白銀の巫子

灰崎千尋

原初の神話

 はじめ、太陽の女神ウィシラが生まれた。

 太陽の女神ウィシラは黄金に輝く髪をなびかせ、生まれ落ちた喜びを舞い踊った。そのつま先の落ちるところに炎が生まれた。


 太陽の女神ウィシラの生まれたとき、その背に影が生まれた。これが月の男神シィロアであった。白銀に輝く髪を持つ月の男神シィロアは、太陽の女神ウィシラの後ろ姿しか見えないことを嘆き悲しんだ。その涙が水となった。


 こうして太陽の女神ウィシラの通り道が昼、月の男神シィロアの通り道が夜となった。


 昼と夜の交わる夕暮れ、太陽の女神ウィシラ月の男神シィロアは遂に出逢った。互いの美しさに惹かれ合い、夫婦の契りを交わした。そうして生まれたのが風と土であった。


 彼らはそれぞれ炎、水、風、土を祝福した。

 太陽の女神ウィシラの祝福は命となり、世界に力を与えた。

 月の男神シィロアの祝福は死となり、世界に安らぎを与えた。


 太陽の女神ウィシラ月の男神シィロアは愛し合っていたが、昼と夜の交わるときは短い。

 彼らは伴侶のいない間を慰める相手を得ることにした。太陽の女神ウィシラは女を、月の男神シィロアは男を選ぶことで、夫婦の誓いを破らぬようにした。

 これがかんなぎとなった。


 太陽の女神ウィシラの巫女には黄金の髪を、月の男神シィロアの巫子には白銀の髪を与えることで、その印とした。


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