番外編II 闘いの後
『2年D組有栖川ヒロト君、職員室まで来てください』ガチャと受話器を置く音と共に放送は終了した。ここで肝心なのはなぜ俺が呼ばれているのかということである。
「アリスなんかした?」
「いやいや、全く身に覚えがない」と続けて「取り敢えず行ってみる」
「おう、じゃあ頑張って」
何度か渡り廊下渡ってやっと、職員室のある教棟についた。学校が大きすぎるのは移動に大きな弊害があった。それに中央には大きな階段があるし、そこで落ちた生徒もいたな、とこの学校の欠点を無意識に上げていたら。既に職員室の目の前だ。
コンコンコン
「失礼します。2年D組の有栖川です。今きました。」
「ああ、きてくれたか、ちょっとついてきてくれ」
対応してくれたのは、職員室の一番奥に座る教頭に二人である。この学校は教頭が二人いる、学校の規模が大きいからか、多くの科目があるからなのか、理由は定かではない。
しかしどうやら目的地はここ職員室ではなかった様だ。俺はそのまま二人の後ろについて行き。一階へ通り。目的と思われる部屋の前で止まった。
『応接室』
外部からの客をもてなす場所だ。就職先の人事担当が学校へ来た時は大抵ここへ通される。
教頭は三度ノックした後丁寧に扉をそれもゆっくりと開けた。部屋の向かい合う形に置かれたソファーの前に男が一人たっていた。その男は椅子翁上級大将だった。
テーブルに中身が減ったコップが置かれているのを見ると。先ほどまで座っていたことがわかる。外の足音を聞いて準備していたようだ。
男はこちらに一礼すると、こちらも一礼。
「さあ有栖川くん、座りなさい」
優しく教頭がそう指示し俺はそれに従った。
俺が腰を置くと、対面する男もおくれて、「失礼します」と言い、腰を下ろした。
「教頭先生失礼ですが、席を外していただけますか」
「っああ、すみません気が利かず」と言って教頭はこれまた丁寧に退室するのだった。
上級大将は教頭が離れたのを確信すると口を開いた。
「お久しぶりです閣下」
「久しぶり椅子翁、いつぶりだ君と会うのは」
「アメリカ、ソ連のキプロス紛争介入でお会いしたのが最後でした」
当時日本が被保護国としていたキプロスで日本の影響力にあることを良いと思わなかったアメリカが反対派に武器などを渡し支援、その裏ではソ連がキプロスの共産勢力と共に現地介入それで起きたのが、キプロス紛争。地中海でも重要な位置にあるキプロス島は標的にされるのに時間は掛からなかった。不凍港を入手できていないソ連は黒海からボスポラス経由でできことが叶ったが外に港がなかった、それで目をつけたのがキプロス島、日本占領下のスエズ運河からも程近く、攻撃拠点としてはこの上なかった。アメリカも同じ理由だ。バルカン半島が共産勢力に飲み込まれ日本とソ連両方に牽制出来る土地が必要だった。キプロスは日本の保護国であるがそれは外国から責められた場合のみ守ることができるというものだった。詰まるところ独立保証と効果は同じであり、半分独立状態であった。それでもキプロス政府は日本寄りの思想で、介入の余地は政府上層部にはなかった。
その後俺たちは思い出話に花を咲かせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます