第46話 現地妻の活用とほのぼのデート回(前編)


 鑑定水晶を譲ってもらう見返りとして、僕たちはルージュさんから鑑定水晶の素材採取を依頼されていた。


〈現地妻〉の瞬間移動能力が実際どのくらいの距離まで作用するか検証するにあたり、遠くまで出かけないといけないこの依頼は渡りに船。


 そんなわけで僕とアリシアは依頼を正式に受諾すべくギルドへとやってきていた。


「お待ちしておりました。エリオールさんにアリィさんですね。指名依頼のほう、承っております」


 受付嬢のお姉さんが僕とアリシアの冒険者登録名を口にしながら頭を下げる。

 ルージュさんの言っていた通り依頼は指名形式になっていて、僕らはすんなりと依頼を受けることができた。


「それにしてもルージュさんは気が利くなぁ。わざわざ指名依頼にしてくれるなんて」

「……さすがはソーニャさんが信頼してる、営業1位だね」 


 アイテムショップで遠征用の物資を調達しつつ、僕とアリシアは言葉を交わす。


 指名依頼とはその名の通り特定の冒険者やパーティを指名した依頼のことなのだけど、これがかなり美味しい依頼なのだ。


 なぜかというと、指名された冒険者は指名されたという時点でギルドから評価される。加えて依頼を達成すれば、普通より多く評価が蓄積され、冒険者ランクが上がりやすくなるのだ。


 アリシアとの主従契約解除を試みるため、契約破壊のアイテムが使えるトップクラスの冒険者を目指す僕としてはかなりありがたかった。


 ちなみに。


 アーマーアント事件での活躍が評価され、僕とアリシアはいつの間にか二人でA級冒険者パーティへと昇進していた。異例のスピード出世だ。

 けどこのことを僕に伝えてくれたギルマスのゴードさんはかなり不服そうで、


『君の活躍を思えばS級かSS級でもいいくらいなのだがな……。このランクの冒険者になると様々な権限が付与されるので、昇格には数多の依頼達成――つまりギルドへの継続的な貢献が必要になってくるんだ。すまないがいまはA級で我慢してほしい』


 とのことだった。

 上から二番目――SS級ならギリギリで契約破壊のアイテム使用許可も下りそうなのでかなり残念ではあったけど、恐らくA級昇進もゴードさんがかなり頑張ってくれた結果なのだろう。

 

 あとは僕らがコツコツと依頼をこなしていけばSS級への道はそう遠くないはず。

 そんなわけで僕はルージュさんからの依頼にもやる気満々。


 野営装備やポーションなどの準備を早々に整え、すぐさま目的地であるウェスタール村を目指すことにした。

 この城塞都市から馬車で3日ほど西へ行った場所にある宿場町だ。


 普通なら乗り合い馬車なんかに乗っていく距離なんだけど――


「それじゃあ出発するけど、本当に大丈夫?」

「……うん。この前の戦いで私も成長したし……鍛錬の意味もこめて久しぶりにしっかり動きたいから」


 僕たちは徒歩で城塞都市を出発していた。

 これにはいくつか理由があるんだけど、中でも大きいのは僕たちの成長だ。


 エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル201

 アリシア・ブルーアイズ 14歳 ヒューマン 〈神聖騎士〉レベル40


 レベル200オーバーの僕はもちろん、先の戦いでこっそりアーマーアントを倒していたアリシアもかなりレベルが上がっている。

 これなら乗合馬車を使うよりも徒歩のほうが楽に目的地へ到着できると踏んでの選択だった。


 とはいえ。いくら〈神聖騎士〉でもレベル40でどのくらい進めるのかまだわからないから少し心配ではあったんだけど、


「……最近、エリオと二人きりの時間が少なかった気がするし……。ゆっくりお出かけしたかったから……頑張る」


「……っ、そ、そっか。じゃあ行こっか」


 当たり前みたいにそんなことを言ってくれるアリシアをそれ以上心配するのは野暮というもので、僕は顔を赤くしながらアリシアと2人で城塞都市を出立するのだった。

(……毎晩しっかり二人っきりで仲良くしてるはずなんだけど、それはアリシアの勘定に入ってないんだろうか、とはあとで気づいた)


 ―――――――――――――――――――――――――

 少しごちゃついてしまった感があったので、短いですが二分割にしました。

 あと43話でレベル200になっていたエリオですが、Lvアップがかなり困難になってきたとはいえアリシアに1日中貪られてレベルアップしないのも寂しいので1だけ上がってます。

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