実技試験
3時間に渡る筆記試験が終わり、次は実技試験が始まるようだ。
「うぐっ。流石は天下のアースリア魔術学園ッスね。筆記試験のレベルも半端なく高かったッス」
「んん? そうだったか?」
テッドは死にそうな顔で俺の隣に座っている。
どうやら筆記試験の出来が芳しくなかったらしい。
まぁ、特に頭の出来が残念なテッドの言うことだから真に受ける必要はないな。
おそらくこの会場に集まっている受験生たちは、当然のように全教科で満点を取っているに違いない。
「では受験番号1から40番までの方は私に付いてきてください」
俺の受験番号は27番。テッドは28番か。
次の試験は実戦的な魔術の技能を測るものらしいのだが、果たしてどんな課題を与えられるのだろうか。
「師匠! 行きますよー!」
テッドに急かされて、受験会場に移動する。
次に俺たちが訪れたのは、学校の裏手に設けられた巨大な校庭だった。
ふむ。
おそらくこのエリアは、主に魔術の試し打ちをするために作られたものなのだろう。
よくよく目を凝らすと平原の中には、魔術を命中させるための『的』のようなものが幾つか散見されていた。
「では、受験者の皆様。今回の試験は、こちらに用意されている魔道具レガリアを使用して行います。各自、眼の色に合った魔道具を手に取って下さい」
テントの下に用意されていたのは、それぞれ剣、銃、手甲などの様々の武器の形を模した魔道具だった。
試験官の指示に従って各自、用意された魔道具を番号順に取っていく。
眼の色に合った、とはいうが、当然のように琥珀眼の魔術師に適した魔道具は用意されているはずもない。
仕方がなく赤色の魔道具を手に取る。
形は、とりあえず一番無難そうな片手剣のタイプ。
訓練次第で全属性の魔術を極めることができる琥珀眼の魔術師であるが、個人によって向き不向きというものが存在している。
俺の場合、灰眼が司る回復系の魔術はやや苦手としているが、反対に火水風の属性魔術はどれも得意である。
まぁ、苦手とは言っても、前の世界でも過去に前例のなかった《転生魔術》を完成させてしまう程度には、灰眼系統の魔術も使えるのだけどな。
「おい。見ろよ。あそこにいる劣等眼」
「ハハハッ。自分に合った魔道具がないからって適当に選んでらあ!」
他の受験生たちからの好奇の視線が突き刺さる。
やれやれ。
別に適当に選んでいるわけではないのだけどな。
琥珀眼の魔術師が色眼鏡で見られるのは、この会場でも変わらないようである。
「それでは試験の説明をしますね。今回の試験では純粋に受験生の方々の『魔術の威力』を検査するものになっています」
魔術の威力の検査か。
まぁ、受験生の実力を測るという上では、無難な試験内容と言えるな。
今回の試験では予め魔道具が与えられている為、魔術構文で他人と差が付けることができない。
つまりは生まれ持った魔力量、効率的に体外に魔術を放出する技能が求められることになりそうだ。
「試験のために作った『的』は、絶対に壊れないような頑丈な設定になっていますので、みなさん、遠慮せずに最大威力の魔術を打ち込んできて下さいね」
絶対に壊れないということは、何か『的』にも細工をしてあるということか。
面白い。今回の試験は一般的な現代の魔術師たちの実力を測る上で、絶好の試金石となりそうである。
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