レミノール叙事詩

第1話

朝のどうでもいい喧騒が聞こえて目がさめた


ああ また悪い夢を見た  


何十回 何百回と見たあの夢


たいしていいことがなかった日や嫌だった日はいつも決まってみるあの夢 


どれだけ経っても忘れられないあの夢


事実なのか嘘なのかはわからない


でも、 あの夢だけは忘れてはならないと思っているものだ



振り返ってみたらあのことから すべてが始まったのだな




「ねえ、起きて レシア 今日はダンジョンに行く予定の日だよ」


銀髪の寝顔が、いや寝顔でなくともきれいな僕の幼馴染かつ婚約者は朝に弱い。



「え、もうこんな時間? ごめんシェアン少し待って、すぐ準備する」



正直なことを言うのならいつもよりは早いのだが今日は早めにダンジョンに行って練


習しとかないといけないことがあったのだ。


今は朝の9時 今日は昼から夕方にかけてダンジョンに潜る予定なので流石にそろそ


ろ朝ごはんを食べなければいけない時間である。


なら自分で作れよと思うかもしれないが いまそこの布団にくるまっている幼馴染


悔しいことに僕より断然料理がうまいのである。


することもないので僕は装備品の確認をしていた。


僕は弓使いである。 使っている弓は我が一家に伝わる由緒ある業物の弓である。


その弦をキリキリキリと引っ張る。


大丈夫そうではあるが一応予備の弦を入れておくか。



「シェアン、朝ごはんできたよ。食べよ」



「わかった 弓しまったら行くよ」



朝食を食べて一息ついたらいつも通り冒険者ギルドに行った。




「おはようございます」


ギルドの職員が話しかけてくる。


仕事仲間の間ではどの娘が可愛い、などの宗教戦争と呼ばれるものがあるらしい。


残念ながら僕には可愛い婚約者のおかげ?ですべての人が色あせて見えてしまうのだ

が。



「今日はどのクエストをお受けになりますか」



「では15から20層の魔物50体討伐で」



僕は今日は新しい技を試すため割と浅い層のクエストを受けることにした。


ちなみにこの国には様々なダンジョンがあるがここのダンジョンは未だに最深部に到


達した人がいない唯一の未踏破ダンジョンなのである。


このダンジョンは1から100まであると言われている。


行く予定の層は比較的浅めな層であると言える。


ギルドの職員に声をかけられる。



「今日は浅めな方なのですね」


いつもは30から50層に行っているのだから確かに浅めではある。


「今日は日帰りの予定なので」


当たり障りのない返答をしておく。


こんな周りの目しかないようなところで新しい魔法の練習をする予定です、なんて言


えるはずがない。自分以外の冒険者はいつまでも味方ではないのだから。



「では 気をつけて」


その言葉を背に僕たちはダンジョンに潜った。




「ねぇ 今日はほんとにメインで使っている武器使用しないの?」


レシアが聞いてくる



「そう、今日は僕らのサブで使っているものの練度をあげようと思ってさ」


普段レシアは片手の、剣身の細い長剣を使っている。



「わかった。危なくならない限り私は火の魔法と投げナイフで戦うよ」



「そうだね。僕は風魔法だけだね」



「なにか、シェアンもサブに武器持ったほうがいいんじゃない」



「今のところはいいかな」



いつもより敵がかなり弱いので会話をはさみながらでも割と楽に戦闘ができる。


コボルトやゴブリンを焼いたり飛ばしたり刻んだりしながら15層に到達する。


ダンジョンには5層ごとにフロアボスと呼ばれるボスがいる。


「15層のボスってなんだっけ?」


「コボルト・リーダーだよ。 そろそろ覚えてよ、レシア」


「はーい」


「じゃあ、行くよ」


入って敵を確認し次第僕らは次々に魔法を放つ。無詠唱でも良いのだが詠唱をしたほうが威力が上がるので詠唱をする。


「<ウインドスラッシュ>」


「<フレイムアロー>」


まずは基本となる技から順に使って攻めていく。


「<エアー・インパクト>」


「<ファイアウォール>」


練習のため単体技や範囲指定の技も使っていく。


遠距離攻撃手段に乏しいコボルト・ロードは徐々に劣勢になっていく。



「<テンペスト>」



この魔法を試したかった。最近習得した風属性上位魔法。



「くっ」



扱いが難しくボスがいないところまで攻撃がいってしまう。まだ完璧には制御できて

いないようだ。


このままでは厳しいと感じたのかコボルト・ロードは持っている大剣を投擲してく

る。


「<バースト・ウインド>」



その剣を風で吹き飛ばす。


その隙にレシアがすごい速さの投擲を仕返してコボルト・リーダーの首に短剣を刺し

た。


青い血が吹き出し、塵となって消えた。



「あーあ 特に何も落とさなかったわ」



その後特に何もなく19層まで到達したときちょうど討伐数が50体になった。



「このタイミングで50体になっちゃったね」 



「どうする、レシア。帰る?」



「すこし地上でしたいことがあるの だから今日は帰りたいわ」



「わかった。20層のボスは少し面倒なタイプだしね。じゃあ帰ろうか」



一度通った道なのでさっさと進んでいく。


2時間ほどで地上に帰ってこれた。



「ところでさあレシア 今日やりたいことってなんなの?」 



「ひ み つ」

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