第167話 止まらない眷属生成ア〇メ
「「「え――」」」
レジーナが生み出したらしい球体に僕とアリシア、ソフィアさんの目が釘付けになった。
な、なんだこれ? と思っていれば――ビシッ。
球体――恐らくは卵だったのだろうそれにヒビが入る。
かと思えば、
「「「キイイイイイイッ!」」」
「うわっ!?」
中から元気よく飛び出してきたのは、小さなアーマーアントたちだった。
けれどそのアリの子たちが小さかったのは一瞬のことで、
「え、ちょっ、大きくなってる!?」
産まれた直後は手の平サイズだったアリたちが、急速にその体躯を成長させていく。
その勢いは異常のひとこと。
10体同時に巨大化していくアリたちの成長速度は凄まじく、レジーナがギルドから借りているこの家をいとも簡単に突き破ろうとしていた。
「ちょっ、まっ、まずいまずいますい! 〈ヤリ部屋生成〉!」
こんなのがいきなり街中に現れたらとんでもない騒ぎになる! と僕は慌ててスキルを発動。
アリシアとソフィアさん、それからレジーナごと、いきなり産まれたアリたちを「セッ●スしないと出られない部屋」へと隔離する。そうしてほっと息を吐くと同時、急成長していたアリたちへと改めて目を向ければ、
「「「「キイイイイイイッ!」」」」
目の前の光景に僕は改めて愕然とした。
なにせ先ほどまで手の平サイズだったアリたちが、完全に成体へと成長していたからだ。
それもただのアーマーアントじゃない。
雑兵を束ねるアーマーアント・プラトーン(レベル80相当)
防御に特化したアーマーアント・フォートレス(レベル90相当)
蟻酸による強力な遠距離攻撃能力を有するアーマーアント・カノン(レベル90相当)
土魔法を操るアーマーアント・メイジ(レベル85相当)
レベル40相当の通常アーマーアントに加え、特化能力を備えるアーマーアントたちが当たり前のように爆誕していた。
「な、なんだこれ……!?」
信じがたい光景に僕は呆然と声を漏らす。
なにせいま目の前で起きた現象はなにもかもがおかしかったからだ。
通常、レジーナの眷属生成には大量の食料が必要になる。
能力特化型のアリを生み出すにはさらに栄養価の高い獲物が必要なはずだし、普通はこんなにぽんぽんと生み出せるようなものではないはずなのだ。
そもそもレジーナの眷属生成スキルはもっとこう、手の平に魔力を集めて粘土細工を作るような健全な感じだったはずなのに……。
こんな絶頂しながら卵を生み出すようなヤバいスキルでは絶対になかった。
だとしたらこれは……と僕がほとんど確信をもって自身のステータスプレートをチェックしてみれば、
〈淫魔〉の眷属
レジーナ 2歳 魔族 レベル210 メス
所持スキル
〈魔力防御〉Lv8
〈飛び爪〉Lv8
〈硬鋼閻羅爪〉Lv6
〈溶解蟻酸〉Lv5
〈眷属生成〉Lv50(前回から41up。淫魔の恩恵スキルにより限界突破)
〈淫魔の恩恵〉Lv1
「やっぱり!!」
ペペに発現した〈淫魔の恩恵〉とはまた効果が違うのか。
恐らくはその謎スキルによって、レジーナの眷属生成スキルが異常な成長を遂げていた。
いやそれにしたって眷属生成スキルがこんな形に変貌するなんて……とドン引きしていたところ、
「あ、主様ぁ……❤❤❤」
先ほどまで眷属生成の快感に悶えていたレジーナが僕に抱きついてきた。その様子は先ほどよりは少しだけ落ち着いているみたいだったのだけど……、
「妾としたことが主様を押し倒し一方的に貪ってしまうなど、ふーっ❤❤❤ 申し開きもございません……! で、ですが、ふーっ❤❤ もっと、もっと眷属を作らねば頭がおかしくなりそうで……! はぁ❤ はぁ……❤❤❤」
「レ、レジーナ!? さっきから様子がずっとおかしいけど、本当に大丈夫!?」
蕩けた表情で僕に抱きつき、もはや自分の意志で身体の制御が効いていないようなレジーナ。
尋常ではない疼きに苦しんでいるような彼女の体調が心配になり、慌てて鑑定水晶を取り出して視る。
すると、
レジーナ 2歳 魔族 レベル210 メス
状態:眷属生成性欲錯乱。強力なスキル発現による一時的な暴走状態。欲求を解消すれば落ち着く。
「なにこの状態異常!?」
見たことも聞いたこともない頭のおかしい状態異常に僕は思わず叫んでいた。眷属生成性欲なんて聞いたことのない単語過ぎるんだけど!?
……いやでも、この説明分にあるように、強力なスキルの発現で暴走してしまうのは割と聞く話だ。最近だと強力なドレイン系ユニークスキルを発現してしまった兎獣人の受付嬢バーニーさんがそれで。
明らかにおかしいレジーナの様子やその発言もあわせ、水晶に表示されている状態異常とその解決法は決して鑑定スキルの失敗なんかじゃなさそうだった。だとしたら、
「ヤ、ヤるしかない……!」
僕のスキルのせいで苦しみ悶えてしまっているレジーナのために!
この暴走状態がおさまるまで!
そうしてまた眷属生成作業(意味深)を再開すると、
ごきゅっ、ごきゅっ!
「~~~っ!」
またしても身体から大量の魔力と体力を吸い取られる感覚があり、それと同時にレジーナがまた10体ほどのアーマーアントを作り出した。
(……っ! やっぱりこれ、僕の魔力と体力をレジーナ自身の魔力と混ぜて眷属を生成してる!? ダンジョンが魔力からモンスターを生み出すするみたいに……っ)
しかもどうやら、レジーナに吸われる魔力は彼女の興奮度合いに比例するみたいで、先ほどよりも大量の魔力が眷属生成に注ぎ込まれているようだった。その結果、
「「「「キイイイイイイイッ!」」」」
「っ!? ア、アーマーアントガーディアン!?」
通常のアーマーアントや特化個体に紛れて生み出されたその眷属に僕はまた目を剥く。
それは女王アリを守る最後の砦。レベル120相当と言われる最強のアーマーアントだったのだ。もう本当に、こんなぽんぽん産まれていい眷属じゃなさすぎる……。
けれどその強力なモンスターの誕生にも構っている暇などなく、僕はレジーナの状態異常を解除すべく必死に彼女と仲良くし続けた。
その結果、あっという間に眷属生成回数は10を超え、生み出されたアーマーアントの個体数は100を超えるのだけど……それでもレジーナの状態異常はおさまらない。
「主様あああああああっ❤❤❤ もっとおおおおっ❤❤❤」
確実に少しずつマシにはなっているみたいなのだけど、まったく底が見えないのだ。
(ぐっ……!? 最近かなりLvの上がった絶倫スキルやシスタークレアからもらった豪魔結晶のおかげで魔力と体力にはまだまだ余裕があるけど……一体いつになったらレジーナの状態異常は収まるんだ!?)
「レジーナ!? その、調子はどう!? あとどのくらいでおさまりそう!?」
僕は思わずレジーナに尋ねる。
するとギリギリで受け答えできる程度にはなっているレジーナは汗で髪を乱れさせながら、
「はぁ❤❤ はぁ❤❤ そ、そうですね……この調子でいけば……あと300回くらい生めばでおさまるかと……❤❤」
「あと300回くらい生めば!?」
予想よりも桁が一つ多い回答に声が裏返る。
いやけど、確かにこのペースだとそのくらいが妥当っぽい……!?
これはいよいよ僕も本腰を入れないと……!
と、僕が魔力ポーションなどの使用も視野に入れて覚悟を決めていたところ――
「……? あれ?」
僕はそこであることに気づく。
なんだかレジーナの存在感が、先ほどよりも増しているのだ。
え、ちょっ、これってまさか、と思い再度ステータスを確認してみれば、
〈淫魔〉の眷属
レジーナ 2歳 魔族 レベル215(前回から5up) メス
レベルが上がってる!?
そしてそれはレジーナ本人も自覚しているようで、
「おごおおおおおおっ❤❤! 眷属を生めば生むほど(主様の雌豚としても)レベルがあがりゅううううううううう❤❤!」
生み増やす女王アリの悦びと力を求める魔族の喜び。
その二つがあわさったようなレジーナの声が激しく響いた。
響き続けた。
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※2022.10.1 表現を大幅に修正しました
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