第51話 過ち

第一次試験が終わり本土に着くと、ここで解散となってしまった。今日で全ての試験が完了するはずだったのだが、そうはならない様だ。

 とは言っても今日泊まるところは、丁度王から招待が来ておりそこに一晩お世話になろうと思う。


「ヒロト様、招待状の時間までは少々ある様ですがどうなさいますか?」


 そう招待状に書かれている時間は午後七時からという旨が書かれている。その間は、することがない。

 しかしこれは丁度良いことかもしれない。最近は仕事が多く忙しかったために、ゆっくり出来る暇はなかった。

 この時間を、その休憩時間にあてよう。


「最近忙しかったからな、少し休息だ。ここいらのレストランで食事でもしようか」


 とは言っても招待が来ているので、夕食に全く手がつけられないほど食べるわけにも行かず一品甘いものを頼んだ。

 その後招待された時間になり、会場へと向かい、ある程度貴族などとも関係を結び、用意されていた部屋で今日を終えた。

 

 

 朝起きる、吸血鬼という特性上朝には弱い。しかしオーストや禍殲廼よりは早くおきれた様だ。

 しかし事件は既に起きていた。ベッドには俺とオーストが裸でいるのだ。

(おわったーー)

 これはまずいだろ!上司と部下の関係にありながら、行為に及ぶのはまずい。全部覚えているのも罪悪感で、キツイし隣に禍殲廼がいる中でってのがキツイ。既にヴィクトリアと愛人関係みたいになっているのに、此処に来てオーストはヤバイ。ヴィクトリアは、アイツが勧めてなったという良い経緯があるがこれはマズくないか⁉︎


 まずなんで吸血鬼がお酒に弱いんだ。

 それは俺が完全の吸血鬼ではないのが原因なのだろうか。俺はノーライフキングではあるが、アイツによって出来た紛い物みたいなところがあるからか・・・そういうのはよくてどうする、オーストに説明するか?それは確定か。よし覚悟を決めよう。


「おい、オースト起きろ」

「・・・ぅん」


 未だ起きない様なので体を揺さぶり強引に起こす。


「・・・おはようございますヒロト様」

 一瞬ビクッとなって、上半身を起こすオースト。この状況に気がつく。

「こっこれは⁉︎」と言ってかけてあったシーチングで体を隠した。

 その後少し落ち着いた後俺が覚えている範囲で事情を説明。

 なんとか問題は回避した様だ。

 何ごともなかった様に、後は禍殲廼を起こし支度を開始し止めてあった。車に乗り込んだ。

 車での移動中は周囲の目を集めていた、これが狙いで車にしたまであるから計画通りと言えばそうなるのだろう。

 今朝の問題はどうするか、やはり同行者が女性というのは不味かったな今からでも、ブレニンなどに変えるか?しかしそれでは、何か怪しまれるかもしれないし。


 この問題は、二人で考えよう二人の問題だし今度話す機会もあるだろうから。

 移動中にそんな事をずっと考えていると、早々にギルド本部へ到着していた。窓越しに見えるのは、昨日いた日本人だろうか。

 彼もイレギュラーでこの国へきてしまったと、翁から連絡があったな。

 彼の素性は知れぬが、何か嫌な予感がする、幾万と倒してきた、邪魔をしてきたあの物たち英雄のような気配を。

 まあいいさ、そうなればこいつを使った、基地の防衛能力を確かめるまでだ。

 元日本人が中へ入る頃にはギネスがドアを開けてくれた。


「ではいくか」


 謎の意気込みを伝えてておく、しかし返事は一つのみ。禍殲廼の「承知した」だけである。オーストはまだあの事を引きずっているようだ。これはもうそっとしておこう。

 そんな士気低迷が、起こるなか目の前にある両扉を開けた。

 何度目か見るこの景色今日も賑わっていた。しかしそんななか、聞き覚えのある言語が、耳に入る。その事で反射的にそちらに目を向けるとそこにはクラスの一同集まっていた。

(予期せぬところでの遭遇)

 しかし今の姿は日本で暮らしていた時のヒロトの姿ではない。昔戦争に参加していた時の姿だ、今あっても『え、誰?』ってなるだけだしな。取り敢えず、呼ばれている間に何処かへ行かれては探すのが面倒なので、ここにいてもらうか。


「ヒロト様?」

「どうした?オースト?」


 先時ほどまで考え込んでいたオーストだが、いつもの真面目な姿へ戻っていた。


「アレがヒロト様の言っていた・・・」

「そうだ」


 表情で察せられてしまったのか、ヴィルは気づいている一方の禍殲廼はずっと俺を見るばかり。

 取り敢えず、話しかけてここにいてもらうか。勿論ドイツ語で


「Sorry, seid ihr Freunde von Arisugawa Hiroto?」


 急に話しかけられて硬直するクラス。もう少しで一週間が経とうとしているがやはり外国語というのは慣れないのか。

 そこに勇逸ドイツ語が喋れる、クラスの頼れる翻訳係、淵部 蓮太郎最初は仕事が増えてやりがいを感じていたがその重役からストレスが溜まりつつまるそう。


「訳すと、有栖川ヒロトの友達ですか?だって・・・・・・え」


 クラス全員の顔が驚愕のものになる、死んだもしくは行方不明になっている、あの有栖川ヒロトを知っているのだから。

 俺は質問責めに会う。

 こいつら日本語通じないっていることわかってるかな?


「Er wird einige Stunden später hier ankommen, also warten Sie bitte bis dahin. Er sagte es」


 クラスの皆は発言した事を聞き漏らさない為に静まり返るここまで静かになるのは担任に怒られた時くらいだ。


「えっと、あと何時間かでここに着くからそれまでここで待っていて欲しい、だって」


 そう伝えたあと俺はその場を立ち去った、大半の人間は希望を見たように喜び、ごく一部はその皮を被った偽物。



 しかし伝えた言葉にはいくつか矛盾があるが、大丈夫だろうか?

 ばれてもいいさ、どうせもう会うことはない。

 その後ヒロトは面接会場へと歩いていく。その正体が誰とは悟らせずに、しかし気付いているものはいた。

 

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