第4話 今日もやっぱり長閑です



「ばあさん、ばあさん」



 今日も、とても長閑で良い一日ですね。


 私は縁側に座って青空を眺めながら茶をすすっていました。



「ばあさん、ばあさん、聞こえておらんのか?」



 はいはい、聞こえていますよ。




 よっこらしょと立ち上がり爺さんの元に向かいます。



 爺さんはキョロキョロと周りを見ながら片手にはスマホを持っています。



「はいはい、どうしましたか?」




 お爺さんはいつまで経っても私がいないと駄目ね。



 思わず顔をニヤけさせながらお爺さんに尋ねました。


「ばあさん、ワシの眼鏡は何処かのう?」




「眼鏡ですか? はて爺さん、眼鏡、かけているじゃないですか」




 そう言う私に、もどかしそうに少し拗ねた様な子供の様な表情で爺さんは言い返してきました。


「この眼鏡じゃない、ルーペ、ルーペじゃよ、美桜ちゃんからメールが届いたんじゃ。はよう、はよう。メールを打つのに1時間くらいかかるんじゃから」



 はいはい。


 孫の美桜ちゃんからのメールが来たのね。



 もう、ミカン籠の中にあるじゃない。



 本当に目の前のものが目に入らないのね。


「はい、どうぞ」



 私から拡大鏡を受け取ったお爺さんは再びスマホと睨めっこしながら大人しくなりました。



 もの凄い集中力です。



 さてさて、私はちょっと温くなったお茶でも飲みながら、もうちょっと縁側で風にあたろうかしらね。




 家は今日もやっぱり長閑です。

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