第73話 魔法武器注文と雌豚フラグ
サンクリッドダンジョンの奥深くでソフィアさんと出会った翌日。
僕とアリシアは〈現地妻〉を使い、蟻の女王レジーナを介して城塞都市へと戻ってきていた。
教会から〈神聖騎士〉であるアリシアが追われているいま、どうしてわざわざサンクリッドを出て城塞都市に戻ってきたのかといえば――優秀な武器職人である女鍛冶師、ウェイプスさんにアリシア専用の魔法武器を作ってもらうためだった。
ウェイプスさんは城塞都市にその名を轟かせる職人気質な女性で、彼女の作る武器は武門貴族出身の僕らから見ても破格の完成度。その腕はダンジョン都市の鍛冶師たちをも凌駕していて、彼女から譲ってもらった武器はいまでも僕たちの愛用品になっていた。
けどそんな優秀な武器も、急成長する〈神聖騎士〉の力には長く耐えられないとウェイプスさんは睨んでいて、不壊属性の魔法武器を早めに作るよう、前々から忠告されていたのだった。
そしてそのためには多額の費用と特殊な素材が必要だと言われていたのだけど……この課題は以外にも早くクリアできつつあった。
まず資金のほうだけど、男根売買の利益とダンジョン攻略による素材売却でかなり稼ぐことができていた。実は男根売買は僕自身のレベルアップと男根分離スキルのLv.上昇により売れる本数が増えていて、それに伴い利益もあがっているのだ。
加えて、ダンジョン攻略による素材売却利益がかなり大きい。
僕とアリシアの成長とヤリ部屋生成スキルによって短期間に大量のモンスター素材を地上に持ち帰り、女帝旅団の協力によってそれらを周囲に怪しまれず売ることができる。そのおかげでかなりの利益が出ており、魔法武器の生成を依頼できるほどの蓄えができていたのだ。
そして昨日のダンジョン攻略で討伐し、その死体をヤリ部屋の中に放り込んでおいた門番モンスター〝青龍〟。こいつの素材があれば不壊武器の生成も可能なのではないかと、ウェイプスさんに改めて相談しに来たというわけだった。
アリシアまで城塞都市にワープしてしまうと〈現地妻〉でダンジョン内へワープすることができなくなっちゃうんだけど……まあいまの僕たちならすぐにダンジョン深層にたどり着けるし、武器を作ってもらうアリシア本人が武器屋に来ないわけにはいかないから仕方ないのだった。
「すみませーん! ウェイプスさーん、武器のことでちょっと相談がーっ」
そんなわけで、僕はボロボロの看板を掲げた小さな武具屋の中へと呼びかける。
すると――ドンガラガッシャン!! 「おごっ❤❤❤!?」
「っ!?」
店の奥からなにかが盛大に転がるような音と、ウェイプスさんのものらしき悲鳴が聞こえてきてギョッとする。
「ウェイプスさん!? どうしたんですか、大丈夫ですか!?」
なにがあったのかと慌てて店の奥に入ろうとする。
が、その瞬間、心底慌てたようなウェイプスさんの声が僕とアリシアを押しとどめた。
「その声エリオールか!? ちょっ、なんでもねえから入って来んな! ああくそっ、客なんて滅多にこねえから油断して一人遊びしてたらいきなり……ぐっ、びっくりして奥の奥まで……早く抜かねえと今度こそエリオールが入ってきて――❤❤❤」
「……?????」
なんだかよくわからないけど、やたらと必死なウェイプスさんの声に従いその場で立ち止まる。それからアリシアと二人、店先で立ち尽くしていると、
「よ、よぉ。久しぶりじゃねえか。ルージュからは拠点をよそに移したって聞いてたが、急にどうしたんだよ」
鍛冶師のウェイプスさんがひょこっと店の奥から顔を出した。
けど……なんだかその様子が少しおかしい。
なんだか風邪でも引いているかのように顔が赤いのだ。
なので僕は心配になり、
「あの、ウェイプスさん? 本当に大丈夫ですか? 体調が良くないみたいですけど、もしそうなら出直しますよ?」
「え、あ、いや、なんでもねえよ別に!」
ウェイプスさんは顔をさらに赤くしてそう言うけど、本当に大丈夫なんだろうか。
「……くっ、試供品の品質チェックに協力してくれた礼ってことでルージュのヤツからアレを格安で買い続けたのが失敗だった……! いくら客がこねえからって昼間から遊んで、純粋なガキどもにこんな姿を見せることになっちまうなんて……っ」
ウェイプスさんがなにやら自己嫌悪に陥ったようにぶつぶつと独りごちる。
けど次の瞬間にはなにかを誤魔化すように、
「ああもうあたしのことはいいんだよ! で、今日はなにしに来やがった!?」
「え。ああ、ええと、前に相談してた魔法武器についてなんですけど」
ウェイプスさんの名誉のためにもあまり詳しく掘り下げないほうがいいのかもしれない。
僕はなんとなくそう直感し、ウェイプスさんに青龍の素材を手渡すのだった。
「てめぇらがワケあり冒険者ってのは知っちゃいたが……どうやったら〈ギフト〉を授かったその年に青龍の素材なんて入手できんだよ……聖騎士連中の武器を作ったこともあるあたしの鍛冶師人生の中でも数えるほどしかお目にかかったことのねえ希少素材だぞ」
僕がお店に持ち込んだ素材を見て、ウェイプスさんが愕然と言葉を漏らす。
それからしばらく素材の状態チェックに夢中になっていたウェイプスさんに、僕は恐る恐る訊ねた。
「それで、どうでしょうか。不壊武器のほうは作れそうですかね?」
「バカ言ってんじゃねえ!」
ウェイプスさんはギラギラと目を光らせながら声を張り上げた。
「こんだけの素材がありゃあ、不壊武器を作るにゃ十分すぎる! 問題は資金のほうだが、こんな状態の良い青龍素材を大量にもってくるくらいだ。金もしっかり用意してんだろ?」
「は、はい! もちろんです!」
不壊武器を作れるというウェイプスさんの言葉にほっとしつつ、僕は予算のほうを告げる。するとウェイプスさんはぎょっとし、
「特殊素材調達用の頭金がありゃあ、あとはローンでよかったんだがな……想定してたのと桁が1つ違いやがった……。まあいい、さすがはあたしが見込んだ冒険者コンビだ! そんだけあるなら十分すぎる。久々に作ってやろうじゃねえか、英雄ども
「よろしくお願いします!」
「……お願いします」
熱意のこもったウェイプスさんの宣言に僕とアリシアが頭を下げる。
それからアリシアの体格にあった武器が作れるよう細々とした採寸が行われ、ウェイプスさんへの魔法武器生成依頼は無事に完了するのだった。
「完成予定は1週間後かぁ。最初にウェイプスさんにもらった「風切り」も凄い名刀だったけど、魔法武器となるとどれだけ凄いか想像できなくて楽しみだね」
「……うん。不壊武器――聖剣は帝都の聖騎士の人たちが装備してるのをよく見たけど、実際に握ったことはないから楽しみ。それに……」
「うん?」
「……エリオからのプレゼントだから、凄く嬉しい」
「そ、そっか。そういえばちゃんとした贈り物をしたことってなかったから、なんか照れるね」
ウェイプスさんへの依頼を終えたあと。
僕とアリシアはダンジョン都市サンクリッドに戻っていた。
まだ日の高い時間帯だったので、たまにはゆっくりお店で昼食でも摂ろうとゆっくり街を散策していたのだ。
「ええと、確かこっちのほうに美味しいお店があるって噂だったよね? 大通りのほうは人が多いし、ちょっと裏道を通ろっか」
「……うん」
日中のほとんどをダンジョン内で過ごしたとはいえ、この街に来てからそれなりに日数が経っている。宿の周辺なら近道やショートカットもお手の物で、僕とアリシアは人気のない裏道を慣れた調子で進んでいった。
と、そのときだった。
「火炎魔法――〈ファイヤーボール・ラピッドカノン〉!」
「電撃魔法――〈ライボルトエッジ〉!」
「剛弓スキル――〈曲射砲〉!」
「「っ!?」」
突如。
僕たちの頭上から一斉砲撃が降り注いだ。
「なんだ!?」
突然の攻撃。しかし僕とアリシアは攻撃の直前に怪しい気配を察知していたこともあり、その攻撃をどうにか避ける。
けれどその砲撃は周囲への被害など完全に無視したもので、周囲の建物が派手に崩落。中にいた人たちが悲鳴を上げて逃げ惑っていた。
一体誰がこんな……!? と僕とアリシアが武器を構えると同時。
「ちっ、避けやがったか」
「っ」
殺気を振りまきながらこちらに近づいてくる人影があった。
一体誰だと思ってみれば、
「やっぱりただのガキじゃねえな……だが逃がしゃしねえ。ステイシー姐さんがおかしくなっちまったのはどう考えてもてめぇらが原因だ。姐さんの命令なんざ関係ねぇ、絶対にこの場で駆除してやる……! 腑抜けになっちまった姐さんを元に戻して、前みてえに好き勝手できた女帝旅団を取り戻してやる!」
「あなたは……リザ・サスペインさん!?」
殺意の籠った目で僕とアリシアを見つめていた女性を見て、僕は思わず声をもらしていた。
リザ・サスペイン。女帝旅団の最高幹部と謳われるレベル200の〈獰猛戦士〉。
女帝ステイシーさんの懐刀にして、女帝旅団最強の強襲部隊〈飛び爪〉を率いる妙齢の豹獣人だ。
その歴戦の戦士が全身に殺意をたぎらせながら――〈飛び爪〉構成員とともに僕とアリシアを完全包囲していた。
――――――――――――――――――――
お願い、負けないでリザ・サスペイン!
あんたが今ここで負けたら女帝旅団はどうなっちゃうの!?
希望はまだ残ってる。ここでエリオを倒せば、旅団は取り戻せるんだから!
次回、「女帝旅団メス堕ち完全屈服」。デュエルスタンバイ!
※2021/10/14 一部描写を削りました
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