第64話 セッ〇スしないと出られない異空間


「ステイシー様! いかがなされましたか!」


 助けを求めるボスの声を聞きつけ、旅団幹部の面々が次々と女帝専用ヤリ部屋へと雪崩れ込む。


 だが女帝の助けに応じて分厚い鉄扉を押し開けた冒険者たちは、そこで呆然と立ち尽くした。なぜなら助けを求めたはずの〝女帝〟ステイシー・ポイズンドールの姿がどこにもなかったからだ。


 ステイシーだけではない。

 ヤリ部屋へまんまとおびき寄せられた駆け出し冒険者カップルの姿も見当たらず、部屋の中には手つかずの夕食しか残っていなかったのだ。


 あり得ない。


 この部屋はステイシーが特別に作らせた彼女の趣味部屋であり、出入りできるのは正面の分厚い鉄扉のみ。そしてその扉は旅団幹部を含む複数の手練れが守っていた。

 逃げ出せるわけがないし、そもそも数瞬前まで中からステイシーの声が聞こえていたのだ。


 それが忽然と消え失せ、旅団構成員たちはパニックに陥った。


「おいどうなってる!? ステイシー様はどこへ行った!?」


 旅団トップが消えたとなれば、それは旅団崩壊――ひいてはダンジョン都市の治安崩壊にも繋がる大事件だ。


 旅団幹部たちは泡を食ったように室内を探しまわり、高レベルの〈レンジャー〉や〈シーフ〉も総動員して女帝の行方を必死に捜す。


 だが夜が明けるまで続けた必死の捜索もむなしく。

 彼らは女帝の行方はおろか、その痕跡さえ発見することができないのだった。


      *


「……は?」


〝女帝〟ステイシー・ポイズンドールは呆然と声を漏らしていた。

 だがそれも当然だろう。

 つい先ほどまで旅団拠点のヤリ部屋にいたというのに、彼女は突如として見覚えのない空間に投げ出されていたのだから。


 周囲を見回せば、そこは高級な宿の一室に見えた。  

 床はふわふわの絨毯に覆われ、巨大なベッドがこれみよがしに設置されている。

 魔石によって稼働するシャワーや食料庫など設備も整っており、その気になれば何日だって滞在できそうだった。


 だが高級宿にしてはおかしな点が2つほどある。

 それはこの部屋が王宮の広間を思わせるほどに広いこと。

 そしてもう一つは、天井付近に書き殴られた巨大な文字だった。



『セッ〇スしないと出られない異空間』


 な ん だ こ れ は



 頭がどうにかなりそうだった。

 もしかして悪い夢でも見ているのではないかとステイシーは自分の頬を思い切りつねる。が、ただ痛いだけで目が覚めることはない。


 それどころか、


「仲良し……たくさん……」

「っ!?」


 最悪の現実がすぐ後ろに迫っていた。

 狼狽えるアリシアとともにそこに立っていたのは、一部衣類がはだけているエリオ少年。彼は変わらず正気を失った様子で、ステイシーを狙っていた。


「なんなのよ! なんなのよこれは!」


 ステイシーは半狂乱になりながら、全力で魔力を練る。


「なにがセッ〇スしないと出られない異空間よ! どんな手を使ったのか知らないけど、レベル250に達した〈深淵魔導師〉をそう簡単に閉じ込められると思うんじゃないわよ!」


 ここが旅団拠点でないというなら、周囲の被害を気にする必要もない。


「深淵魔法奥義――〈ギガリア・エクスプロード・グラビディア〉!」


 ステイシーは退路を確保するため、自らを巻き込まないよう遠くの壁に魔法をぶち込んだ。直撃すればレベル300を超えるダンジョンボスさえ打ち倒す強力無比な一撃だ。

 当然のように部屋の壁は崩壊し、ステイシーは「ほら見なさい!」と歓声をあげる。だが、


「……え?」


 壁の向こう側には、なにもなかった。

 ただただインクをぶちまけたような深い闇が広がっている。

 しかもいましがた破壊した壁はシャワーや食料庫といった設備とともにすぐさま復活し、何事も無かったかのようにステイシーの行く手を阻んだ。


「は……はは……」


 まさか本当にセッ〇スしないと出られない異空間だとでも……?

 目の前の現実に愕然とするステイシーが崩れ落ちそうになったそのとき。


「っ!?」


 ガシッ! 彼女の両手両足を何者かが掴んだ。

 エリオの身体から伸びて枝分かれしたアソコが、ステイシーの動きを完全に押さえ込んでいたのだ。


 さらにステイシーの周囲は強力な魔法耐性を持つオリハルコン男根で覆われ、まともに魔法を打ち出すこともできなくなる。

 最早抵抗する手段はひとつもなく、ステイシーは目の前に迫る凶悪なオスに愕然と目を見開いた。


「仲良し……たくさん……僕の大切な人が満足するまで、何十回でも……」


「な……あ……こんな……こんなバカな……!? こんなふざけた状況で、お前みたいなガキが! そんなこと許されると思って――ちょっ、ほんとにやめっ、こんなことをしてただで済むと……がっ❤❤❤!?!?!?」

 

 それが、プライドの高い女帝が純粋な女帝として発した最後の言葉となった。

 

      *

 

 霞がかった意識のなかで、の声が響く。

 だから僕は一切の情け容赦なく、全力で仲良しした。

       

      *


 そうしてエリオが霞みがかった意識のまま「仲良し」しまくり、半日以上の時間が過ぎたときだった。

 

 バシュゥッ!


 なにか特別な条件があったのか、あるいは果てしない「仲良し地獄」にステイシーの深層心理が完全な屈服を認めたのか。エリオがなにかを強く命じたわけでもないのに、ステイシーの下腹部に〈主従契約〉の発動を示す淫紋が刻まれる。

 その途端。


「……っ」


 まるで〈主従契約〉の発動が契機になったかのように、それまでエリオの心を覆い尽くしていた〈少年殺し〉の深い霧が綺麗さっぱりと消え去った。


      *


「………………………あれ? 僕はいままで一体なにを……」


 気がついたとき、そこは僕の知らない空間だった。

 どこだ、ここ?

 高級宿の一室にも見えるけど……そんなわけないよね? 


 だって僕たちはステイシーさんの拠点に招待されて、そこでおかしな誘いを受けて、逃げようとして……ええと、そこからどうなったんだっけ。


 どうにもまだ意識がはっきりしない中、僕はひとつひとつ記憶を思い出そうと頑張ってみる。けどその作業はすぐに中断することになった。なぜなら、


「あ……❤ へ……❤(ガクガクガクガクッ))」


「っ!? うぇ!?」


 僕の足下で、全裸のステイシーさんが転がっていたからだ。

 しかもその下腹部には〈主従契約〉の証である淫らな紋様が刻まれていて……


「え……? ちょっ、なにこれ……どういうこと……!?」


 いま気づいたけど僕も普通に全裸だし!?


 あとアリシアは!? 一緒に逃げてたはずだけどちゃんと無事だよね!? と改めて周囲を見回したところ、


「……エリオ!」

「わっ!? アリシア!?」


 もの凄い勢いでアリシアが飛びついてきた。

 どうやら無事みたいで心底安心するのだけど……なんだか様子がおかしい。

  いつも考えの読みづらい無表情をしていることの多いアリシアは涙目で、母親に捨てられそうになった幼い子供みたいに僕に抱きついてきたのだ。

 さらに、


「エリオ……エリオの一番大切な人は誰?」

「え……? そんなのアリシアに決まってるけど……?」


 なぜかわかりきったことを聞いてくるアリシアに困惑しつつ即答する。

 するとアリシアは目を見開き、


「よかった……ちゃんと元のエリオに戻ってる……」


 安堵したように声を漏らしながら、凄まじい勢いで服を脱ぎだした。

 なんで!?

 僕は慌ててアリシアを押しとどめる。けれど、


「よかった……エリオ、ずっとステイシーとばっかり仲良ししてて……激しすぎて割り込む隙もなくて……もしかしてずっとこのままなんじゃないかって不安で……でも、やっぱりエリオは、エリオだった」


「え、え、どういうこと!? 僕がステイシーさんと!? ちょっ、アリシア! 説明を! 僕の意識がぼんやりしてたときの説明を……ア―――――ッ!?」


 感極まったかのように潤んだ瞳で求めてくるアリシアを拒否できるわけもなく。

 僕はわけがわからないまま、その後半日以上にわたって容赦なく貪り尽くされるのだった。



 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル250

 所持スキル

 絶倫Lv10

 主従契約(Lvなし)

 男根形状変化Lv10

 男根形質変化Lv10

 男根分離Lv8

 異性特効(Lvなし)

 男根再生Lv8

 適正男根自動変化(Lvなし)

 現地妻(Lvなし)

 ヤリ部屋生成(Lv1)

 精神支配完全無効(Lvなし)

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2021.10.12 過激表現がありましたので、大幅に表現を削りました

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