最高最強にキュートでクールでプリティでミラクルなレレィシフォナ様による異世界改造計画

みそしる

こうして彼女は立ち進む

第1話 彼は天才である

 大きな屋敷を前にして、反比例するかのように小さな溜息をこぼす。


 少々赤みがかった黄金色で流麗を描く、男性にしては長すぎると言えるそれをひと括りに後ろで束ね、端正な目端を際立たせる髪の毛。

 切れ長の目尻に女性と見まごうほどの柳眉を乗せ、髪の毛同様に赤みがかった、しかしながらこちらは深い緑に近い瞳。

 鼻筋は綺麗な宝石の結晶を描き、浅すぎず、深すぎずな面立ちを際立たせている。

 その唇はともすれば吐く言葉全てに魅了の魔が込められているのではと噂になるほど柔らかく、また想像通り、もといそれ以上に耳朶に響く低音ながらもどこか子供らしい甘やかな声音。

 体つきもその年代からすれば極めて引き締まり、鍛えられたそれであるものの、少年特有のどこか温かい雰囲気を残した非常に魅力的な体格。

 端的に言えば、眉目秀麗、容姿端麗。

 そのものの代名詞とも言える少年は、しかしながら今はその万人に好意もしくはそれに近しい感情を抱かせてしまう顔つきを、ひどく呆れたような、悩ましいような────ようは物凄く脱力しながら歪めさせ、もう一度目の前にある建物を眺め、溜息をついた。





 ヘイリシュ・トゥラオド・リリン・アグラットは天才である。


 これはかの英雄譚に語られた伝説の再来だとか、盲目的な観点から見たごく近しい立場の者の戯言だとか、はたまたどこぞの王国に伝わるちょっと特殊な形をした痣にしか見えないような紋章を抱いてるだとか、そういった不明瞭なものではなく。

 単純に、彼自身の力と、技能と、その才を持って証明された、純然たる事実としての評価である(むろん当然のごとく、ヘイリシュの両親はことある事に方方でその親バカぶりを発揮はしたが、その評価に泥を塗ることは無かった)。


 手に剣を振るえば勇猛の如く合わせた者たちは倒れ伏し

 口に魔を唱えれば妖艶の如く並ぶ魔の者を焼き、溶かし

 物に目を向ければ辣腕の如く事を判じ、そして導いた。

 また自身驕らず、鍛錬に身をやつし、勤勉に学び、その振る舞いを持って正しく騎士の姿を体現した。

 ヘイリシュが15の歳になる今日日、彼を侮る者も、恐れぬ者も、憧れぬ者もいないほど、ヘイリシュは完成されていた。


 そんな彼であるが、15を迎え、次の竜齢、つまり来年には騎士の学びを終えてしまう今をもってなお、自身の将来を決めかねていた。


 生来、騎士の学びを終えた者は属する場が限られる。

 優秀な者は優先して各貴族の私用となる、自由騎士(自身の位に関わりなく、その貴族の庇護下に置かれる)。

 勿論これは所謂「取り合い」と言える、貴族間における非常に熾烈かつ不毛なやり取りと、少しばかりの本人の運と縁によるが、上位に位置する者達は、大抵有力な(ここでは第2位までを指す)貴族に雇用される。

 とは言え大元の管轄は国の軍事に組み込まれるため、有事の際は省令に背いてはならない決まりなどはあるものの、平時においておいそれと呼ばれることも無く、お偉い様のお膝元で、(本人達からしてみれば)楽しい鍛錬と警護をすれば安泰という意味で、例に漏れず人気の就職先であった。

 また別の道として、国そのものが保有する集まりという未来もあるが、どこそこと戦争を起こす、という時代でもなく、かつ団体における目と言うものはどうしても細微に渡らない点や、人間関係(主に金銭や思惑のやり取りの生じる)のせいで、鍛錬も(万人からしてみても)そこそこ温く、警護も甘く、だと言うのに表立った規律だけは厳しいため、真面目な者ほど損をするような────はっきりと言葉にするなら、「腐っている」騎士団であると言えた。

 大概は貴族の取り合いに溢れたり、後を継ぐ程の継承権を持ちえなかった貴族の子女であったり、後ろ盾の無いまま疎まれた挙句熱意を恣意的に潰された者たちの行先となる。


 果ては、まぁそれでもいいけど、とヘイリシュはボヤきながら

 騎士の資格を得た後、国を出て仕える先を探す者もいないことはない。

 自身でも最近の、優雅な貴族のお誘い(控えめに言わなければ、物理的だったり暗躍的だったりするヘイリシュの奪い合い)に辟易していて、益体もなくそのようなことを考えてしまう。


 そして改めて目の前の大きな、国に比較しても「大きな」と表現できるほど、広く絢爛な屋敷、いやむしろここまでいくと城と言った方がいいのではないか────に目を向け、3度目の溜息を吐くのであった。


 通算17度目の、「貴族のお誘い」の折である。


 ──────────


 ここで立ち止まっていても仕方がない、とばかりにヘイリシュは顔を上げ

 、(内心都合4度目の溜息を抱きつつ)屋敷に向けて足を踏み出す。


 既に目に見える範囲で屋敷が擁するであろう人、上から貴族その人と、恐らくその妻と娘、それらを仰ぐかのように後ろに控える使用人らしき人々が数十名ほど

 門の前にひしめき合ってこちらを待っている以上、心のままに体を反転させて前向きに足を進める訳にも行かず、内心を微塵も感じさせない爽やかな笑顔を振りまきながら、門の前で足を止める。


「ご招待頂き、誠に恐悦至極にございます。ただのヘイリシュ、聞こえによります竜眼の氏族、かの大戦でその名を馳せたシシハリットの御当主のお膝元に馳せ参じ、竜にこの身を捧げるかのような幸福を感じております」


 得物を持つ手の甲を腰に回し、いつ切られても構わないと宣言するかのように頭を下げ、言わば「貴族の好む」言い回しの挨拶を紡ぐ。


 その完璧とも言える所作を目にし、御当主と呼ばれた、ブララマン・コドゥマフ・シシン・シシハリットは満足気な笑みを浮かべ


「よく来てくれた。竜眼の氏族を代表して君を歓迎しよう。第二位の爵位を捨て、その身を国に捧げんとするヘイリシュ殿。君の武勇はとみに耳にするが、その振る舞いに驕りがない所、君は正しく騎士と言えよう。我が家をもって歓待を受け、その意志を更に固めて欲しいと思う」


 貴族出とは言え、身分として第六位に当たる騎士に対して、慇懃とも言える物言いで、彼はヘイリシュを迎え入れるのであった。


 ────────────


(ここまではいつも通りの貴族様なんだよなぁ)

 そう思いながらも、ヘイリシュは「いつも通り」とは言えない暗雲たる胸中であった。

 何故と問えば、「竜眼の氏族」とはこの国において、下手をすれば王という中心よりも遥かに(誇張でなく)立場があるからだ。

「かの大戦」と呼ばれる、200年も前に起きた人魔共存に至ったきっかけ

「強欲な王」を旗頭とする、魔でもなく、人でもない何か達を相手に

 竜と呼ばれる魔の象徴と共に剣を振るい、その武功を示したのが、竜眼の氏族を含む、「連なる氏族」と呼ばれる9人の人族であった。

 彼らはその功績により、また竜から直々に友好を結び、竜の名を冠する人として君臨することを許された。

 それは現在における武功にとどまらず、人々における象徴として、旗として、そして希望として

 彼らを擁する王、ひいては国よりも遥かに力を持ち、それを振るっている。


 しかしながらそこは人の営みとしての範疇を超えず、また各国が擁する「連なる氏族」は2つまでと(過去様々な衝突や交流を経て)決められている。

 そのため、分かりやすく言うのであれば


(やたら偉そうだし実際に偉いから質が悪い上に今の当主自体は世襲制だから単純にめちゃくちゃ厄介な貴族なんだよなぁ)


 ということらしい。


 そんなお偉い様が何故わざわざ外で出迎えるかと言うと、これは騎士という立場が物を言う。


 力ある者は、力ある者を擁す。


 これは「世界の総意(事実そうであるかに関わらず)」とされ、権力であれ、金力であれ、果ては暴力であれ、力を持つ者は、自身の責任の元それ相応の立場を保証される。

 すなわちヘイリシュに限らず、騎士として認められた者は「防衛力」の体現者であり、その者の階位に留まらず「力ある者」として認められるのである。

 では何故騎士の身分が第6位かと言うと、単純に個人が持つ力として、分かりやすく暴力に加え権力まで持ってしまうと、どうしても御しきれない可能性が出てくるからである。

 そのため騎士自身の身分は平民と同等でありながら、人々から尊敬されるという、なんとも半端な立場になってしまう。故に騎士の大半は貴族家に属し、その階位に名を連ねると共に、防衛力として対価を支払うのである。

 なおヘイリシュは未だ騎士の学びを終えてないとは言え、既にその名声と武功は自他ともに認める物として、後押しされるかのように騎士として扱われているが、これは「力ある強き者」にはよくある話である。


 つまり力ある者には相応の敬意が払われるため、如何に権力として偉かろうと、建前上は同等の立場かそれに近しい物になるため、当主が直接出迎えなければ逆に見限られても仕方ないと言われるほどの恥になる。


 とまれ、そういった経緯をもってヘイリシュは(娘の興奮が高まりすぎて若干気持ち悪い様相を呈している様を見せられつつも)、シシハリットと呼ばれる家へと足を踏み入れた。


 ────────────


「ヘイリシュ様におかれましては、お好きなお茶はございますか?」


 まずは腰を落ち着けよう、と、屋敷に入ってすぐに、広く、ゆったりとした貴賓室らしき場に通され

 席についたヘイリシュへかけられた言葉はしかし、まるで使用人の問いに聞こえた。


「騎士として、頂くものの好悪は努めて無くすよう志してはおりますが、強いて挙げるとすればゼゼペの葉を煮詰め、燻した物の茶でしょうか」


 その答えに問うた本人、まさかの使用人ではなく、お茶の準備を(それはもう大好物を前にした犬の如く)興奮醒めやらぬ態度で率先していた、ブララマンの娘であろう人物は目を丸くしながら、貴族にとって当たり前の言葉を口にした。


「まあ、あのような庶民向けのお茶ですか……? 香りも薄く、味わいもそれほどではなかったと思いますが……」


 ヘイリシュの対面に座るブララマンは、その言葉にほんのわずか愁眉を開きながら、


「騎士の行軍や訓練で良く使われると聞く。やはり無駄に気位の高い、鼻に着くものよりも日々の生活に根付いた物の方が良いのかな?」


 と、さりげなく娘に対し迂遠なフォローを入れながら問うた。

 その言葉にヘイリシュは微笑みを少し深め、悪戯が上手くいったような可愛らしい声色で


「市井に並ぶ物ですと僕にも厳しいものがありますが、なのでどうしても何とかしようと色々と試した結果、ゼゼペの葉はぬるま湯に近い温度で浸し、1日おきに湯を捨て、繰り返し3日置きますと香りは抜けず、渋味だけが取れます。これにオーギルの木くずを燻し、乾燥させますと、他に類を見ないほどの味わい深さと香りを持った葉になるんです」

 まるで内緒話を打ち明けるように心元ひっそりと告げた。


 誰あろう、騎士の学びの時分に飲むゼゼペの茶に、育ちの良いヘイリシュは我慢がならず、苦労に苦労を重ねて改良に勤しんだ。

 実に竜の鱗が生え変わる時間(約半年)にも渡る研究と挫折と散財のおかげで、ヘイリシュと共に学ぶ騎士達は

「これを口にしてしまったら、他のどれも泥水のようなものだ」

 と評する程の出来栄えになったのは、彼にとって武功に並ぶ(もしかするとそれ以上の)ささやかな誇りとなっている。

(余談ではあるがヘイリシュは都合16度に渡る貴族のお誘いの際にも、ゼゼペの葉を広めんと画策をしたため、別段秘密の話でもなかったのだが)


 ゼゼペの葉とは、繁殖力の強い雑草に近い物で、どこにあっても土と水と少しの日があれば一面に広がるほどであり、また悪魔の草と言われるほどに渋味が強いため、芳醇な香りをさせるものの食用にも向かず、その繁殖力を無駄にしないために苦心して作られたのが、毒にも薬にもならない、しかし多少の精神を落ち着かせる作用を持つ庶民向けの茶葉としてのそれであった。


 とまれ、そのような認識の物を好んで飲むのかと、すわ所詮は野蛮な暴力を司る存在かと危惧したブララマンは、数瞬前の考えを打ち消し


「なるほど、そのような知見があるとは……まだまだ我らも勉強が足りないな。寡聞にして知らぬ物であるとはいえ、それは言い訳にしかならんな。すぐに準備を、と言いたい所だが、ここには逆巻の魔導を修めた者がいない。どうであろう、ここは私に免じて、リーンベルの蜜葉は如何だろうか」


 そう言って内心を隠すかのように、国内でも最高峰と言える茶を提供するのであった。








「さすがヘイリシュ様ですわ。武威に限らずその視野と思慮深さには騎士の誰にも及ばない所にありますのね」


 いざ、とばかりに娘が入れた茶を置きつつ、その瞳を星でも舞っているかのように輝かせながら、半身を乗り出すようにヘイリシュに言葉をかける。


「そんなことはありませんよ。たまたま僕ができたことで、全て世にあるものはいずれ誰かが成すものであり、唯一ではありません」


 と、ヘイリシュは笑顔のまま謙遜しながらも、「持つ者」としての無自覚な傲慢さすら滲ませる言葉を返す。


「まあ! それに謙虚でいらっしゃるなんて……」


 まるで火の着いた萌木のように頬を染め、その場で俯く娘に対して、


「お話もいいがな、ティア。まずはお前の紹介をさせてくれないか」


 一呼吸置くかのように、ブララマンは告げる。


「さて、遅ればせながら我がシシハリット家にようこそ、ヘイリシュ殿。先に言った通り、私はシシハリットが当主、ブララマン。ブララマン・コドゥマフ・シシン・シシハリットである。コドゥマフでも、ブララマンでも、好きな方で呼んでくれたまえ」


 そのまま顔を横へ向け、


「私の隣に座るのは、シシハリットの氏族、シシンの家の最古の出、ラザザメ・シシンの当主が娘に当たる、ロロゥアシニ。私の妻だ」

 つまり、シシハリットの一族、直系と傍系に渡る家の中でもシシンという直系第2位に当たる家柄の、ラザザメさんの所のやんごとないお嬢様(年齢問わず)ということである。


 そして、と続けながらちらと立ったままの娘に顔を向け、


「そこで君を困らせているのが私の娘、ラダトキィシヤだ。今年で11の歳になる。半期は家庭教師だったが、来年には中途から魔導の学びに通う予定だ。君には是非娘に付き、その身を守ってもらいたい。そして同時に、娘との交流を深めて欲しいと思っている。もちろん娘もそれを望んでいる」


 娘となんやかんやを含んだやり取りを望み、ヘイリシュを取り込もうという魂胆を、隠すことなくそのまま伝えた。


「紹介に預かりました、ロロゥアシニと申します。アンネと呼んでくれたら嬉しいわ。もちろん、母と呼んで頂いても構いません」


 嫋やかともとれる微笑みを浮かべながら、こちらも明け透けに空恐ろしいことを口にする。


 少しの間、何とも言い難い空気が流れ、どう答えた物かとヘイリシュが考えあぐねていたところ、


「はい!」


 元気よく、次は自分の番ですねと言わんばかりに(ともすればその臀部から犬の尾が勢いよく左右に揺れている姿すら幻視される)、ラダトキィシヤと呼ばれた娘が手を上げる。

 待ちかねたようにそのままの勢い(無論のこと立ったまま)で


「コドゥマフが長女、ラダトキィシヤと言います。非才の身でありながら、シシハリットに名を連ねる者として、その名に恥じぬよう努力させて頂いております。そのような日々の中、折に触れて幼き頃よりヘイリシュ様の武勇を耳にし、いつかお話できたらと思っていました。本日お会い出来たこと、感激でございます。これを機に、是非色々とお話をお聞かせ願えたらと考えております」


 なんであれば言葉尻の全てに感嘆符をつけてそうな、元気で若干前のめりな言葉を紡ぐ。

 ヘイリシュに憧れる貴族の子女そのものな姿に(いつもの出来事ではあるが)、目の前に座る性急な親に警戒とも取れる反応をしかけた心が絆されていくのを彼は感じた。

 そうして少しばかり微笑みを深め(ここに来て彼はずっと顔のパーツを固定して微笑みを維持していたのもある意味すごいのかもしれない)


「よろしくお願いします、ラダト────」

「ティアとお呼びください!」

「……」


 いよいよ誤魔化せなくなったのか、完全に感嘆符が乗っていた声を響かせて、ラダトキィシヤは畳み掛けた。


 はてこれは更に困ったぞ、とヘイリシュが言葉を失っていると、


「あらあら、娘もせっかちなものでごめんなさいね」


 全く悪びれた感情が乗っていない声色で、彼女の母親は続けた。

「でも、私たちは貴方と真に友好を結びたいと思っているの。もちろん貴族としての打算もあるけれど、それだけの思いから来る行動に嘘はないのよ? だからどうか娘の我儘くらいは許してあげてね?」


 これではどうにもかわせないではないか、とお手上げの、所謂詰みの一言を告げる。


 ────────────


 これからどれだけプレッシャー(立場や深い親交的な意味での)をかけられるお話になるのかと思いきや、事の外ことのほかラダトキィシヤとの会話が緩衝材になったようで、その後は和気あいあいと、(途中に差し込まれる娘アピールを無視したら)滞りなく会話は弾んだ。

 それから屋敷の案内を、ということでここでもラダトキィシヤが諸手を上げるが、そこはそれ、当主の案内で廻ることとなった。




「ティアはアレでも魔導に適正が強くてな。既に第5位の詠唱に手を掛けておるのだよ」


 あそこの庭では季節ごとでそれに伴った物凄く高価で美麗な花が一面に咲くのだ、とか

 あそこの噴水ではシシハリットが誇る御山の流水、竜の血が清められたとされる云々な水を通して使っているのだ、とか


 その規模や価値はともかくとして、いずれの貴族でも行われるお家自慢の雑音の中、屋敷を2人で巡りながらブララマンはそれを唐突に口にする。


「それはすごい。かの御年齢における魔導とは、未だ基礎の詠唱を書写する段階がほとんどだと言いますのに」


 もちろんヘイリシュも、そこで慌てることもなく、流れるように会話に乗る。


「魔導の才はあれど、ヘイリシュ殿には及ばないがな。何分そのおかげで鼻柱も高くならずには済んでいる。娘の口からはよくヘイリシュ殿を比較した言葉が紡がれるのだよ。もちろん、自身の努力の先、という前向きな意味だがな。おかげで厳しくせずとも律した志を持てているよ」


 と、うそぶいた所で、恐らくやはり誰しも気になるであろうことを


「ところで、ヘイリシュ殿は普段どのような鍛錬をされているのだ?」


 歩みを止めず、穏やかな空気の中でブララマンは隣を歩くヘイリシュに問う。


「特別なことは何もしていませんが、剣であれば素振りと型、仮想敵に対する動きの想定、その動きの切り詰めです」


 と、無難な答えを用するヘイリシュではあったが、


「魔導に関しては、そうですね。想像の固定化と、勉強でしょうか」


 ここであまり一般的でないことを口にする。


「ほう?」


 チラリ、と一瞬だけヘイリシュを目で捉え、ブララマンはその言葉を噛み砕く。


「それはつまり、一般的な魔力の鍛錬にある瞑想や詠唱の調和とは違うのかね?」


 さもあらん、違うであろうとブララマン自身が思いながらも、疑問を呈す。

 何故であれば、鍛錬の方法は、現代までおよそ100年に渡る魔導の研鑽において研ぎ澄まされ、既にそれは確立しているからである。

 またその方法が、明確に「瞑想(魔力の放出を長く細く繰り返すことで器の底上げをする方法)」と「詠唱の調和(所謂呪文の意味を理解し、その身で現象を起すことを魂に馴染ませる方法)」の、単語として伝わるものであるからだ。


「そうですね。勿論瞑想と調和も並べて行いますが、それが主になることはありませんね。全く別の考えになるかと思います」


 そのままヘイリシュは自身の目の前に手をかざし、


「例えば火を起こそう、という詠唱の際、必要なのは《火よ》・《灯せ》となります」


 その指を揺らしながら中空に詠唱文を描く。


「詠唱の調和とはこのアドロという単語が、火であるアドと、呼びかける《~よ》であるロの句を、正しく《火よ》と認識し、それが自分にとって『当たり前』であると魂に刻むことです。これはつまり、未開拓の民族が使う言葉を、そのまま理解するようなものだと僕は思います」


 そこで一つ言葉を区切るヘイリシュは、反応を窺うかのようにブララマンの顔を覗き見る。

 そこまでは理解しているのか、ブララマンの表情に変化が無いのを確認すると、そのまま指を動かしながらヘイリシュは続けた。


「はっきりと申しますと、これで得られるのは発動までの早さのみであり、伝えられております魔力伝導率にはほとんどの差異がありません」


 真っ向から前代の技術を否定するかのような物言いに、


「……なんと、それは……」


 期待通りと言うべきか、ブララマンはその顔に驚愕を張り付かせる。

 しかしその立場としてか、すぐさまその表情を戻し(内心は知らずとも)、


「しかし私はそこまで適正もなく、初めは訓練用の小さな的すら破壊できない程ではあったが、実際に調和が馴染むほど、後にはレシカの土壁(10人隊規模で使われる魔導の防壁)を破壊するまでに至ったが」


 と、ここで終わる話ではないと理解しながらも、自身に纏わる事実として反論をかざす。


 ここまでが、実際にこの話を聞いた誰もがする反応に


(まぁ僕もそう思ってたけど)

 とヘイリシュは苦笑しながら、


「ここで想像の固定化、という話になるのですが」


 舞っていた指先をつと止め


「『なんとなくそうなる』として不明瞭な認識のまま行う詠唱自体が、魔力伝導率の浸透を引き下げているんです」


 言葉を紡いだ直後、その指先に炎が灯る。


「無詠唱……」


 今度こそその驚きを隠せないのか、ブララマンは貴族の振る舞いすら忘れ、その炎に顔を向け呟く。


 既に足が一歩も進まず、完全に立ち止まっている二人ではあったが


「実際のところ、想像の固定、つまり炎自体の温度、形、原理。これらを定義できていない場合の詠唱ですと、実に魔力の2割ほどしか体現できません」


 気にせずヘイリシュは続ける。


「そして調和ですが、そうですね、2割をいくら馴染ませても、50の歳月をかけて、しかもよくて4割です。少なく感じますが、単純に倍になるのではなく、底の部分の引き上げになるので、先程仰られたほどの差異に感じられるのだと思います」


 土壁を破壊するほどの、の部分に注釈を添えつつ、


「伝導率は自身の定義に基づくため、内にある魔力路が開くほどの理解があれば、このように言葉にせずとも魔導は発現します」


 まぁ、詠唱という補助回路が無いと6割ほどの伝導率に止まりますが、と微笑み混じりに嘯く。


 その姿に生唾を飲み込み、


「すごい……これはすごいぞ……っ。ヘイリシュ殿! これはすごい発見だぞ!」


 立ち直るかと思いきや、むしろ先程の貴族然とした態度をかなぐり捨ててブララマンは興奮を露わにする。

 その姿に過去の自分を重ねて、どうしてもヘイリシュは苦笑を隠せないのだが、


「実はこれ、5年ほど前にとある冒険者の方に指導を頂きました折の話でして」


 かざした炎を、腕を振り払う動作でかき消しながら事実を打ち明ける。


「その方は普段『中央』で活動してらっしゃるのですが、たまたまこの国に立ち寄った際、話をする縁に恵まれまして」


 ブララマンはその言葉に、どこか顔を顰めながら


「中央か……」


 そのまま考え込んでしまうかのように頭を斜めに下げた。


「はい。ですのでこれは、来訪者によって齎された認識であり、世界の法則として間違いないものだと思います」


 と、ここでヘイリシュは話を打ち切るかのように、自然な形でブララマンに歩みを進ませようと体の力を抜く。


「なるほど……中央……いやしかし……」


 その思惑は、思いのほか脳への衝撃が強すぎたのかブララマンには上手く伝わっていなかったが。


「まぁこの話を聞けたのもたまたまですし、その知識はいずれ世界に広まる事だとは思いますよ。もちろん僕がそれで誰かに劣ることにならないように努力はするつもりですが」


 最後とばかりにヘイリシュは一言付け加え、ブララマンの危機感を少しでも拭おうとする。


 そう、たまたま、である。

 真に偶然、日々行う、たまたま行軍中の朝、たまたま人を避けた先の開けた荒れ地、たまたま魔導の鍛錬につまづきかけて悩んでたその時、その様子を旅の途中にたまたま見かけた冒険者が、たまたまヘイリシュに声をかけなければ、今をもってなおヘイリシュの評価は、「百鬼魔人の剣士」で止まっていたはずであった。

 魔導にも秀で、という評価こそ齎された結果のそれであるものの、だとしてもヘイリシュが国において有数の武勇を誇っていたことも、末恐ろしいものではあるが。


 とまれそこでようやっと気を落ち着けたブララマンは、未だどこか冷静ではない頭のままヘイリシュの案内に努めるのであった。






「ヘイリシュ殿、少しばかりその……、鍛錬の様子を見せて頂くことは可能か?」


 案内も終わり、後は今後の話をおいおい、他の貴族との内々のやり取りを待つばかりな所で、また一家に囲まれながらの団欒の中、ブララマンは遠慮げに声をかける。

 やはり先の内容が気がかりなのだろう、とヘイリシュは予想するが


「あぁいや、魔導に関してはこちらでも調べてからにしたい。なので今回は剣技の姿を見せて頂ければと思うのだが」


 どちらかというと愛娘にその艶姿を堪能して貰おうという親心だったようで、その様子に


「えぇ、構いませんよ。少し開けた所を案内頂ければすぐにでも」


 これは断れないな、とヘイリシュも期待に鼻を膨らませるラダトキィシヤを目にして微笑んだ。


 ────────────



「……っ、これは……凄まじいな……」


 その様子を見るに、ブララマンは噂や評価が誇張されたものでない事を実感した。

 いや噂以上、下手をしたらこれはもはや人の器に成し得るのかと瞠目してしまうほどのそれ。


 空を斬り、その場を支配し、歩を進める度に切り込まれたかの様な圧力を感じる。

 それはまるで現実的でなく、いっそ英雄譚に語られる魔王との一幕を幻視するほどの、流れるような型であった。


 他の者など声もなくその姿に目を奪われ、まるで呼吸も、瞬きすらも忘れたかのように魅入っているではないか。

 ともすれば今まさに剣を振るう先に、まるでヘイリシュに切りかかろうとする相手すら見えてくる。

 それらを躱し、いなし、合わせ、流し、払い、一刀の元に伏せる。


 ラダトキィシヤなど、その舞の姿に感極まり、足腰から震えが走っているほどであった。


 しかしながらそのいたく感情の込められた視線に晒されながらもヘイリシュは、


(んー、すっごい見られてるな)


 普段通りに型を取り、仮想敵を打ち払いながらも、集中を切らすことなく動き続けるのだが、


(どこからだろう? ちょっと当てられるなぁ……これはキツい)


 見られている。

 憧れでもなく、感興でもなく、思慕でもなく

 見られている、と確かに感じるほどの強烈な視線。


 見られている。

 明らかにヘイリシュの動きを捉え、何の感情もなく次を想定し、観察し、肥にせんとする、強すぎる視線。


(あっちか。一箇所だけ案内が途切れた……あの茂みの向こう側)


 遠い。広すぎる屋敷内の、更に広い敷地の外縁の、綺麗に内部で区切られた茂みの「向こう側」。

 そこからずっと、それこそ型をとる前、剣を構えたその時から。

 変わらずヘイリシュを捉え続け、今なお追い続け、もしかするとヘイリシュよりも先を目にしているその視線。


 見られている。

 何の感情もなく、しかしながら明確にヘイリシュを倒す熱意。

 見られている。

 機械的に、舞った先の喉元に刃を突き立てんと動き続ける敵意。


「……っ、はぁっ」


 これ以上は無理だ。とヘイリシュは判断し、そこで型を崩し、流れるように数歩の制動の中、残心を伴って剣をおろす。


 誰もがその姿に息をのみ、声も、手も出せずにいた。


「…………ふぅ。以上となります」


 型を崩した瞬間途切れた視線に、高まっていた緊張を抜き、ほんの少しだけ上がった息を整えたヘイリシュが見学者達に声をかける。


「……っ、素晴らしい! いっそ美麗な言葉こそその姿の格を下げてしまうほどだ! 素晴らしいぞヘイリシュ殿!」


 ここでようやっと再起動した者達は、真っ先に声にしたブララマンに続き口々にヘイリシュを褒めたたえ、その手を叩き喝采する。


 興奮のあまり貴族の言葉遣いが完全に山を越えてしまったラダトキィシヤの歓声混じりの褒め言葉が畳み掛けられるが、


「これ以上は無理でした。まだまだ鍛錬が足りません」


 やんわりと、ヘイリシュは言うのであった。




 そう、これ以上は無理だった。

 これ以上「あの視線」に晒されたら、間違いなくヘイリシュはその剣を視線の先に向けようと動かされた。


 意思に関係なく、体が危機を感じていた。それも、今まで感じた中でもとびっきりの危機を。


 ────────────



 貴族とは迂遠なもので、その日その場で何かが決まる、というものではなく、大抵は数日から数ヶ月に渡る何かしらの話し合いやら打ち合わせやら、もしくは既に決まっているものを「温める」機会を要するらしく。


 それではまた後日ご招待を、と口にし、ブララマンはこの日の出会いをしめやかに終わらせた。


 のであるが、


「失礼ながら、帰りの際に少々庭を散策させて頂いても宜しいでしょうか?」


 過去のお誘いでは毎度まっすぐに門を出ていた(心情的に表現するならば逃げ出していた)ヘイリシュが、そのようなことを口にする。


「庭が気に入ったのかな?それでは案内を───」


 と、少々の手応えを感じたブララマンが娘に任せようとするものの、


「いえ、気の向くままにシシハリットの歴史を感じたいと思いまして。騎士として礼儀は弁えておりますが、油断してどのような姿をお見せするか心配でなりません。どうか一人で、シシハリットの歩んできた大地を堪能させて頂ければと」



 そうしてヘイリシュは、上手いこと目的の場へ足を踏み出すことができたのであった。


 ────────────



「いやこれは気づかないでしょ」


 視線を感じた茂みの向こう側、とやらはどこかとばかりにヘイリシュは足を進めるが、先にあるのはちょっとした林であった。

 それでも最低限の形を整えられた林をまるで散歩するかのような自然体で抜け、さらにその先にある小さな池を超え、そうしてある意味立派な(言い換えるなら堅牢な)衝立の、その向こう側に、それはあった。


(完全に不法侵入になったかなぁ)


 衝立をものの一歩の踏み込みで飛び越え、足が地面に着いた瞬間目に飛び込んだ景色を見て、ヘイリシュが真っ先に感じたのはこれである。


 明らかに、敷地内であるにもかかわらず、もはや別の土地と言えるような開けた空間。

 木々も手入れされず、鬱蒼と茂ってはしずかに風の声を鳴らす。

 地を見ればこれもまた手は加えられておらず、街道の脇にあるごく自然的な大地の様な荒れ具合を見せている。


 そんな、ポツリとそこだけ別の空間になったかのような場所の、真ん中に、その建物はあった。


(恐らく過去に作られた離れか何か、かなぁ)


 その屋敷らしき建物すら、物や形こそ立派と表現できるものの、長らく人の手が加わっていないであろう、くすみが激しく、窓も汚れ、大きな柱をつと目にすれば下から草の根が纏わっているではないか。


(これじゃ完全にお化け屋敷だよ。さっきの視線は人じゃないとか?)


 自分ながらに、その考えに苦笑を浮かべながら、ヘイリシュはあくまで自然な形でその屋敷に向かう。

 ともすれば、人であるなら尋常ではない視線から本当に魔の類やもしれぬと思い浮かべながら。


 と、屋敷の全容が目の端から写りきらなくなるほど進んだ先で、「それ」は起こった。


 ヘイリシュの真後ろ、数歩の先に、間違いなく感じられるそれに、彼は足を止めた。


(すっごい殺気なんだけど……いやでも動きは無いし……)


 どうすべきか、少なくとも足を進めるべきではないことだけは分かる。

 しかしながらヘイリシュはこのまままんじりともせずに固まる訳にもいかず、最大限の警戒をもって振り返った。


「…………は?」


 そうしてそこにあったのは、木であった。


「…………は?」


 いや、うん、木だ。

 木だよなこれ、うん。

 なんか木が人間みたいな形して、剣みたいに木を持ってるけど、


 木だよね?



 正しくその表現通り、大人が一抱えするような少し大きめの、折れた先でそのまま枯れるばかりだったであろうボロボロの木が浮かび、何故か枝やら切れ端やらを人間の体のように配置させ、そして腕(のような少し大きい枝)の先にまるで剣のようにこれまた木の枝を構えていたのである。


 唖然である。

 一騎当千、万夫不当、そして百鬼魔人と評されるほどのヘイリシュですら、目の前の、バリバリの殺意を持った相手?に対して、戦闘を予感させるほどの緊張感が持てない。


 いや木だし……


(めっちゃ殺気すごいんだけど、これ何? 精霊? 聞いた事ないけど)


 いやしかし、と全くもって冷静にはなれないものの、彼にしてみれば凄まじく遅い反応であるが、剣を抜く。


 いざと構えようとした瞬間、


(って早っ! 間に合わない!)


 抜いた所で、待ってましたとばかりに目の前の敵(ただし木だ)は切りかかる。


 ヘイリシュはなんとか構えの途中から体ごと沈め、その一振りをやり過ごす、が


(ちょ、ま、すっごい怒涛の攻撃なんだけど!?)


 敵は容赦しない。

 そんな教訓を体現するかの如く、切り返し、体(浮いた木ではあるが)を潜り込ませ、そしてまた切り払う。


 段々と手数を潰され、打ち合う度に押し込まれ、そうしてとうとうヘイリシュは膝をつく。


「────まっ」

 ピタリ、と


 振り下ろされた剣(枝だが)がヘイリシュの眼前に止まる。


 いや木の枝がなんで真剣と打ち合えるのかとかちょっといきなり容赦なさすぎじゃないかとかそりゃ不法侵入した僕が悪いかもしれないけどせめて構えるまで待って欲しかったとか


 色々と言いたいことがあるものの、その剣が止まったことにヘイリシュは思わず喉から空気が漏れる。




 背筋が粟立つ。

 安堵の吐息を漏らした瞬間、先の鍛錬で感じた視線を、背中に受ける。


 今ほどのような気の抜けたものから遥かに超えた反応速度で、打ち合った敵など存在しないとばかりに、かざされた枝を右手で打ち払いながらヘイリシュは体を翻し、剣を腰だめに構える。


 じとり、と汗が襟足に染みる。


 天使が微笑んだような普段の顔つきを鋭く尖らせ、戦士の目を持ち上げ、視線の主を探す。

 そして屋敷に目を向け、玄関、柱の影、2階の窓、と続けた先に



「それ」はいた。




 初めに、目を奪われた。

 薄らと、しかし微笑みとは呼べないほど酷薄に、されど妖艶に口角を上げた、薄く、それが映える小さな唇。

 三日月のように形を歪め、星空のように輝く瞳を炎のように酷く染め上げ、むしろ闇のように深く濃い目付き。

 顔かたちはと見ると、これがラダトキィシヤとそっくりで愛嬌に溢れているように見えるのだが、何故か感じるのは愛嬌ではなく色香に強く。


 窓に遮られ、聞こえるはずの無いそれであるのに、その喉が震え、鈴の鳴るような声色で小さく笑っているのが見て取れる。


 そうして次に、心を奪われた(これはヘイリシュの尊厳のために言うのであれば、見下されたような眼差しに興奮した訳ではない)。


 美しい、と。

 ただ悪戯っ子のように歪めさせたその仕草と表情が。

 くすんだ窓から映るその姿が。


 しばらく呆然と、鼻を垂らした学びの無い子供のように口を開けたまま、ヘイリシュはその姿に動けずにいた。


 が、(全体の2割ほど)正気を取り戻したヘイリシュは、とにかく何かを、と言葉を口にしようとする





 ────その後ろで、今度こそ止まることの無い剣(枝)が振り下ろされた。





 これが、ヘイリシュ・トゥラオド・リリン・アグラットと、レレィシフォナとの出会いであった。


 そしてこの出会いが、ヘイリシュの人生の、間違いなく転機であった。

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