第28話 人類焼却


「そこの人、聞きたい事が在るのだがここに君たちの本隊は来るのかな?」


 隊長らしき人は喋らない、当たり前は当たり前だろう。普通自国の不利になることはしないし、したくもないその気持ちは分かる。


 だが動かないと思われた口がしゃべりだす。


「分からない、ここに王国騎士団が来れば本体も追ってここに来る。」

「隊長!この化け物に、話して大丈夫ですか?!俺たちただじゃすみませんよ!」


 後ろに居たこいつの部下と思われる男が話に割り込む。


「いいさ。どうせ俺たちはここで死ぬ、例え生きていたとしても、王国の騎士団に見つかって、拷問させられるだけだ。それにあの国は俺の親の仇でもある」


 隊長のそのセリフを聞くなり、周りの者は下を向き黙り混む。中には神に祈る者まで居る。


「では、俺は行くとしよう。さらばだ、人間」

草原を歩く。

 もうだれ一人として、ヒロトを追う物などいなかった。

 ヒロトは止めてある、愛車であるドゥン=スタリオンのもとまで行くと、オーストがドアを開けてくれる。


「ありがとう」

「礼は無用です、これがヒロト様に出来る私の仕事です」


 それだけを聞き、ヒロトは車に乗り込みヴィルジナルも乗ってからここから離れる。

 大体一キロほど離れただろうか、遠くには民家の屋根や櫓だけが見える。

 刹那、村の上空には黒龍が宙を舞っていた。

 黒龍が口を開け何かを貯めている。これはあいつの能力で出来るエネルギーの塊だ。

 奴の体の中は、反物質があり常時体の中で反応を起こし、決して朽ち無い特殊な器官で生産している。


 そして十秒もしない内にここからでも、目も眩むような光弾に変え打ち放つ。

 毀の象徴である。

 地面に接触した瞬間、着弾点で一気に誘爆炎上し周囲を大爆発で包み込む、その数秒後にはここまで衝撃波が来るほどだ。


とてつもない熱風と暴風はそこら中の葉や土を舞い上げて襲いくる。目を開けることさえも困難な状況が数坊ほど続いた。


 大爆発が起きた、爆心地は大きなクレーターが生成されていた。

 近づくと建物やそこに居た人間は影も形も今は存在しない、余りの高温のせいかクレーター表面は赤く加熱しておりドロドロに溶けていた、軽く千℃は超えているだろう。


 突風が起きると同時に、このクレーターを作ったドラゴンが降りてきた。するとそのドラゴンに乗った女性が声をかける。


「マスター、ここは非常に高温だ、体によくはないだろう。車に戻れ」


 漆黒の刀身を持つ大太刀を手に持ち軽装の鎧を付けた女性だった。


禍殲廼かせんのか、その件については大丈夫だ、術などで耐性等は取っているからな」

「それもそうだが・・・」


 彼女は何所か悲しげだった、主人が自分の心配を大丈夫と言っても心配になっているからだろう。


「大丈夫だ、もし何かあっても、凪を守らないといけないから死んだりしないし、もしも俺がどこかで死にそうになっても禍殲廼は助けてくれるだろ?」


 そうだ私は主を、マスターを助ける者、何かあれば障害を斬ればいいこの身は滅ぼうとも問題は無い即座に生き返ることが出来るのだ、マスターの力の御陰で。


「この禍殲廼、虚心坦懐にマスターを守ろう」


 片膝をつきそう答える彼女の姿はとても凛々しかった。


クレーター付近で周囲の安全確認と目撃者の居る可能性を考え、今は捜索に当たらせていた。


「我が召喚者、東南東から騎兵隊と思しき集団を確認しました」


 きっとその騎兵隊が、あの男が言っていた王国騎士団だろうかこの後も王国に行くことになるだろうし、恩を売っておくか。


「分かった、お前たちは極力物陰に隠れ戦闘態勢を維持、騎兵とはギネスとオースト、禍殲廼で出迎える」

「ハッ!」

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