てて目を逸らした。

「あ、信号青になったよ!行こう!」

「ほんとだ」

「今日はありがとう、楽しかった!」

「俺も、流れ星見れたし」

「じゃあまたねー」

「うん、また」



私はあの日の流れ星をきっとずっと忘れない。高矢くんが何を言おうとしたのかは分からないけれど、きっと、私は間違えた。

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