第42話 王都へ帰還

先ずは低空にある雲を抜ける、時速130マイルと言ったとことか、地面が見え始めた。体の姿勢を変え空気抵抗を増やし減速する。その後パラシュートを開く。


 地面は殆どが草原と林が点々としているだけ、しかし、草が禿げ土が剥き出しとなっている線を確認する、きっとあれは、各都市へと続くインフラ、詰まる所、道である。

 地面へ無事着陸した。

 取り敢えず今は、宝物庫からMODを出す。

 運転手は、MODと共に来た兵士二人が担当した。


「ヒロト様御怪我はありませんか?」

「ああ、俺は大丈夫だ。全員無事か?」


 全員の返事がすぐに帰ってきた、為無事だと認識する。

 今の装備は万が一の事を考え、指には自室から持ち込んだ指輪が嵌められている。

 MODに乗り込む。

 先程の着陸の衝撃で目が覚めた、騎士団団長は、辺りを見回していた。


「ここは?」

「ここは、車の中だです、今ルベリア王国王都へ向かっている途中です」


 車と言う単語の意味がわからないようだが、説明する意味は無い。彼らにこれの存在が知られようとも、教えることは決してならない。


 それなら見せるなと言われるだろうが、これは少しでも便利になればと思い使っている。もしこれで車というものが開発されたのならそれはそれで称賛すべき成果だろう。技術は盗むもの。冷戦時代の東西で行われた情報合戦も、その集大成だろう。

「どうやら助けられたようですな。……他の仲間は?」


 部下二名を確認し、ほか部下の安否を確認に来た。

 結果は周知している筈だ、自らがそれを体験したのだから。


「ここにいる者以外は、全員死亡していた」


 大体の死因は熱傷ショック、気道熱傷と思われる。死体を解剖していないので詳しくはわからなかったが、全員全身が焼けていた。

死体を見た限り重症熱傷、全身が熱傷深度Ⅲ度、P B I熱傷予後指数が百二十を大きく上回っていた。

 何故あの様な瞬間的な炎で全身が炎症した原因は掴めていない、この世界における、魔術の基本から大きく異なるのかもしれない。


「すまない、旅人である君を、危険な目に合わせてしまって」

「謝るのはこちらの方です、私がもう少し早く助けられていれば、犠牲はもう少し減らせたかもしれない」


 罪悪感がないといえば嘘になる、死を悟り其れでもなお挑んだ、人間は評価されるべきである。

 それでも死んで、俺のためにはなった、この世界特有の魂が手に入った。定着魔力量が多く、魔術触媒として高い性能を持つ。

 時間が貴重な現代において実験の時間短縮や簡略化は重要だ、こいつらは騎士だったが、この世界の魔道士と呼ばれる者の魂はもっと、上質だった。


「王都の位置は分かるのですか?」

「ええ、地図を魔道士集団から拝借しました。しかし良かった、あなたが寝ていたのはたった1日です、もう少し掛かるかもしれないと踏んでいました、その間我々は王都に向かっていて、ですので後数分で付きますよ」

「1日、ですか……」


 これで俺たちが、あたかも今までずっと移動していた様に、伝わった筈だ信用していれば、俺たちが寄り道をした線は考えないな。

 俺はこの騎士団長からも、この世界の主にこの国の情報を聞いた。村で聞いた常識的な者ではなく、少し細かな、これから向かうハンターギルドの事を知っている限り話してもらった。

 ハンターギルドは、国家機関に属するようだ。管轄は一様、国防省ルベリア軍が指揮している。

 国に属しながら国と民間組織、まれに個人を客としているようだ。

 軍に入ってはいるが、相手は人間ではなくモンスターを主としている、冒険者が、武装偵察部隊、ハンターが、狩猟専門部隊の様である。冒険者は、合衆国アメリカ米海兵隊武装偵察部隊フォース・リーコンを想像させるが、あれは、海兵隊が直接指揮・管轄を行なっていた。


 冒険者及びハンターは国家資格であり、一定数以上の金属を使った武器防具のこれの装備、所有を禁止しているようで、俺の防具は着けられない。

 ハンターは昇格時に国に対する忠誠度で上がり昇格の際には金属量の上限上昇、いくつかの特権を渡す、となっているそうだ。

 民間の組織に金属の所有なんて認める筈もないのだから、軍なのだ。

 民間組織に好き勝手に武装されれば、脅威としかなり得ないそれは、国防省が黙って見ていない、と言う訳だ。

 金属装備の制限が掛かっている、強くて忠誠心が無い奴に、反乱でも起こされたら、只では済まない。

 と言う事なので、最初は革などの装備を着用して、仕事をし次の階級に変わるそうだ。幸い最初の階級上昇は早く、簡単に言ってしまうと、1ヶ月の研修期間と言った所だそう、もちろん最初の審査で好成績を出せば、1.5㎏の使用が認められる。

 しかし、この世界に最初きたときには、試験などは無かった、これもアテナの力が関係しているのかもしれない。

 そんなわけで俺は防具を着ていない。

 ついでに顔も変えてしまっている。

 長い金髪にした、女性よりな顔立ちをしている。


「まさかそこまで、ご存知でないとは」

「申し訳ない、何分ずっと旅をしていたものですから」


 車で数分ほど進んでいると広大な畑が辺り一面に広がっていた。

 遠くには、その町を一周する様に水を張った堀がある。

 車の速度を二十㎞で動かす。エンジン音は少ないが、道のモンスターと驚かれて、攻撃される恐れがある。

 壁が徐々に大きく見えてくると、門の前で騒ぎになっていることに気づく。

 車を止めると、門番と思われる人間が、車を取り囲む。長物の槍を前へ突き出した至極一般的な守勢隊形だ。

 そこへ、騎士団長が外に出た。


「お前たち武器を下ろせ」

「これは!バルバス・グラース騎士団長」


 門番は一斉に武器を下ろし、グラースに向かって敬礼した。


「この方達は私の命の恩人だ、即刻門を開けよ」

「はい、只今。ところで、他の騎士様達はどちらにいらっしゃるのですか?」


 グラースは苦虫を噛み潰したような表情を晒した。


「仲間は副団長とクリスティアーン以外……戦死した」

「そっそんな!ジルさんやブルーノさんは」

 騎士団長は俯いたまま、首を横に振った。

「そんな、どうして!」

「どうした、なんの騒ぎだ…ん、グラースじゃないか」


 出て来たのはパウル・アンジェイという男だった。〈運河区〉の東側の防衛に於ける最高責任者で、あと何かとても重要なポストを務めていて、仕事で見にくることはあっても、特に何をしているかは把握していない。運河区警備兵のシルバーの鎧が近ずいてくるのを見ると、ソロモン殿が車と呼んでいた物のまわりに集まっていた人々は瞬間、静まり返った。アンジェイは大柄で逞しい身体をしており、首は太く、顔には半ばおどけた様な残忍な表情浮かんでいる。その恐ろしげな外観にもかかわらず、彼の仕草にはある種の魅力があった。鼻の上で始終眼鏡の位置を直すという癖があったが、この癖は妙に相手に好意を抱かせる要因であった。

説明し難いが、妙に洗練されていた。

 バルバスがアンジェイを見かけたのは、この五年ほどのあいだに五回くらいだろか。彼に強く惹かれるのを感じたが、それはアンジェイの優雅な物腰と賞 金 稼 ぎバウンティハンターを思わせる肉体との対照に興味をそそられたためだ。

 アンジェイに事の発端を話した。



「そんな事があったのか」

「ああ、自分が情けない、仲間が死んで俺が生き残る。上司は部下を庇ってこそだというのに」

duお前は生きなければならない、死んで行った部下の為にも、この国の為にも。duお前愛国者パトリオートだ第一優先は国防という事を忘れるな」

「分かっている」


「暗い話はここまでにして、次に進もう」宣言通り表情を何時もの友人アンジェイに戻った。


「さっき言っていたバルバスの命の恩人がerかい?」

「ああ、俺があった時は鎧を着ていたから顔は見えなかったが、間違いなく彼だ」

「印が無いのを見ると、ハンターギルドの者では無いな」

この様に街の外に出るのはハンター及び冒険者と特例で今回は外に出ていた騎士団のみ。

そこでハンターを疑ったが違う様だ。


「しかし、見た事ない人種だ、ここらでは見ない」

「最近見つかった大陸に人種ではないのか?帝国が奴隷として持ち運んだそうだが」

「いや、sie彼らはテルモニウス大陸と同じで何でも肌の色が黒いそうだ、そうすると、当てはまらない」


 いくつもの議論を、考察を立てたが結局答えは出なかった。

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