初めての夜
で、それから1時間後。
どういうわけか俺はリリスと一緒に風呂に入ることになっていた。
最初に言い訳をしておくと、別にこれは俺の意思でやっていることではない。
リリスに強引に誘われたのだ。
半ば拉致されたと言っても過言ではない。
「……申し訳ありません。先程のやり取りでアベル様に対する愛が爆発してしまいまして」
「…………」
そうか。よく分かったよ。
お前は愛が爆発すると他人を強引に風呂場に拉致する奇病にかかっているのだな。
残念ながら拙い俺の回復魔法では、リリスの病気は直してやれそうにもない。
「やれやれ……。裸の男女が湯船の中で2人きり。お前、この状況の意味が自分で分かっているのか?」
「ふふふ。アベル様は面白いことを言うのですね」
特に恥じらう様子なくリリスはクスクスと笑う。
「お言葉ですが、アベル様。精通しているかも怪しいお子様ボディーの男性言われても、全く説得力がありませんよ」
「クッ……」
痛いところを突かれてしまった。
たしかに今の俺は異性としての魅力が皆無のお子様ボディーの状態である。
子供になった俺とは対照的に、200年の歳月を経たリリスは体の様々な部分が成長を遂げている。
知らなかった。
女性の胸部というのは、ある程度の大きさに到達すると湯船の中で浮くことになるのだな。
なんて日だ。
前世では俺が30代後半だった時、こいつは5歳にも満たないチンチクリンのガキだったのだが、今となっては立場が逆転してしまったというわけか。
「……ワタシは幸せです。他でもないアベル様に女として意識してもらえるようになりましたから」
むぎゅっと湯船の中で俺の体を抱きしめながらもリリスは言った。
やれやれ。
この女は男の性欲というのを少し舐めすぎである。
実際、この年代の子供は下手な大人よりも性欲旺盛だったりするものなのだ。
しかし、参ったな。
どんな分野であっても俺は、やられっぱなしでいるのは我慢のできない主義なのである
仕方がない。
風呂から上がったら、男としてのプライドに賭けて少しだけ反撃に移らせてもらうとしよう。
~~~~~~~~~~~~
耳を澄ませば夜虫たちの鳴く声が聞こえてくる。
その夜、俺はリリスを抱いた。
実を言うと前世の俺は『強くなる』こと以外にはあまり興味がなく、女を抱いた経験がなかった。
もしかしたら幸せというのは、こういう感情のことを指すのだろうか?
リリスを抱いた日の夜の俺は、何時もよりも遥かに穏やかな気持ちで寝られたような気がした。
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