襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。
克全
第1話:卑劣
本当ならば、今日は私にとってハレの日になるはずでした。
伯爵令嬢である私が、ソモンド侯爵家の跡取り、チャーリー卿との婚約を発表する日だったのです。
そのために、王宮でも最も格式のある舞踏会場を借りたのです。
王太子を含めた王族や有力貴族を招いていたのです。
ところが、私は、今こうして絶体絶命の状況に追い込まれているのです。
「うっへ、へ、へ、へ、もう逃げられないぞ、ケイ。
お前の処女は俺がもらう事になっているんだ。
チャーリーもそれを認めて、こうしてこの場に立ち会っている。
もう諦めて大人しくなれ!」
許し難い事に、婚約者のチャーリーが、私を王太子に売ったのです。
どれほどの金額で売ったのかは分かりませんが、女を金で売り買いするなど、断じて許せない事です。
この世界この時代は、女性の権利が限られていますが、。これは酷過ぎます。
転生前には、女性の権利を守るために戦った事もある私です。
バリバリの海兵隊員として、男に負けない戦いを繰り返してきた自負があります。
「ふっふっふっふっ、婚約はしてやるよ、ちゃんとね。
だが、お前は隠れて不義を重ねていたんだ。
庭師の若造と情を通じていたんだ。
それを俺と王太子殿下に見とがめられ、己の行いを恥じて自害するんだよ。
それを理由に伯爵家からたっぷりと賠償金をぶんだくってやるよ。
うっわっははははは!」
チャーリーの高笑いに、私の我慢は限界を超えました。
伯爵令嬢に転生した事で、柄にもない礼儀作法を頑張って学びました。
レジオン王国一の淑女、ダンスの名手と言われるほどの鍛錬をしました。
でも、前世で血の涙を流して習得した武道を、捨てる事はできませんでした。
海兵隊マーシャルアーツプログラムを忘れる事などできません。
同時に、この世界この時代で生きていく以上、相応しい武芸も学ばなければ、いざという時に生き延びる事ができないと思いました。
だから、手を抜くことなく、弓術や槍術、馬術や刀剣術も学びました。
ライエン伯爵家に仕える騎士や戦士から、得られる限りの技を学びました。
それだけでは飽き足らず、世に名の聞こえた傭兵にも技を学びました。
でも、その全ては、伯爵令嬢として生きるのには邪魔なので、秘密にしていましたが、今ここで披露してあげましょう。
「さあ、もう諦めて俺の言う事を聞け、死ぬ前にたっぷりと愉しませてやるよ」
気持ちの悪い笑顔を浮かべながら、王太子が迫ってきた。
もう私の我慢の限界を振りきってしまった。
伯爵令嬢の仮面をかぶって、こんな卑劣漢の嬲り者になる気などない。
前世の女戦士、海兵隊員の誇りにかけて、強姦魔を叩きのめしてやる!
私は貫手で王太子の顔を貫いた。
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