第114話 淫魔蹂躙
城塞都市シールドアへの入場を待つ旅人たちが数百人単位で列をなしている。
まるでそれを狙っていたかのように、背後の山林から大量のモンスターが飛び出してきた。獲物を前に涎を垂らす狼型モンスターの大群だ。
「お、おいヤバいぞあれ!?」
「まさかレベル120のソルジャーウルフか!? 人里近くにゃ出ないって話なのに、なんなんだよあの数!? 50頭はいるんじゃねえか!?」
「おい早く街に入れろ! あっという間に全員食い殺されるぞ!?」
突然の出来事に、冒険者らしき風貌の人たちも含めて大混乱が巻き起こっていた。
街の入り口に人が殺到し、悲鳴と怒号が巻き起こる。
見張りの人たちが大急ぎで兵士を呼ぶも、街の出入り口が混乱状態にあっては即応も難しそうだった。
このままでは確実に大量の犠牲者が出ると、門番の獣人たちが決死の表情で迎え撃とうとしていた。が、そのとき。
僕たちは既に動き始めていた。
「……限界突破スキル〈身体能力強化【極大】〉……〈剣戟強化【大】〉」
瞬間、風が爆発した。
アリシアが〈神聖騎士〉のスキルを発動させ、真正面からモンスターの群れに切り込んだのだ。瞬間、ドゴオオオオオオン!
「「「グギャアアアアアアアッ!?」」」
レベル120モンスターが数体まとめて肉塊と化した。
「「「「……………は?」」」」
それまでパニックを起こしていた人々が、その光景を見て別の混乱に襲われるようにぽかんと口をあける。そんな彼らの衝撃を加速させるように、さらに二つの人影が飛び出す。
「クレア様には指一本触れさせん! 槍技〈十連突き〉!」
「ガアアアアアアッ!?」
レベル130の〈槍聖騎士〉である護衛シルビアさんが槍を振るう。
「……隙だらけ、です」
「グギャッ!?」
気配を完全に消したソフィアさんが乱戦の中で動き回り、瞬時にモンスターの首をかっ切り目玉を抉る。
レベル120モンスターの群れが、悲鳴をあげて次々に数を減らしていった。
「な、なんだありゃ!?」
「子供!? いやでもなんだあの強さ!?」
「夢でも見てるみてぇだが……助かった、のか……?」
人々の口から安堵と驚愕が入り交じったような声が漏れる。
けどその直後、
「ワオオオオオオオオオオオオオンッ!」
巨大な咆哮が周囲を震わせた。
瞬間、アリシアたちに容赦なく蹂躙されパニックに陥っていた狼たちの動きが変わる。
明らかに統率の取れたかたちになり、アリシアたちを全方位から攻めるような陣形に変わったのだ。こうなるとアリシアたちでも一筋縄ではいかない。けど、
「やっぱりそう来ると思った――射殺せ、男根剣!」
瞬間、念のためにと待機していた僕の振るった剣が、狼たちの陣形を一蹴した。
アダマンタイトと化した男根剣が瞬時に伸び、綺麗に陣形を組んだおかげで逆に攻撃しやすくなった狼たちを串刺しにする。
そうなればもう陣形もクソもない。
再び混乱に陥ったソルジャーウルフの群れをアリシアたちが掃討していくなか、
「ソルジャーウルフの怖さは確か、アーマーアントを上回る統率力と強力なボス。この群れで一番強いのは、君だ」
僕はこの場でもっとも厄介だろうその個体に目をつける。
混乱に陥っていた群れを咆哮ひとつで立て直したボス狼だ。
と、僕が群れのボス目がけて駆け出したところ、
「ワオオオオオオオオオン!」
「「「ガルルルルッ!」」」
ボス狼が瞬時に身を翻す。
側近らしき狼たちが時間を稼ぐかのように立ち塞がった。
僕らとの戦力差を見極め、瞬時に撤退の判断を下したのだ。
けど、
「逃がすか!」
こいつを倒さないと、また群れを形成して旅人が襲われる可能性が高い。
瞬間、僕は身体から分離した男根の形質を変化させ、大きくしならせていた。
「肉棒高飛び!」
ムキムキ竹と化したアソコを〈淫魔〉の膂力でしならせ、その反動でで宙を駆ける。と同時に、僕は高速で打ち出された自分の身体をアダマンタイト男根で包み込んでいた。
端からみれば、それはまるで矢の先端のような、風を切り裂く鋭い形状。
さながら人間サイズの巨大な矢と化した僕は、肉棒高飛びの勢いのまま宙を突き進む。
――天翔る飛矢の男根!
「「「グガアアアアアアアアアッ!?」」」
立ち塞がるソルジャーウルフの群れを紙切れのように貫いてなお、その勢いは止まらない。そして、
「グルアアアアアアアアッ!?」
アダマンタイト男根に包まれ一本の矢と化した僕の身体が敵のボスを貫いた。
群れを統率するボスが息絶えれば、あとはもう一方的。
僕たちはほとんど傷を負うことなく、残ったソルジャーウルフの群れをすべて刈り尽くすのだった。
「……な、な……」
「なんだいまの戦闘……ほ、本当に人間か……?」
その一方的な戦闘を見ていた人々が唖然として僕たちを見つめる。
応援に駆けつけた獣人兵士さんたちも白昼夢でも見たかのように呆然としていて、なんだか妙な空気だった。
そこで僕は「あ、あれ、なんか変な空気だな……」と不安になり、駆けつけた兵士さんたちに声をかける。
「あ、あの。咄嗟にモンスターを全部倒しちゃいましたけど、もしかして入場前に勝手なことしちゃまずかったですか……?」
「と、とんでもない! 是非こちらからもお礼を言わせてほしい! というかあとで必ず正式なお礼に伺いますので、宿が決まり次第場所をお教えください! 討伐してくださった貴重なソルジャーウルフの肉も、高値で買い取らせていただきます!」
獣人兵士さんたちはなにやら畏れ多いものを見るように敬礼してくれて。
そんなトラブルはありつつ、僕たちは特に問題なく街に入場することができたのだった。
なぜか。モンスターの肉をやたら丁寧に回収する兵士さんたちに首をひねりながら。
*
街の中心部に、一際豪華な建物があった。
〈牙王連邦〉の領土を守る前線城塞都市、シールドア領主の屋敷だ。
その執務室に、屋敷の主が座っている。
二十台後半。領主としてはかなり若い女性の
だがその麗しい見た目とは裏腹に、纏う空気は野生の戦士そのもの。
若くして前線都市の領主を任されるだけあり、女傑という言葉にふさわしい気を発散している。
そんな女性領主――オリヴィアは部下からの報告に目を見開いた。
「たった4人でソルジャーウルフの大群を?」
「はっ。しかも4人のうち2人はまだ〈ギフト〉を授かったばかりの子供にしか見えないという話ではありますが、目撃者は多数。間違いございません」
「にわかには信じがたいな。だがなるほど、この街にそれほどの手練れが……」
オリヴィアはその美しい瞳を細めて思案にふける。
やがて荒々しく獰猛な表情を浮かべると、確固たる声でこう命じた。
「やむをえん。その者たちに、我が領地最強の精鋭、ヴァルキリー部隊を差し向けろ。手加減はいらぬ。手段は問わず全力で叩き潰せと伝えておけ」
「……はっ」
領主の意を汲むように間を置いてから従者が頷く。
「悪いなヒューマンの旅人よ。だがこちらももう手段は選んでおれんのだ」
従者の出ていった執務室に、オリヴィアの低い声が小さく響いた。
―――――――――――――――――――――――――――――
知らない間にトチ狂った新技を開発してるエリオ君。
完全な余談ですが、オリヴィアさんは
※2021/10/14 微妙に描写を修正しました
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