メアリー・スーの殺し方
一水素
プロローグ
メアリー・スーの怪物
そいつはある日突然やってきた。
神から与えられた力を持ってこの世界を救った英雄、魔王を討ち取った神の子、そんな一行の目の前に突如として現れ...一瞬にしてそれを壊滅させた。
その強さの前には誰もが等しく無力であり、今に至るまでの実績や栄光は全て瞬く間に踏みにじられることになった。
なのにそいつは、まるで自分が何をしたか分かっていないような、あっけらかんとした表情をしていた。
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この世界には『転移者』という存在がいる。
聞くところによると、その者たちはこことは違う世界からやってきた人間なのだとか。その大体が特殊な力を持っており、遥か先の知識・技術を有している。
特に「にほん?」という国からの転移者が多いらしい。かく言う勇者様一行もにほんから来た転移者だった。勇者様は魔王に怯えるだけだったこの世界に安息をもたらし、人々が平和に暮らせるように努めた。
そして殺された。
他の転移者たちが言うには、そいつは『メアリー・スー』という存在らしい。
人のモノガタリに完璧な、欠点のない理想的な人物として登場し、そこで好き勝手するはた迷惑な奴なのだそうだ。理想の中に「誰よりも強くあれ」なんて要素があったら誰も敵わないし、「誰からも愛される」なんてものがあれば世界中が奴を愛すだろう。
そんなことがあっていいのか、腹立たしい思いだ。
僕が住む国を、僕が住む世界を守ってくれた勇者を、尊厳の欠片もなく殺したあいつが憎い。全てを持つ全能の神になったかのような、その存在自体が憎い。勇者を殺した時に見せた、あの無自覚な表情が憎い。その行動に反して世界は奴中心に回っていく、その事実が憎い。
憎い憎い憎い。
周りが奴のことを好いて崇めたとしても、僕だけは憎しみが増すばかりだ。まるで僕が神に選ばれた存在のように、奴に対して憎悪が湧いて出てくる。
...アレ?
なんでそう思うようになったんだろ。
あぁ、神様。
僕があなたに選ばれたのなら、僕はきっと役目を全うします。
だから神様、
『メアリー・スーの殺し方』を、どうか僕に教えてください。
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